種子島宇宙センターを見下ろす高台には大勢の人たちが集まり、「H3」ロケットが発射地点に移動する様子を写真におさめていました。
このうち、愛知県から来た夫婦は「子どものころからロケットが好きで間近で見られて感動しました。新型のロケットなので打ち上げに成功してほしいです」と話していました。
「H3」 初号機あす打ち上げへ 発射地点に移される 鹿児島
日本の大型ロケットとしておよそ30年ぶりに新たに開発された「H3」の初の打ち上げを17日に控え、鹿児島県の種子島宇宙センターでは16日夕方、初号機が発射地点に移されました。
「H3」は、現在の主力ロケット「H2A」の後継機で、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が、2000億円余りかけて開発しています。
「H3」の初号機は、17日の打ち上げを前に16日午後4時ごろ、組み立て棟から姿を現し、移動式の発射台に載せられて30分余りかけて発射地点に移されました。
「H3」の全長は、最長でおよそ63メートル。
日本の大型ロケットとしてはおよそ30年ぶりの新規開発で、宇宙に運べる重量を「H2A」のおよそ1.3倍に増強し、打ち上げコストを現在の半分程度に抑える計画で9年前に開発に着手しました。
初号機の打ち上げは当初、2020年度の予定でしたが、新型のメインエンジンの開発に難航し、2度の年度をまたぐ延期を経て、打ち上げにこぎ着けました。
「H3」は、競争が激しさを増しているロケットの打ち上げビジネスで海外に対抗するねらいがあるほか、アメリカなどが人類の宇宙進出の足がかりとして月を探査する「アルテミス計画」にも活用される予定で、国産の新たな主力ロケットとして順調な滑り出しが見せられるか、初号機の打ち上げが注目されます。
初号機は、人工衛星を覆うカバー「フェアリング」に短いタイプを使用しているため、全長はおよそ57メートルです。
ロケットには災害状況の把握などに活用が期待される地球観測衛星「だいち3号」が搭載され、17日午前10時37分に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。
高台には大勢の人たちが集まる

宇宙ファンが続々と種子島入り
17日に迫った「H3」の初めての打ち上げを一目見ようと、鹿児島県の種子島には全国の宇宙ファンが続々と集まってきています。
16日朝、船で種子島に到着した長崎県の男性は「おととい来たのですが、日程が変更されたため一度仕事に戻り出直しました。新型ロケットの初号機の成功の瞬間に立ち会いたいです」と話していました。
一方、種子島では、多くの宿泊施設がすでに満室となっているため、公園でキャンプする人の姿も見られました。
このうち、発射場から7キロほど離れた南種子町の「宇宙ヶ丘公園」ではおよそ10人がテントで寝泊まりしていますが、打ち上げが当初の計画よりも遅れたため、1週間ほど前から滞在している人もいるということです。
友人とともに熊本県から訪れた人は「H3の初の打ち上げを見たくて、およそ10年ぶりに種子島に来ました。14日から待っているため無事打ち上がってほしいです」と話していました。
6日前から訪れている鹿児島県姶良市の男性は、「フェリーに車を載せられるのが最短で22日のため、また延期になっても22日まで待つ覚悟です。燃料を燃やしながら宇宙に飛んでいく姿を間近で感じて、見えなくなるまで追いかけたいです」と話していました。
16日朝、船で種子島に到着した長崎県の男性は「おととい来たのですが、日程が変更されたため一度仕事に戻り出直しました。新型ロケットの初号機の成功の瞬間に立ち会いたいです」と話していました。
一方、種子島では、多くの宿泊施設がすでに満室となっているため、公園でキャンプする人の姿も見られました。
このうち、発射場から7キロほど離れた南種子町の「宇宙ヶ丘公園」ではおよそ10人がテントで寝泊まりしていますが、打ち上げが当初の計画よりも遅れたため、1週間ほど前から滞在している人もいるということです。
友人とともに熊本県から訪れた人は「H3の初の打ち上げを見たくて、およそ10年ぶりに種子島に来ました。14日から待っているため無事打ち上がってほしいです」と話していました。
