【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ベラルーシ閣僚 “制裁にロシアや中国などと関係強化し対抗”

ベラルーシのルカシェンコ政権の閣僚で、物価対策などの経済政策を担当しているアレクセイ・ボグダノフ反独占規制・商業相が15日、首都ミンスクでNHKの単独インタビューに応じ「ロシアとベラルーシの経済を統合するため、多くの取り組みが進んでいる。困難な時に、われわれは結束し、新しい輸出ルートを考え出し、非友好国からの悪影響を克服するためあらゆる手段を講じる」と述べ、欧米が相次いで制裁を科す中、ロシアと経済の連携を深めていると強調しました。

そのうえで、制裁によって、EU=ヨーロッパ連合との貿易が大きく落ち込んでいると認める一方で、「世界は、われわれに制裁を科す西側諸国だけではない。中国やインドなどは西側と異なる立場だ。われわれの重点は東側に移ってきている」と述べ、中国やインドなどアジアとの経済関係を強化して対抗したい考えを明らかにしました。

さらに、ボグダノフ氏は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「ベラルーシは、ウクライナ問題に関する和平交渉の再開に向けて、必要なものすべてを提供する準備がある」とも主張しました。

ただ、ロシアと同盟関係にあるベラルーシが仲介役を務めることには、懐疑的な見方が根強くあります。

ウクライナ軍“ロシア軍が各地で再びミサイル攻撃”

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は16日、SNSで「侵略国ロシアは、ウクライナの重要インフラを標的に再びミサイル攻撃を行った」と明らかにしました。

それによりますと、ロシア軍は16日未明に、爆撃機ツポレフ22M3や長距離戦略爆撃機ツポレフ95、それに黒海の艦艇などから、巡航ミサイルや対艦ミサイル合わせて36発を発射し、ウクライナ側はこのうち16発を撃ち落としたということです。

東部ドニプロペトロウシク州のリサク知事は、この攻撃で住宅が被害を受け79歳の女性が亡くなったほか、2人がけがをして病院に搬送されたとSNSに投稿しました。

また、ウクライナ空軍は、先月、東部ドニプロの集合住宅に着弾し、多くの犠牲者が出た攻撃で使われたとみられる対艦ミサイル「Kh-22」が今回も使われ、重要インフラを破壊したとしています。

「ロシア軍の主力戦車が侵攻前からほぼ半減か」英シンクタンク

イギリスの国際戦略研究所は15日、世界各国の軍事力や地域情勢を分析した年次報告書、「ミリタリー・バランス」の最新版を発表しました。

それによりますと、去年2月以降ウクライナ侵攻を続けるロシア軍について、自国の軍隊に対する不十分な理解に基づく戦略をとり、指揮命令系統や補給の面でウクライナ軍より劣っていたと指摘しています。

そして主力戦車「T72」が侵攻開始前からほぼ半減するなど、最新型の戦車が大幅に失われたと推定し、旧式装備を投入せざるをえなくなったと分析しています。さらに、巡洋艦「モスクワ」の沈没や近代的な戦闘機、ヘリコプターの損失などで海軍と空軍も逆境に立たされたとしています。

NATO 弾薬の生産能力強化で合意 ウクライナに供給へ

NATO=北大西洋条約機構は、2日間にわたって国防相会議を開き、今後、ウクライナへの軍事支援として大量の弾薬を供給するため、加盟各国が弾薬の生産能力を強化することで合意しました。

欧米の主要国を中心に30か国が加盟する世界最大の軍事同盟・NATOは15日までの2日間、ベルギーにある本部で国防相会議を開き、ウクライナへの追加の軍事支援などについて意見を交わしました。

ウクライナではロシア軍との戦闘の激化に伴い、大量の弾薬が消費され、軍事支援の一環として弾薬を供与する欧米各国では生産が追いつかなくなり、各国の軍の在庫が大きく減少する事態が懸念されています。
NATOのストルテンベルグ事務総長は会議のあと記者会見を開き「加盟国は、防衛産業と協力して弾薬の生産能力を強化することが必要だという認識で一致した」と述べました。

そして、口径155ミリの砲弾は増産が進んでいるとしたうえで「取り組みは成果をあげてきているが、さらなる強化が必要だ。ウクライナで起きているのは過酷な消耗戦であり、消耗戦とは補給をめぐる戦争だ」と述べ、軍事支援を継続する姿勢を改めて強調しました。

ロシアが空からの大規模な攻撃を準備している可能性 FTが報じる

イギリスのフィナンシャル・タイムズは14日、NATO=北大西洋条約機構の複数の当局者の話として、ロシアがウクライナとの国境近くに飛行機やヘリコプターを集結させ空からの大規模な攻撃を準備している可能性があると報じました。

