パンダ「シャンシャン」との別れ惜しむ 最終観覧日 上野動物園

21日、中国に返還される上野動物園のジャイアントパンダ「シャンシャン」は19日、最後の観覧日を迎えファンが別れを惜しみました。

上野動物園のメスのジャイアントパンダ「シャンシャン」は、現在、5歳と繁殖の適齢期にあるため、所有権を持つ中国と結んだ協定に基づいて21日返還されます。

19日、最後の観覧日を迎え、混乱を避けるため、あらかじめ抽せんで選ばれたおよそ2600人が午前9時半から午後5時の指定された時間に訪れました。

シャンシャンは、返還を前にしても変わらずささをもりもり食べて元気に過ごしていて、好物のタケノコをほおばったときには、ファンの間から歓声が上がりました。

ファンの中には涙を流す人も少なくなく、2分という短い観覧時間の中で「元気でね」と声を掛けたり、姿をカメラに収めたりしてシャンシャンとの別れを惜しんでいました。

観覧の抽せんには合わせて6万人余りから応募があり、倍率はおよそ24倍でした。

毎週見に来ていたという横浜市の40代の女性は、「シャンシャンは生活の一部になるほど大きな存在でした。悲しいですが、いいお母さんになってほしいです」と涙を流していました。

シャンシャンは21日早朝にトラックで動物園を出発し、飼育員とともに専用の飛行機で中国に渡る予定です。

毎日のように通い続けた人「中国でも人気になって」

観覧の最後となる午後4時からの枠に当選したファンの中にはシャンシャンを人生の支えとなった特別な存在だと思って毎日のように通い続けてきた人がいます。

水口奈津季さん(37)は、自分で撮影したシャンシャンの写真をふんだんに使ってデザインしたパーカーや靴を身につけ、およそ65センチの大きさのシャンシャンのぬいぐるみを持参してシャンシャンとの最後の時に臨みました。

水口さんは一時、海外で暮らしていましたが、体調を崩して帰国し、家にこもる日々が続きました。

そんなとき、シャンシャンの存在を追うようになりました。

体調面から外出が難しくテレビやインターネットで成長の様子を見守ってきましたが、中国への返還が発表されたことで動物園に見に行くことを決め、それをきっかけに出かけることができるようになったと言います。

水口さんは、「初めて会ったその日に年間パスポートを購入して、それから毎日行っています。きょうは、どんなシャンシャンなんだろうと見たいがために電車に乗り、会いに行っていました」と話しました。

水口さんは自分で作ったシャンシャンのグッズを欲しい人に無料で配るようになり、「だんだん自信にもつながっていきました。この格好をしているとシャツもパーカーも発売して欲しいと言われることもあります」と話していました。

シャンシャンとの最後の時間を終えて水口さんは、「かわいかったです。本当に終わってしまったんだと思うと辛いです。シャンシャンは心の中の全て、唯一無二の存在です。中国でも人気のパンダになってほしいです」と涙を流しながら話していました。

上野動物園「環境に慣れて子どもも作って」

シャンシャンの最後の観覧を終え、上野動物園教育普及課の大橋直哉課長は、「多くの人が涙を流して別れを惜しんでくれて私も感動しました。改めて、上野のシンボルなんだと感じました」と振り返っていました。

その上で、「繁殖のために中国に返還できるのは、飼育員が緊張感を持ってここまで育ててきたからです。シャンシャンには中国の環境に早く慣れて、伴侶を迎えて子どもも作ってほしいです」と話していました。