【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(15日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる15日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

英国防省 “ロシア側 兵器や装備の生産 追いつかず”

イギリス国防省は15日、「ロシアがウクライナでの作戦に必要な軍備などの確保や、長期的な防衛に必要な兵器の生産量に届いていないことは、ほぼ間違いない」と分析し、ロシア側で兵器や装備の生産が追いついていないという見方を示しました。

“ウクライナの子ども6000人 ロシアの管理施設に”

ロシアによる戦争犯罪などを調査しているアメリカの大学などのグループは軍事侵攻が始まって以降、少なくとも6000人のウクライナの子どもたちがロシアの愛国教育などを行う施設に収容されたとする報告書をまとめました。

施設は、ロシアがウクライナから一方的に併合したクリミアやモスクワなどに40か所以上あり、多くの施設ではロシアの愛国教育や軍事訓練などが体系的に行われていたとしています。

また、保護者と交わしたとされる同意に反して子どもたちが施設を出る日が先延ばしされることや、保護者が子どもの状態や居場所を確認できないケースもあったということです。

報告書は「ロシア政府が中心となった活動で、政治的な再教育が目的だ」と指摘するとともに「期間をはっきりさせずに、子どもたちを両親から引き離すのは、子どもの権利条約に違反する可能性がある」として批判しています。


【子どもを連れ戻した母親は…】
ウクライナ東部のハルキウ州に住むリュドミラさん(43)は、去年の8月下旬、13歳の娘のベロニカさんをロシア政府がウクライナの子どもたちを対象に行っている「サマーキャンプ」に送り出しました。

しかし、3週間の予定だったはずが、再会できたのは去年12月で連れ戻すのに3か月半かかりました。

「サマーキャンプ」に送り出した当時、リュドミラさんが暮らす地域はロシア軍に占領され、住んでいた村の近くの激戦地、クピヤンシクから砲撃の音が昼も夜も鳴り響く状況だったといいます。

こうした中、ベロニカさんがクラスメートが行くので自分も「サマーキャンプ」に行きたいと訴えたということでリュドミラさんは「はじめは反対しましたが、娘の安全のために送り出すことにしました。長期間、悩みました」と話し、苦渋の決断だったとしています。

「サマーキャンプ」は、ウクライナの国境に近いロシア南部の黒海に面した保養地、ゲレンジークで行われました。

しかし、9月上旬にウクライナ軍がハルキウ州の一部を奪還すると、ロシア側から子どもたちを戻す手段がないと告げられました。

リュドミラさんは、その時の心境について、「この時の感情は言い表せません。朝も夜も泣いていました。どうすることもできず、娘と連絡が取れていることだけが唯一の救いでした」と涙ながらに話していました。

娘のベロニカさんは同じくロシア南部のアナパに移され、午前中は動物園や海に行くなどの活動をしたあと、午後から3、4時間、ロシア語での授業に出る生活が続いていたといます。

その後、リュドミラさんは、ロシアから子どもを連れ戻す支援をしているウクライナの人権団体の存在を知り、ほかの13人の親とともに子どもたちを迎えに行くことになりました。

バス2台で、ポーランドとベラルーシを経由して、施設があるロシアのアナパまで5日間かけて移動し、3か月半ぶりに娘との再会を果たしました。

リュドミラさんは、「娘は私たちがいる部屋に入ってきて、私を見つけるとはじめは笑顔を見せ、そして私に飛びついてきて抱きしめ、『もう会えないかと思った』と言って泣きました。私はなにも言うことができずただただ、泣いて娘にキスをしました」と再会した時の様子を話していました。

そのうえで、今の心境について、「私たちはただ静かで平和な生活がしたい。仕事があり、家があり、ここに家族と座っていられるだけでいいのです」と話していました。


【調査担当者「前代未聞の規模」】
調査を行ったアメリカのイェール大学公衆衛生大学院のナサニエル・レイモンドさんはNHKの取材に応じ、「ロシアの目的は、子どもたちに対するロシアの愛国教育や軍事訓練であり、子どもたちをプロパガンダに利用することにある。こうした行為はすべて子どもの権利条約で禁止されている」と指摘しています。

また、「現在、さらに数十の施設を調査している。収容されている子どもの数は報告書よりもはるかに多いとみている。施設への子どもの収容は前代未聞の規模であり、さらなる調査が必要だ」として、実際に収容された人数は6000人を大きく上回ると分析しています。

そのうえで、「国連や政府間組織などの国際的な査察団が施設への立ち入り調査を行い、収容されている子どもの状況を把握する必要がある」と述べ、国際社会による対応が欠かせないと強調しました。

米国防長官「ウクライナは春ごろ攻勢に」 支援急ぐ考え強調

ロシアによる侵攻が続くウクライナへの軍事支援を欧米各国が協議する会合が開かれ、アメリカのオースティン国防長官は、ウクライナ軍がことし春に新たな反転攻勢に出るという見通しを示し、各国と連携して支援を急ぐ考えを強調しました。

この会合はロシアによる軍事侵攻が始まって以降、アメリカが定期的に開いているもので、ベルギーのブリュッセルにあるNATOの本部で14日、オースティン国防長官らおよそ50か国の代表のほかウクライナのレズニコフ国防相が参加して今後の軍事支援について協議しました。
会合のあとオースティン国防長官が記者会見し「ウクライナは可能なかぎり早い段階で勢いをつけ、自国に有利な戦況を確立したいと考えている。春ごろに攻勢に出ることが見込まれる」と述べて、ウクライナ軍がことし春に新たな反転攻勢に出るという見通しを示しました。

そして会合ではウクライナ軍の反転攻勢を見据え訓練を含む今後の支援について集中的に議論したとした上で「われわれはウクライナと協力して、差し迫った要望に対応する。春は数週間後に迫っており、われわれは多くのことを行わなければならない」と述べて、各国と連携して軍事支援を急ぐ考えを強調しました。

ゼレンスキー大統領「1メートルをめぐる戦いだ」

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日に公開した動画で、「前線、特にドネツクとルハンシクの戦況は非常に厳しいままだ。文字どおり、ウクライナの土地の1メートル、1メートルをめぐる戦いだ」と述べ、ウクライナ東部で激しい戦闘が続いていることを強調しました。

また、ウクライナへの軍事支援を欧米各国が協議する会合が開かれたことを踏まえ、「意思決定とその実行、武器の供与や訓練などすべてにおいてスピードが重要だ。スピードは命を救う」と述べ、欧米各国に対して軍事支援を急ぐよう訴えました。

モルドバ大統領 現政権転覆の情報を得たとしてロシアを非難

ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナの隣国モルドバのサンドゥ大統領は13日に行った会見で、ロシアが工作員を使ってEU=ヨーロッパ連合への加盟を目指すモルドバの現政権の転覆を企てているとする情報を得たとしてロシアを厳しく非難しました。

これに対しロシア外務省は14日、公式サイトでザハロワ報道官のコメントを掲載し、サンドゥ大統領の発言について「全く根拠がなく事実無根だ」と反論しました。

モルドバは、国内に一方的に分離独立を宣言してロシア軍が駐留を続ける地域があり、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する警戒感を強め、欧米寄りの姿勢を鮮明にしています。