6日前から訪れている鹿児島県姶良市の男性は、「フェリーに車を載せられるのが最短で22日のため、また延期になっても22日まで待つ覚悟です。燃料を燃やしながら宇宙に飛んでいく姿を間近で感じて、見えなくなるまで追いかけたいです」と話していました。
「H3」にちなんだ新しい焼酎の販売も

種子島宇宙センターがある鹿児島県南種子町では、日本の新たな主力ロケットH3の初号機が打ち上げられるのを前に、H3にちなんだ新しい焼酎が数量限定で販売されています。
南種子町の酒造会社が製造したのは、「H3 ROCKET BIRTH」というサツマイモの本格焼酎で、500ミリリットル入りのボトルが3000本限定で販売されています。
発酵の際に、かつてスペースシャトルで国際宇宙ステーションに送られ宇宙を旅したこうじ菌や酵母が使われていて、ふくよかなイモの香りと5年間じっくりと熟成されたまろやかな口当たりが特徴です。
また、組み立てるとH3の模型になるペーパークラフトの付録もついていて、飲み終えたボトルを収納して鑑賞することもできます。
上妻酒造株式会社の上妻寛大代表取締役は、「南種子町は『宇宙に一番近い町』なので、宇宙やロケットに関連する商品で町を活発にしていきたい。打ち上げ成功の夜は、ぜひこちらの焼酎で乾杯してほしい」と話していました。
この焼酎は、種子島の酒店などのほか、インターネットでも購入できるということです。
南種子町の酒造会社が製造したのは、「H3 ROCKET BIRTH」というサツマイモの本格焼酎で、500ミリリットル入りのボトルが3000本限定で販売されています。
発酵の際に、かつてスペースシャトルで国際宇宙ステーションに送られ宇宙を旅したこうじ菌や酵母が使われていて、ふくよかなイモの香りと5年間じっくりと熟成されたまろやかな口当たりが特徴です。
また、組み立てるとH3の模型になるペーパークラフトの付録もついていて、飲み終えたボトルを収納して鑑賞することもできます。
上妻酒造株式会社の上妻寛大代表取締役は、「南種子町は『宇宙に一番近い町』なので、宇宙やロケットに関連する商品で町を活発にしていきたい。打ち上げ成功の夜は、ぜひこちらの焼酎で乾杯してほしい」と話していました。
この焼酎は、種子島の酒店などのほか、インターネットでも購入できるということです。
新型国産ロケットの仕様

【「H3」とは】
新型ロケット「H3」は、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が9年前から開発しています。
日本の大型ロケットとしては「H2」以来となるおよそ30年ぶりの新規開発で、現在の日本の主力ロケット「H2A」の後継機として総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められています。
「H3」の全長は最長で63メートル、直径は5.2メートルあり、燃焼を終えると順次切り離す2段式ロケットで、第1段と第2段には、ロケットを飛ばすための推進剤に「液体水素」と「液体酸素」を使っています。
エンジンはいずれも新型で、
▽第1段のメインエンジンが「LE-9」。
▽第2段のエンジンが「LE-5B-3」。
さらに、
▽「SRB-3」という固体燃料を使う補助ロケットを搭載することができます。
「H3」は、「H2A」に比べて、
▽エンジンの第1段では部品の数を、▽補助ロケットでは本体との結合点を減らすなど、独自の技術を採用して設計をシンプルにしています。
【発射台】
発射場は、鹿児島県の種子島宇宙センターですが、発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
【搭載重量に応じて変更可能】
「H3」は、
▽メインエンジンを2基から3基に増やせるほか、
▽補助ロケットの本数も最大4本まで搭載可能です。
▽人工衛星を覆うカバー「フェアリング」の大きさも長短2種類あり、
搭載する人工衛星に応じて仕様を変えられるのも特徴です。
【初号機は】
今回打ち上げる初号機は、
▽メインエンジンが2基、
▽補助ロケットが2本、
▽フェアリングは短いタイプを使用するため全長は57メートルで、
▽人工衛星を含めない重量はおよそ422トンです。
地球観測衛星「だいち3号」を搭載します。
新型ロケット「H3」は、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が9年前から開発しています。
