企業の中でも「ガクチカ」にこだわらずに採用活動を進めようという動きが出ています。
全国にショッピングセンターを展開する「パルコ」は、以前はエントリーシートの最初に「ガクチカ」を記入する欄を設けていましたが2年前に廃止しました。
入社後の業務ではイベントの企画などプロデュース力が求められ、「ガクチカ」だけでは人材の見極めが難しいと感じていたことに加え、新型コロナの影響が大学生に広がってきたためです。
その代わりに設けたのが「とっておきの写真」を掲載してもらい、そのエピソードを書く欄です。
学生にとって自己PRの自由度が増すことになると考えての導入でしたが、採用する側としても学生の人間性の理解が深まるメリットを感じたといいます。
人事戦略部の採用担当の柏木彩奈さんは「会社説明会の質疑応答の中で『アピールするエピソードがないが、皆さん、どういう話をしているんですか?』という質問が増えていました。「ガクチカ」は部活を頑張ったとかサークルやゼミを頑張ったといったどの会社でも言いやすい内容に偏ってしまうところがあり、学生1人1人の顔が見えにくいと思っていました。項目を変えたことでエントリーシートに個性が出て自身の価値観みたいなものが染みだしてくるような内容に変わったかなと思っています」と話していました。
「ガクチカ」の欄を廃止した初めての年に採用試験を受け、去年入社した古屋陽香さんは大学2年の後半から新型コロナの影響で部活動やアルバイトが制限されました。
バスケットボールの部活動を充実させるという思い描いていた大学生活は送れませんでしたが、写真を使った自己PRでは、小学校のころからいかに熱心にバスケットボールに打ち込んできたかを書き込み、自分をPRできたと感じています。
古屋さんは「これをやったという成果がないと、面接でアバウトなことしか答えられず具体的に何をしたのか聞かれた時に『実際、何もしていないです』という状況になると思います。エントリーシートをワクワクして書けたのが大きく他社よりも自分を伝えられました。採用する担当者がコロナ禍での学生生活を知ろうとしてくれる姿勢は助かるし、入社後のギャップも少なくなるのでこういう取り組みは大切だと思います」と話していました。

コロナ禍に直面の世代の就活 学生からは「ガクチカ」への悩み
来年春に卒業する大学生の就職活動は、3月に企業による説明会が解禁され本格的にスタートします。
入学当初からコロナ禍に直面し活動が制限された世代で、学生からは「学生時代に力を入れたこと=ガクチカ」への対応に関する悩みが聞かれ、企業からも学生をどう見極めるかが難しいという声が出ています。
来年春の就職を目指す今の大学3年生は入学当初からコロナ禍に直面し、講義がオンラインになることも多かったほか、部活動やサークル、アルバイトなどへの参加が制限されました。
就職活動では「ガクチカ」についてエントリーシートに書く欄があったり、面接で聞かれたりしますが、学生の中には何をPRすればよいのかという悩みが聞かれます。
このため大学や就職支援会社、それに自治体などでは「ガクチカ」をテーマにしたセミナーを開いたり打ち込めるものを探す手助けをしたりする取り組みも活発になってます。
一方、採用する側の企業にとってもコロナ禍で大学生活を送った学生たちの人柄や能力をどう見極めるかが課題だという声が上がっています。
企業の中には、エントリーシートの「ガクチカ」欄をやめて別の形で自分をPRしてもらう項目を新たに設けるところも出ています。
ことしの就職活動では「ガクチカ」をめぐって学生、企業双方が難しい対応を迫られそうです。
「ガクチカ」廃止の企業も
専門家 “すごい経験はいらない”
就職活動に詳しい採用コンサルタントの谷出正直さんは「学生側から見ると『ガクチカ』では部活やサークル、学園祭ですごい結果を残したことが大事だと思ってしまうかもしれないが、採用側の企業が見ているのは、目標設定をどのようにしたのかや、どんな時間の使い方をしたのかなどという価値観や考え方だ。すごいエピソード大会ではないということを知ってほしい」と話していました。
また企業の担当者に対しては「ことしの就活生は大学に入った時からコロナ禍であり、いろいろな人と接しながら経験を積むという部分は不足している。その部分を加味しながら、選考プロセスでどのように学生が成長していくか、伸びしろを見つけていくことが大事になってくる。工夫して学生の本音を聞き出しミスマッチの少ない採用活動を進めなくてはいけない」と話していました。
また企業の担当者に対しては「ことしの就活生は大学に入った時からコロナ禍であり、いろいろな人と接しながら経験を積むという部分は不足している。その部分を加味しながら、選考プロセスでどのように学生が成長していくか、伸びしろを見つけていくことが大事になってくる。工夫して学生の本音を聞き出しミスマッチの少ない採用活動を進めなくてはいけない」と話していました。