アメリカ軍 飛行物体を撃墜 今月4回目 日本でも過去に目撃?

アメリカ国防総省は12日、五大湖の上空を飛行していた所属がわからない物体を撃墜したと発表しました。アメリカ軍が気球などの飛行物体を撃墜したのは今月に入って4回目、3日連続となります。今回の物体はレーダーで検知するのが難しいほど小さいものだったとしています。

アメリカ国防総省 “所属不明の物体を撃墜”

アメリカ国防総省の高官らは12日、電話会見を開き、アメリカ軍のF16戦闘機が五大湖のひとつでアメリカとカナダにまたがるヒューロン湖の上空を飛行していた所属のわからない物体を撃墜したと発表しました。

物体は高度およそ2万フィート、およそ6000メートルを飛行し、民間の航空機の飛行に危険を及ぼす恐れがあったということで、バイデン大統領の指示で撃墜が行われたとしています。

アメリカ軍は撃墜した飛行物体について、アメリカ本土に対する軍事的な脅威とはみなしていないとした一方で、情報収集の能力を持っていた可能性があるとしています。

今回の飛行物体はヒューロン湖のカナダ側に落下したとみられ、現在、カナダ側の協力を得ながら回収を進めています。

撃墜までの経緯

アメリカ軍の発表によりますと、今回撃墜された飛行物体は前日11日のアメリカ東部時間の夕方に国境から北、およそ110キロのカナダの領空で最初に検知されました。

レーダーで追跡したところ所属がわからないということが判明したため、調査のためF15戦闘機がスクランブル発進したということです。

その後、物体はアメリカ領空に侵入しましたが、日が暮れたことなどからアメリカ軍は一時この物体を見失いました。

しかし、12日になって西部モンタナ州から中西部ウィスコンシン州までの間で断続的に何らかの物体がレーダーで検知されました。

その物体について分析した結果見失っていた飛行物体と同じ物である可能性が高いことが分かりました。

このためアメリカ軍はF16戦闘機をスクランブル発進させ、12日午後、人的被害を防ぎ、残骸を回収しやすくするため中西部ミシガン州のヒューロン湖の上空で飛行物体を撃墜したということです。

撃墜したのは4回目 特徴や共通点は?

アメリカ軍はこれまで、4日に南部サウスカロライナ州の沖合の上空で中国の気球を撃墜したほか、10日と11日にはそれぞれアラスカ州とカナダの上空を飛行していた所属のわからない飛行物体を撃墜しています。
4日に撃墜した中国の気球の高さは60メートルほどで、ほかよりも大きなものとなっているほか、高度は1万8000メートルと高い場所を飛行していました。

一方、アメリカ軍の幹部は記者団に対し今回・12日に撃墜した飛行物体については「非常に小さく、レーダーで検知されにくかった」としたうえで、前日までに2日連続で撃墜した物体と大きさや飛行速度が似ているとしています。

今回の飛行物体はヒューロン湖のカナダ側に落下したとみられ、現在、カナダ側の協力を得ながら回収を進めています。

中国 汪文斌報道官「でっち上げ」 飛行物体との関係

所属がわからない3つの飛行物体について、中国外務省の汪文斌報道官は13日の会見で記者から中国との関係を問われたのに対し「私は知らない。事実でないことをでっち上げ、中国を中傷するやり方に断固反対する」と反発しました。

そのうえで「アメリカは頻繁に艦船や航空機を派遣し、中国を偵察している。また、アメリカの気球が去年からだけでも中国の関連部門の承認を得ずに十数回にわたって領空を違法に飛行している。アメリカがまずやるべきことはみずからを反省し、態度を根本から改めることだ」と主張し、アメリカをけん制しました。

日本でも過去に目撃か

日本の上空でも過去に似たような白い飛行物体が目撃されています。

【宮城県で】
3年前仙台市などの上空で確認された物体は、白色の球体で2つのプロペラがついていました。

【沖縄県で】
去年4月28日、沖縄県糸満市や座間味島近くの上空では、この気球に似た物体が浮遊しているのが目撃されていました。

座間味島では午前10時半ごろ、船で釣りをしていた乗客と船長の男性2人が目撃し、双眼鏡で確認したところ、気球が空中に浮遊しているように見えたということです。

この3時間ほど前の午前7時20分ごろには糸満市潮崎町で男性が南の上空に白い気球のような物体が浮かんでいるのを見たということです。物体はしばらくすると見えなくなっていたということです。

沖縄気象台によりますと、同じ日に「白い物体が浮かんでいる」という連絡が数件寄せられたということです。

気象台では1日に2回、石垣島と南大東島で観測気球を上げているということですが確認されたものは気象台のものではないとしていて中国の気球だった可能性もあります。

【鹿児島県で】
鹿児島県薩摩川内市では、4年前の2019年11月20日に目撃されていました。

夕方5時すぎ、山手にある天文施設「せんだい宇宙館」の外で作業をしていた男性職員が上空を漂う物体を発見しました。

同じ頃、市民からも「UFOではないか」といった問い合わせが多数寄せられ、この職員が気象台をはじめ警察や自衛隊などに問い合わせたものの結局、どの機関もこの物体の情報を把握しておらず何かわからなかったということです。

同じ物体は当日鹿児島市でも目撃されていたということで、せんだい宇宙館の今村聡館長は「気球は偏西風に乗って移動していたと見られる。

陸地で打ち上げたとしたら中国大陸になるかなと思います」と話していました。

気球が日本に飛んできたらどうする?法的位置づけは?

【日本の領空が侵犯されたとして対処する場合】
防衛省によりますと、気球は国際法上、航空機に位置づけられ、気球が許可なく日本の領空に侵入した場合は、領空侵犯にあたるとして、必要な措置ができるとしています。

具体的には自衛隊機がスクランブル=緊急発進を行って退去を警告したり、最寄りの飛行場に強制着陸させたりできますが、領空侵犯に対する措置は、警察権の行使として対応にあたるため、武器を使用できるのは、正当防衛や緊急避難に該当する場合とされています。

【弾道ミサイルへの対処方法を準用できるか?】
自衛隊法では、弾道ミサイルなどが日本に飛来するおそれがある場合防衛大臣は自衛隊に対し、上空で破壊するための措置を命じることができますが、航空機は該当しないことが明記されています。

【自衛権の行使として対応できるか?】
このほか、自衛隊に防衛出動が命じられている場合は、日本を防衛するために必要な武力を行使することができますが、防衛出動は日本に対する武力攻撃が行われた場合などに限られています。

また、国際法では民間の航空機に対する武器の使用が原則、禁止されていて、撃墜する場合には気球が軍事用かどうかを見極める必要があります。
【防衛省関係者は】
防衛省関係者は「気球が無人であれば警告への反応もないので相手の意図は分からず、空中を漂っているだけでは、即座に危険があるか判断するのは難しい。撃墜できるのは、外国の軍が気球に核物質や細菌などの危険物を積んで飛ばし、日本上空で破裂させる意図があるなどの明確な情報があるようなケースに限られるのではないか」と話しています。

技術的な問題は?

防衛省関係者によりますと、気球が高度2万メートルほどの高い高度を飛行している場合は、戦闘機が同じ高さまで上昇するのは難しく、一定の高度差がある状態で照準を合わせる必要などが出てくるため、撃墜には高い技術が求められるということです。

防衛省は「無人機や気球といった多様な手段による領空侵入のおそれが増す中、国民の生命・財産と日本の主権を守るため、国際法と慣習を踏まえ、より一層厳正に対処していく」としています。