日本の大型ロケットとしては「H2」以来となるおよそ30年ぶりの新規開発で、現在の日本の主力ロケット「H2A」の後継機として総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められています。
「H3」の全長は最長で63メートル、直径は5.2メートルあり、燃焼を終えると順次切り離す2段式ロケットで、第1段と第2段には、ロケットを飛ばすための推進剤に「液体水素」と「液体酸素」を使っています。
エンジンはいずれも新型で、
▽第1段のメインエンジンが「LE-9」。
▽第2段のエンジンが「LE-5B-3」。
さらに、
▽「SRB-3」という固体燃料を使う補助ロケットを搭載することができます。
「H3」は、「H2A」に比べて、
▽エンジンの第1段では部品の数を、▽補助ロケットでは本体との結合点を減らすなど、独自の技術を採用して設計をシンプルにしています。
【発射台】
発射場は、鹿児島県の種子島宇宙センターですが、発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
【搭載重量に応じて変更可能】
「H3」は、
▽メインエンジンを2基から3基に増やせるほか、
▽補助ロケットの本数も最大4本まで搭載可能です。
▽人工衛星を覆うカバー「フェアリング」の大きさも長短2種類あり、
搭載する人工衛星に応じて仕様を変えられるのも特徴です。
【初号機は】
今回打ち上げる初号機は、
▽メインエンジンが2基、
▽補助ロケットが2本、
▽フェアリングは短いタイプを使用するため全長は57メートルで、
▽人工衛星を含めない重量はおよそ422トンです。
地球観測衛星「だいち3号」を搭載します。
特徴は「安く大きく」

【パワー増強とコストダウン】
新型ロケット「H3」の最大の特徴は、▽パワー増強と、▽コストダウンの両立です。
【日本のロケット長所と短所】
現在の主力ロケット「H2A」は、打ち上げ能力を強化した「H2B」も含め、これまで55回打ち上げられ、失敗は2003年、「H2A」6号機の1回だけで成功率は98%を誇ります。
一方で、「H2A」は、打ち上げ1回当たり、およそ100億円かかります。
商業衛星の打ち上げ需要が高まり、世界中で新型ロケットの開発が進む中で、H2Aでは将来、価格競争の面で不利になると指摘されています。
【「H3」が掲げる目標】
「H3」は全長が最長で63メートルと、「H2A」より10メートル長いほか、直径も1.2メートル大きい5.2メートルで、国内のロケット史上最大。
打ち上げ可能な重量は、「H2A」のおよそ1.3倍に増強されました。
そしてコスト面では、打ち上げにかかる費用をおよそ50億円と、「H2A」の半分程度に抑えることを目指して開発。
独自の技術を採用してエンジン部品の数をこれまでの3分の1程度に減らしたほか、
ロケットの発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
さらに、受注から打ち上げまでの期間を2年から1年に短縮するとともに年間6機の打ち上げを目標に掲げています。
【高い信頼性も維持】
「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、新しい宇宙開発時代に必要なパワー増強とコストダウンを両立させ、各国がしのぎを削る国際的な打ち上げビジネスに対抗するのがねらいです。
新型ロケット「H3」の最大の特徴は、▽パワー増強と、▽コストダウンの両立です。
【日本のロケット長所と短所】
現在の主力ロケット「H2A」は、打ち上げ能力を強化した「H2B」も含め、これまで55回打ち上げられ、失敗は2003年、「H2A」6号機の1回だけで成功率は98%を誇ります。
一方で、「H2A」は、打ち上げ1回当たり、およそ100億円かかります。
商業衛星の打ち上げ需要が高まり、世界中で新型ロケットの開発が進む中で、H2Aでは将来、価格競争の面で不利になると指摘されています。
【「H3」が掲げる目標】
「H3」は全長が最長で63メートルと、「H2A」より10メートル長いほか、直径も1.2メートル大きい5.2メートルで、国内のロケット史上最大。
