この研究は、慶応大学の岡野栄之教授と中村雅也教授のグループが行い、国際的な科学雑誌に発表しました。
それによりますと、グループでは脊髄が切断されてから6週間たったラットに細胞の増殖などを促す特殊なたんぱく質を投与し、さらに1週間後にiPS細胞から作った神経細胞のもとになる細胞を投与しました。
その結果、新たに神経の組織が現れて損傷した箇所を超えて広がり、新たな神経回路がつながったということです。
また、後ろ足を数センチの幅で動かせるようになるなど、運動機能の一部が回復したとしています。
事故などで脊髄を損傷して体が動かせなくなったあと、時間が経過すると機能の回復は特に難しくなるとされていて、損傷から時間がたったラットで機能の一部を回復させることができたのはこれまでに例がないとしています。
グループはiPS細胞から作った神経の細胞を脊髄損傷の患者に移植する臨床研究を進めていて、岡野教授は今回の研究について「動物実験で安全性に確信を持つことができれば患者に対する臨床研究や治験で実用化を目指したい」と話しています。
脊髄損傷のラット iPS神経細胞移植 運動機能の一部回復 慶応大
iPS細胞から作った神経の細胞を移植することで、脊髄損傷となってから時間がたった状態のラットの神経を再生させ、運動機能の一部を回復させることに成功したと、慶応大学のグループが発表しました。研究グループは将来、患者への移植を目指したいとしています。
