トルコ・シリア大地震 広範囲にわたる被害 地図と画像で詳しく

トルコ南部のシリア国境近くで起きた大地震。これまでにトルコ、シリア両国であわせて3万5000人以上が死亡し、被災者数は約2600万人にものぼるとされています。

今回の地震を地図で見てみると、遠く離れた複数の街で同じような壊滅的被害が出ている現状がわかってきました。

シリアの被害状況も少しずつわかってきました。内戦の影響で支援が困難な実態も指摘されています。

今回の地震の震源は、トルコとシリアの国境付近です。

地震発生から日本時間7日の2日間に起きたマグニチュード4以上の地震の震源を地図に示しました。

6日未明にマグニチュード7.8、そのおよそ9時間後にはマグニチュード7.5の地震が発生するなど、トルコ南部とシリア北部にまたがる地域で揺れが続きました。

震源域 関東地方に匹敵する広さ

同じ縮尺の関東地方の地図を隣に並べると、震源域が広範囲にわたっていることがよく分かります。
今回の地震で大きな被害が確認されている街を地図に示しました。

このうち震源に近いカフラマンマラシュ(1)とアンタキヤ(5)は、およそ170キロ離れています。
この距離を日本の地図で見てみると、東京から福島県の南部、あるいは大阪から福井市周辺までにあたります。

これだけ離れた場所で、同じように建物が倒壊する被害が出ているのです。

各地の被害を映像から詳しく見ていきます。まずはトルコ側です。

(1)カフラマンマラシュ 大きな被害

こちらは震源に近いカフラマンマラシュです。

多くの建物は潰れ、以前の面影はまったくありません。

(2)ガジアンテプ 街のシンボルが…

カフラマンマラシュから70キロほど南東のガジアンテプです。

街の中心部にはおよそ1500年前に建設された城があり、町のシンボルになっていましたが、壁は大きく崩れてしまいました。

(3)ヌルダギ 活断層とみられる地割れ確認

震源に近いヌルダギでは、地表に現れた活断層の一部とみられる地割れなどが確認できました。

全長は100キロ以上に及ぶとみられるということです。

活断層に詳しい東北大学の遠田晋次教授は「明瞭に地震の断層が地表に現れている。道路を見ると断層を境に左に動くようにずれていてこれまで観測された断層の動きとも整合的だ」と指摘しました。

「今回の地震の規模から見ると、かなり長い区間でこうした地表の断層ができている可能性がある」と分析しています。

(4)イスケンデルン 港で火災が発生

トルコ国内屈指の港があるイスケンデルンです。

港に積まれていたコンテナが崩れ大規模な火災が発生し、貨物船の出入港ができなくなりました。

10日には火がほぼ消し止められ貨物船の出入港が再開されましたが、物流が通常どおりに戻るには時間がかかることも予想されています。

(5)アンタキヤ

シリアとの国境に近いハタイ県のアンタキヤの映像です。

中心部の川沿いの地域では、あたり一帯がほぼ壊滅状態になりました。

集合住宅とみられる数多くの建物が倒壊していました。
壊滅的な被害はシリア側でも起きています。

(6)サルカン

シリア北部にある村で撮影された映像では、住宅や道路などが広い範囲にわたり水浸しになっていました。

AP通信は住民の話として、9日に北部にあるダムのコンクリートが壊れ、ダムからもれ出た水が村に流れ込んで建物にも被害を与えたと伝えています。

(7)イドリブ

北西部のイドリブでは建物が大きく壊れているのが確認できます。

イドリブ県にはシリアで続く内戦で、アサド政権の攻撃から逃れた人たちが暮らすキャンプなどがあります。

(8)アレッポ

北部の都市アレッポでも建物が倒壊し、がれきの撤去作業が行われています。

長期間大きな地震ない「空白域」で発生か

今回の大地震について専門家は、今回動いたとされる断層の中でも長い間、大きな地震がない「空白域」で発生したと分析しています。
今回の地震はトルコ東部にのびる「東アナトリア断層」がずれ動いたことで発生したとみられますが、この断層では過去、繰り返しマグニチュード7クラスの大地震が起きています。

ただ東京大学地震研究所の三宅弘恵准教授によりますと、今回の震源地の近くのエリアは1513年を最後に500年以上にわたって大地震の記録がありませんでした。

こうした「空白域」と呼ばれる場所は長年、大地震が起きていないことから発生する可能性が高くなるとされていて、今回の地震の前から複数の専門家が指摘していたということです。

ただ現地ではこうした指摘にもかかわらず、建物の耐震化などの対策は十分に進んでいなかったと見られるということです。

シリア北西部の実態 詳しく分からず

シリアでは内戦が10年にわたって続いていて、大地震の被災地には政権側と反政府勢力、それぞれの支配地域が含まれています。

国連によりますとシリア国内の被災者は1000万人を超え、人口の半数にのぼるとみられています。

ただシリア北西部の反政府勢力が支配する地域では、これまで支援ルートが限られてきたことから救助や支援の手が十分に行き届いていないうえ、詳しい被害が分からない状態が続いてきました。

衛星画像の分析で見えてきたことも

こうしたなか国連の衛星センターは14日、トルコとの国境に近い北西部のジャンデレスの町の様子を撮影した衛星画像の分析結果を公表しました。
画像は11日に撮影されたもので、ジャンデレスの町の広い範囲が赤や黄色の点で覆われています。

▼赤い点は被害を受けたことが確認できる建物でその数は228棟にのぼります。

▼黄色い点は被害を受けたおそれがある建物で318棟にのぼるということです。

町のほぼ全域が地震の被害に見舞われたことがわかります。

また、人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」がジャンデレスの町を地震発生前と発生後で比較した衛星画像からは深刻な被害の状況がわかります。
2キロ四方ほどのエリアで地震の前は整然と並んでいた建物が至るところで倒壊して、周辺の道をふさいでいたり、がれきが四方に広がったりしている様子が確認できます。
また地震の前は平地だった場所に、地震のあと白いテントのようなものが並んでいる様子が確認でき、被災者の避難場所になっている可能性があります。

シリア北西部への支援 今後本格化か

トルコからジャンデレスなどシリア北西部への国連の支援ルートはこれまで1か所に限られていましたが、国連によりますと、シリアのアサド大統領は13日、ルートを3か月間、2か所増やすことを表明したということです。

国際的な支援から半ば取り残されてきたシリア北西部の被災者への支援が今後、本格化することが期待されています。

“国際社会が結束した支援を”

中東情勢に詳しい三菱総合研究所の中川浩一主席研究員は「今のシリアは内戦状態で統一した支援が非常に難しい状況になっている。ようやく国連が現地に入ったが、被害の実態把握にはまだ時間がかかるのではないか。人道支援は人道支援として、政治的思惑と離れて国際社会が連帯できるかどうか、入り組んだ支配地域を越えていかに支援のルートを確立していくか、まさにこれから結束してやっていかなければいけない」と話しました。