打ち上げ可能な重量は、「H2A」のおよそ1.3倍に増強されました。
そしてコスト面では、打ち上げにかかる費用をおよそ50億円と、「H2A」の半分程度に抑えることを目指して開発。
独自の技術を採用してエンジン部品の数をこれまでの3分の1程度に減らしたほか、
ロケットの発射台も新たに開発していて、打ち上げ作業の効率化を図る工夫を施しています。
さらに、受注から打ち上げまでの期間を2年から1年に短縮するとともに年間6機の打ち上げを目標に掲げています。
【高い信頼性も維持】
「H3」は、これまで築いてきた日本のロケットへの高い信頼性を維持しながら、新しい宇宙開発時代に必要なパワー増強とコストダウンを両立させ、各国がしのぎを削る国際的な打ち上げビジネスに対抗するのがねらいです。
難航極めたエンジン開発

【年度をまたぐ2度の打ち上げ延期】
「H3」の初号機の打ち上げは当初、2020年度の計画でしたが、開発が難航し、年度をまたぐ延期を2度、余儀なくされました。
延期の原因は、ロケット開発の最大の難所で、「魔物が潜む」とも言われるメインエンジンの開発でした。
【「LEー9」とは】
「H3」は、パワー増強とコストダウンの目標とともにこれまで築いてきた打ち上げへの高い信頼性の維持が掲げられました。
その重要な鍵となるのが、新型のメインエンジン「LEー9」です。
従来のメインエンジンと大きく異なるのが、燃料を送り込む装置「ターボポンプ」の駆動方法。
これまでは、「ターボポンプ」を動かすための強力なガスを生み出す「副燃焼室」がありましたが、「LE-9」では構造をシンプルにするため、「副燃焼室」をなくしました。
これによって部品の数を3分の1程度に減らすことで「コストダウン」につなげるのがねらいでした。
【壁となった「振動問題」】
しかし、「ターボポンプ」を強力に動かすために内部を大きくしたことなどから装置の一部に負荷がかかり、2020年5月に実施したエンジン燃焼試験で、特殊な振動が生じた影響で部品にヒビが入る問題が浮上。
JAXA=宇宙航空研究開発機構は2020年9月、初号機の打ち上げを翌年度に延期すると発表しました。
その後、ターボポンプを改良するなどして特殊な振動による影響は改善されましたが、おととし10月のエンジン燃焼試験で、またしても特殊な振動が装置の一部で新たに確認されます。
このため去年1月、JAXAは2度目となる打ち上げ延期を発表しました。
【「日々是燃焼」の精神で】
開発チームは、「ターボポンプ」の製造に数か月かかることなどを考慮して異なる対策を施した「ターボポンプ」を5種類製造し、去年3月以降、燃焼実験を次々に実施して検証。
去年11月に実施した最終段階の試験をクリアし、打ち上げにこぎ着けました。
「H3」の初号機の打ち上げは当初、2020年度の計画でしたが、開発が難航し、年度をまたぐ延期を2度、余儀なくされました。
延期の原因は、ロケット開発の最大の難所で、「魔物が潜む」とも言われるメインエンジンの開発でした。
【「LEー9」とは】
「H3」は、パワー増強とコストダウンの目標とともにこれまで築いてきた打ち上げへの高い信頼性の維持が掲げられました。
その重要な鍵となるのが、新型のメインエンジン「LEー9」です。
従来のメインエンジンと大きく異なるのが、燃料を送り込む装置「ターボポンプ」の駆動方法。
これまでは、「ターボポンプ」を動かすための強力なガスを生み出す「副燃焼室」がありましたが、「LE-9」では構造をシンプルにするため、「副燃焼室」をなくしました。
これによって部品の数を3分の1程度に減らすことで「コストダウン」につなげるのがねらいでした。
【壁となった「振動問題」】
しかし、「ターボポンプ」を強力に動かすために内部を大きくしたことなどから装置の一部に負荷がかかり、2020年5月に実施したエンジン燃焼試験で、特殊な振動が生じた影響で部品にヒビが入る問題が浮上。
JAXA=宇宙航空研究開発機構は2020年9月、初号機の打ち上げを翌年度に延期すると発表しました。
その後、ターボポンプを改良するなどして特殊な振動による影響は改善されましたが、おととし10月のエンジン燃焼試験で、またしても特殊な振動が装置の一部で新たに確認されます。
このため去年1月、JAXAは2度目となる打ち上げ延期を発表しました。
【「日々是燃焼」の精神で】