この情報はNATOに加盟する各国に共有されたということです。

記事では、ロシア軍の攻撃はこれまで長距離ミサイルや地上部隊によるものが中心で、空軍については、ウクライナの防空システムが脅威になっているか、戦闘機の状態が十分整っていないという見方が主流だったとしています。

しかし、NATO加盟国の外交官は「ロシア空軍はおそらく戦力の80%以上が使える状態で、空からの攻撃によってウクライナの防空施設を破壊しようとしている」という見方を示したということです。

また、アメリカ政府の高官は「ロシアの地上部隊は消耗していることから、空からの攻撃に切り替える可能性がある。ウクライナは可能なかぎり防空能力を強化するとともに弾薬をそろえる必要がある」として、各国は軍事支援を急ぐべきだと指摘したということです。

“ウクライナでは当面外交よりも軍事支援が重要”ラトビア外相

NATO=北大西洋条約機構の加盟国のひとつ、バルト三国のラトビアの外相がNHKの取材に応じ、ウクライナでは当面、外交による解決は期待できず、軍事支援の方が重要になるという考えを強調しました。

ラトビアは2004年NATOに加盟し、今回の軍事侵攻では、ロシアに対して欧米各国が、軍事面、経済面で強い圧力をかけるべきだと主張してきました。
リンケービッチ外相は、15日、首都リガでNHKの取材に応じ、ウクライナの現状について「各国から兵器や装備品が次々と届いているが、必要なものは増えるばかりだ。装甲車や戦車、弾薬などあらゆるものが必要だ」と述べ、ウクライナへの軍事支援を緩めるべきではないという考えを示しました。

一方、ロシアについては「新型のミサイルや兵器を十分に生産することはおそらくできていないが、ソビエト時代に製造されたさまざまな兵器がまだ大量にあり、これからも民間人や民間の施設が標的となるだろう。洗練されていない旧式の兵器でも、多くの人を殺害できる」と述べロシアが戦争を継続する能力は十分にあるという見方を示しました。
そして軍事侵攻の今後の見通しについては「停戦や、外交による解決を目指すべきだという人もいる。しかし停戦で合意しても、ロシアは義務を守らず、圧力をかけ続け、自分たちが再び十分に力を蓄えたと思えば、また戦争を始めるだろう。外交によって解決が期待できる状況ではない」と述べ、当面の間は、外交よりも軍事支援の方が重要になるという考えを強調しました。

またリンケービッチ外相は、ラトビアがこれまでウクライナに供与した兵器などの総額は、GDP=国内総生産のおよそ1%にあたるとした上で「われわれが持っている装備は限られており、補充が必要な状況だ。りゅう弾砲や防空システムなどを補充しなくてはならない」と述べ、防衛力を強化するため、2027年までに国防費をGDPの3%に引き上げる見通しを示しました。

ウクライナ国防相「この戦争は資力の戦争」

ウクライナのレズニコフ国防相はNATO=北大西洋条約機構の国防相会議のために訪れているベルギーの首都ブリュッセルで15日、ロイター通信のインタビューに応じました。

このなかでレズニコフ国防相は「もしロシアが大規模な攻撃を仕掛けるとすれば、航空機を使って空を支配するだろう。こうした状況はウクライナにとっての真の脅威だ。それに対抗するため、私たちには洗練された、最新の航空機が必要だ。私は実現すると確信している」と述べ、欧米諸国に対し、ウクライナに戦闘機を供与するよう改めて求めました。
また「ウクライナ軍は大砲や戦車など、さまざまな現代的な兵器をすでに所有している。つまり、NATO加盟国との兵器の相互運用性は良好なレベルにある。ウクライナは事実上のNATO加盟国で、この戦争が終われば正式な加盟国となるだろう」と述べました。

そのうえで「この戦争は資力の戦争だ。私たちには支えてくれるパートナーたちがいて、勝つために支援してくれるだろう」述べ、今後も各国からの支援を受け、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。

一方で国防省での汚職疑惑をめぐってレズニコフ氏の交代が取り沙汰されていたことについては「ゼレンスキー大統領に引き続き国防相のポストを継続してほしいと言われた」として、交代を否定し、続投する意向を示しました。

ロシア外相 議会演説で欧米に対抗する姿勢を強調

ロシアのラブロフ外相は15日、議会下院で外交政策の基本方針について演説し、欧米は、世界でみずからの政策を押しつけようとしていると非難しました。

そして「ロシアは外交の焦点を、国際社会における西側諸国の独占支配を終わらせることにあてる」と述べ、欧米に対抗する姿勢を強調しました。

その上で、アジア太平洋や中東、アフリカ、それに中南米の国々は欧米が作ったルールに基づく秩序を望んでいないと主張し、中国とロシアが主導する上海協力機構やBRICS=新興5か国といった枠組みで、連携を強化する方針を示しました。