開発チームは、「ターボポンプ」の製造に数か月かかることなどを考慮して異なる対策を施した「ターボポンプ」を5種類製造し、去年3月以降、燃焼実験を次々に実施して検証。
去年11月に実施した最終段階の試験をクリアし、打ち上げにこぎ着けました。
海外のロケット開発は

【新型ロケット開発ラッシュ】
商業衛星の打ち上げ需要が高まっていることを背景に、近年、世界中で新たな大型ロケットの開発が進められています。
日本の新型ロケット「H3」は、全長が最長63メートルありますが、同程度の大きさのロケットが各国で開発・運用されています。
運用がすでに始まっているのは、
▼アメリカでは全長70メートルの「ファルコン・ヘビー」。
▼ロシアでは全長69.5メートルの「アンガラA5」、
▼中国では全長およそ54メートルの「長征5号B」などです。
また、
▼ヨーロッパでは全長63メートルの「アリアン6」が開発中。
▼アメリカのロケット全長69.5メートルの「バルカン」なども開発が進められています。
商業衛星の打ち上げ需要が高まっていることを背景に、近年、世界中で新たな大型ロケットの開発が進められています。
日本の新型ロケット「H3」は、全長が最長63メートルありますが、同程度の大きさのロケットが各国で開発・運用されています。
運用がすでに始まっているのは、
▼アメリカでは全長70メートルの「ファルコン・ヘビー」。
▼ロシアでは全長69.5メートルの「アンガラA5」、
▼中国では全長およそ54メートルの「長征5号B」などです。
また、
▼ヨーロッパでは全長63メートルの「アリアン6」が開発中。
▼アメリカのロケット全長69.5メートルの「バルカン」なども開発が進められています。
打ち上げの手順は
【打ち上げまで】
新型ロケット「H3」の初号機は、17日の午前10時37分ごろに鹿児島県の
種子島宇宙センターから打ち上げられます。
【機体移動】
機体の組み立て棟にあるロケットは、16日の午後4時ごろから発射地点に移動。
16日午後10時すぎから燃料の「液体水素」と燃焼に必要な「液体酸素」の注入が始まります。
17日は、午前9時40分ごろと午前10時半ごろに、それぞれ機体の状況や天候などを踏まえ、打ち上げを行うかどうかを判断します。
打ち上げ実施が決まると、発射の4分前からの作業は自動に切り替わり、発射の2分50秒前に電源を地上設備からロケット内部に切り替えます。
発射の6秒ほど前からメインエンジンが燃焼し始め、午前10時37分ごろ、補助ロケットが燃焼すると同時に「H3」は発射台を離れます。
【打ち上げ後は】
ロケットは、メインエンジンと補助ロケットで上昇。
▽発射の1分56秒後に高度43キロで補助ロケットが分離。
▽メインエンジンが燃焼を続け、3分31秒後、ロケットの最上部にある「フェアリング」と呼ばれる人工衛星を覆うカバーを外します。
▽さらに、4分56秒後に高度258キロでメインエンジンが燃焼停止。
ロケットの1段目が切り離されます。
その後も上昇を続け、
▽2段目のエンジンが、発射の5分15秒後に燃焼をスタート。
▽16分42秒後、高度675キロで搭載した「だいち3号」を分離する計画です。
新型ロケット「H3」の初号機は、17日の午前10時37分ごろに鹿児島県の
種子島宇宙センターから打ち上げられます。
【機体移動】
機体の組み立て棟にあるロケットは、16日の午後4時ごろから発射地点に移動。
16日午後10時すぎから燃料の「液体水素」と燃焼に必要な「液体酸素」の注入が始まります。
17日は、午前9時40分ごろと午前10時半ごろに、それぞれ機体の状況や天候などを踏まえ、打ち上げを行うかどうかを判断します。
打ち上げ実施が決まると、発射の4分前からの作業は自動に切り替わり、発射の2分50秒前に電源を地上設備からロケット内部に切り替えます。
発射の6秒ほど前からメインエンジンが燃焼し始め、午前10時37分ごろ、補助ロケットが燃焼すると同時に「H3」は発射台を離れます。
【打ち上げ後は】
ロケットは、メインエンジンと補助ロケットで上昇。
▽発射の1分56秒後に高度43キロで補助ロケットが分離。
▽メインエンジンが燃焼を続け、3分31秒後、ロケットの最上部にある「フェアリング」と呼ばれる人工衛星を覆うカバーを外します。
▽さらに、4分56秒後に高度258キロでメインエンジンが燃焼停止。
ロケットの1段目が切り離されます。
その後も上昇を続け、
▽2段目のエンジンが、発射の5分15秒後に燃焼をスタート。
▽16分42秒後、高度675キロで搭載した「だいち3号」を分離する計画です。
搭載する「だいち3号」とは

「だいち3号」は、JAXA=宇宙航空研究開発機構と三菱電機がおよそ280億円をかけて開発した地球観測衛星です。
災害の監視や状況把握、地図の作成などに活用され、2011年、東日本大震災の
被害状況の観測後に運用を終えた「だいち」の後継機にあたり、2014年に打ち上げられた「だいち2号」と併用して運用される計画です。
大きさは、▽高さ5メートル、▽重さおよそ3トンで、地球を一日当たりおよそ15周し、上部に取り付けられたセンサーを使って観測します。
初代「だいち」に比べると、画像の解像度は3倍以上に向上していて、高度670キロの宇宙から地上にある80センチの物体を識別できるということです。
さらに、
通信速度は従来の2倍以上となり、
▽災害時の緊急観測や▽地図情報に役立てられるほか、▽森林の生育状況や、▽魚などの生息場所となる「藻場」の状態の把握などにも活用が期待されます。
このほか「だいち3号」には、防衛省が開発した「2波長赤外線センサー」が搭載され、宇宙空間で実証が行われます。
このセンサーは、異なる2つの赤外線の波長を同時に検出し、より高い識別能力を発揮することが可能とされ、将来的には弾道ミサイルの発射の探知など、安全保障に関わる情報収集や警戒監視への活用が期待されるということです。
災害の監視や状況把握、地図の作成などに活用され、2011年、東日本大震災の
被害状況の観測後に運用を終えた「だいち」の後継機にあたり、2014年に打ち上げられた「だいち2号」と併用して運用される計画です。
大きさは、▽高さ5メートル、▽重さおよそ3トンで、地球を一日当たりおよそ15周し、上部に取り付けられたセンサーを使って観測します。
初代「だいち」に比べると、画像の解像度は3倍以上に向上していて、高度670キロの宇宙から地上にある80センチの物体を識別できるということです。
さらに、
通信速度は従来の2倍以上となり、
▽災害時の緊急観測や▽地図情報に役立てられるほか、▽森林の生育状況や、▽魚などの生息場所となる「藻場」の状態の把握などにも活用が期待されます。
このほか「だいち3号」には、防衛省が開発した「2波長赤外線センサー」が搭載され、宇宙空間で実証が行われます。
このセンサーは、異なる2つの赤外線の波長を同時に検出し、より高い識別能力を発揮することが可能とされ、将来的には弾道ミサイルの発射の探知など、安全保障に関わる情報収集や警戒監視への活用が期待されるということです。
今後の打ち上げ計画は
新型ロケット「H3」は現在主力の「H2A」の後継機として今後20年にわたり運用される計画です。
内閣府の宇宙基本計画によりますと、「H3」の打ち上げは初号機以降、▽来年度に3回、▽再来年度に6回など、2029年度までに少なくとも24回計画されています。
「H2A」は先月、46号機を打ち上げていて、再来年度の50号機までで製造を終え、2025年度以降、「H3」に切り替えられる予定です。
【海外の商業衛星の受注も】
「H3」による海外の商業衛星打ち上げはイギリスの衛星通信大手からすでに1件受注しています。
「H2A」では、5件にとどまっている受注を増やしたい考えです。
【「アルテミス計画」にも活用予定】
さらに、地球から遠く離れた月や火星の探査にも活用されます。
再来年度、
▽火星の衛星からサンプルを地球に持ち帰る探査機のほか、
▽月の南極に着陸し氷の量などを調べる探査機を打ち上げる計画です。
2030年には月を周回する新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」に物資を運ぶ予定で、アメリカが進める国際的な月探査プロジェクト「アルテミス計画」に日本が参加するうえで重要な役割を担う見通しです。
内閣府の宇宙基本計画によりますと、「H3」の打ち上げは初号機以降、▽来年度に3回、▽再来年度に6回など、2029年度までに少なくとも24回計画されています。
「H2A」は先月、46号機を打ち上げていて、再来年度の50号機までで製造を終え、2025年度以降、「H3」に切り替えられる予定です。
【海外の商業衛星の受注も】
「H3」による海外の商業衛星打ち上げはイギリスの衛星通信大手からすでに1件受注しています。
「H2A」では、5件にとどまっている受注を増やしたい考えです。
【「アルテミス計画」にも活用予定】
さらに、地球から遠く離れた月や火星の探査にも活用されます。
再来年度、
▽火星の衛星からサンプルを地球に持ち帰る探査機のほか、
▽月の南極に着陸し氷の量などを調べる探査機を打ち上げる計画です。
2030年には月を周回する新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」に物資を運ぶ予定で、アメリカが進める国際的な月探査プロジェクト「アルテミス計画」に日本が参加するうえで重要な役割を担う見通しです。
初号機打ち上げの意義は

宇宙開発に詳しい笹川平和財団の角南篤理事長は、国際的な宇宙利用や宇宙ビジネスの拡大が進む中、新型ロケット「H3」は日本の存在感を示すうえで重要な意味を持つと指摘します。
中でも、アメリカが進める国際的な月の探査プロジェクト「アルテミス計画」で「H3」は、月を周回する新たな宇宙ステーション、「ゲートウェイ」への物資の補給などへの活用が期待されています。
角南理事長は「月と地球の間の宇宙空間における日本の役割をしっかり確保していくことにつながるという点で、『H3』は非常に期待されると思う。大型のロケットということで輸送できるものが大きく、低コストもねらっている。ウクライナ侵攻を受けて宇宙の分野でも各国の連携が難しくなる中、自国の輸送手段を持つことが重要になってきているので、『H3』の成功は大きな意味を持つだろう」と話していました。
また、市場規模が2040年ごろには世界で100兆円に上るとも予測される宇宙産業については、「宇宙ビジネスに参入する企業にとって、『H3』は低コストで宇宙への輸送手段を提供できることになる。さらに新興国にとっても、人工衛星を活用した気候変動対策や農作業など、宇宙利用が期待されている。こうしたニーズに対し、日本が低コストで信頼性かつ安全性の高い輸送手段を世界に提供できることは、重要なビジネスチャンスになるのではないか」と指摘していました。
そして、日本の大型ロケットとしておよそ30年ぶりの新規開発となったことについて、「少し時間がかかりすぎた気はするが、新たなイノベーション、そして技術力の獲得につながったと思う。研究者や技術者の世代交代も考えてこれからもう少し頻繁にモデルチェンジも考えながら今回得た技術を『H3』の次にどう生かすか、すでに始まっている開発競争に向けて、人材を育て、開発を日本で進めていくことが期待される」と話していました。
中でも、アメリカが進める国際的な月の探査プロジェクト「アルテミス計画」で「H3」は、月を周回する新たな宇宙ステーション、「ゲートウェイ」への物資の補給などへの活用が期待されています。
角南理事長は「月と地球の間の宇宙空間における日本の役割をしっかり確保していくことにつながるという点で、『H3』は非常に期待されると思う。大型のロケットということで輸送できるものが大きく、低コストもねらっている。ウクライナ侵攻を受けて宇宙の分野でも各国の連携が難しくなる中、自国の輸送手段を持つことが重要になってきているので、『H3』の成功は大きな意味を持つだろう」と話していました。
また、市場規模が2040年ごろには世界で100兆円に上るとも予測される宇宙産業については、「宇宙ビジネスに参入する企業にとって、『H3』は低コストで宇宙への輸送手段を提供できることになる。さらに新興国にとっても、人工衛星を活用した気候変動対策や農作業など、宇宙利用が期待されている。こうしたニーズに対し、日本が低コストで信頼性かつ安全性の高い輸送手段を世界に提供できることは、重要なビジネスチャンスになるのではないか」と指摘していました。
そして、日本の大型ロケットとしておよそ30年ぶりの新規開発となったことについて、「少し時間がかかりすぎた気はするが、新たなイノベーション、そして技術力の獲得につながったと思う。研究者や技術者の世代交代も考えてこれからもう少し頻繁にモデルチェンジも考えながら今回得た技術を『H3』の次にどう生かすか、すでに始まっている開発競争に向けて、人材を育て、開発を日本で進めていくことが期待される」と話していました。