【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

イギリス国防省「ロシア軍前進も損害か」

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、東部ドンバス地域の全域の掌握を狙って攻撃を続けています。

戦況を分析しているイギリス国防省は10日、ドネツク州のウクライナ側の拠点のひとつバフムトの近郊で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の部隊がさらに2、3キロ前進したと指摘したうえで「ロシア軍がバフムトにつながる北側の道路を掌握しつつある」という見方を示しています。

また、州都ドネツクの南西に位置するウフレダルの西側でもロシア軍が部隊を前進させているとしながらも「周辺では経験の浅い部隊が投入されていて、大きな損害が出ている模様だ。襲撃に失敗し、少なくとも30台の装甲車をそのまま乗り捨てて逃走したとみられる」と分析しています。

プーチン大統領 2月21日年次教書演説 軍事侵攻後初

ロシア大統領府のペスコフ報道官は10日、プーチン大統領が2月21日に年次教書演説を行うと明らかにしました。

年次教書演説は、大統領が内政や外交の基本方針を示すもので、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた去年2月以降では、初めてとなります。

ウクライナ 一時全土に防空警報

ロシア軍はウクライナ東部以外にも各地でミサイルや無人機での攻撃を行っていて、10日、ウクライナでは午前8時半ごろから全土に一時、防空警報が発令されました。

このうち、東部にあるウクライナ第2の都市ハルキウのテレホフ市長はSNSに10日「午前10時ごろ、市内の重要インフラに攻撃があり、電力などが供給されない可能性がある」と投稿しました。

また、首都キーウのクリチコ市長はSNSに「ロシア軍のミサイルの残骸で車や住宅の屋根に被害が出た。まだ攻撃は続いている」と投稿し、市民に対して、引き続き安全な場所に避難するよう呼びかけています。

政府 ウクライナの公共放送局に中継装置を供与

政府は、ロシアによる去年の攻撃でテレビ塔が破壊されたことなどを踏まえ、ウクライナの公共放送局に対し、持ち運び式の中継装置を供与しました。

外務省によりますと、ウクライナの公共放送局は、去年3月、ロシアによる攻撃で首都キーウのテレビ塔が破壊されるなどしたため、現場から映像を送ることができる持ち運び式の中継装置で放送を続けていますが、機材が不足しているということです。

こうした状況を踏まえ、政府はJICA=国際協力機構を通じてウクライナの公共放送局が、キーウの本局と国内の支局で使用する持ち運び式の中継装置を無償で提供することを決め、9日、現地で松田ウクライナ大使らが引き渡しました。

林外務大臣は10日の記者会見で「今回の支援は正確で公平、公正な報道体制の構築とウクライナの民主主義強化に資するものだ。国難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を通じて、ウクライナの復旧・復興に貢献していく」と述べました。

ゼレンスキー大統領 EU首脳会議で兵器供与要請

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、EUの本部があるベルギーを訪れ、EUの首脳会議に出席しました。

このなかでゼレンスキー大統領は各国の首脳たちに対し戦闘機や長距離ミサイルなどを含む兵器の供与を求め「侵略者のさらなる動員より早く行わなければならない。ウクライナ軍はみなさんからの支援を得て、ロシアと戦っている」と述べ迅速な決断を求めました。

またウクライナが目指すEU加盟に向けても、交渉を早く始められるよう支持を訴えました。

ゼレンスキー大統領 兵器供与「肯定的なシグナルも」

EUの首脳会議に出席したあとの記者会見で、戦闘機の供与について具体的な進展があったか問われたゼレンスキー大統領は「個別の兵器については肯定的なシグナルがあった。このシグナルが具体的な声になることを強く望んでいる」と述べ、供与が受けられることへの期待感を示しました。

EU ミシェル大統領 軍事支援の強化必要との認識示す

EUの首脳会議のあとに開かれた記者会見でEUのミシェル大統領は「これからの何週間、何か月かが特に重要だ。最大限の支援を行わなければならない」と述べ軍事支援の強化が必要だという認識を示しました。

ウクライナのEU加盟「定まったスケジュールはない」

ウクライナが目指すEU加盟に向けて、ゼレンスキー大統領が年内に交渉を始めたいという意向を示したことについてEUのフォンデアライエン委員長は「加盟について定まったスケジュールはない。どれだけ早く進むかは加盟候補国の取り組みしだいだ」と述べ、従来の立場を繰り返すにとどめました。

ロシア側 ゼレンスキー大統領の欧州訪問を批判

ウクライナのゼレンスキー大統領がヨーロッパを訪問し、イギリスなどが軍事支援を続ける姿勢を示していることについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は9日「これはロシアとウクライナの紛争へのイギリス、ドイツ、フランスの関与の高まりととらえている。間接的な関与と直接的な関与の境界線が徐々に消えつつある。紛争をめぐる緊張の拡大につながっている」などと批判しました。

そのうえで「これによって、紛争の結果が根本的に変わるものではなく、ロシアが特別軍事作戦の目標を達成するということは変わらない」と述べ、ウクライナへの侵攻を続ける姿勢を強調しました。
また、アメリカのバイデン大統領が7日の一般教書演説でウクライナへの支援を継続していく姿勢を強調したことなどについて、「アメリカはロシアに対して敵対的な姿勢を示し続けていてわれわれは、ロシアとウクライナの紛争に関与する政治的な意思を確認している」と批判しました。

国連安保理 ウクライナ武器供与めぐりロシアと欧米各国が応酬

国連の安全保障理事会でウクライナ情勢をめぐる会合が開かれ、欧米によるウクライナへの戦車などの武器の供与について、ロシアが「ロシア人やウクライナ人の命を犠牲にして武器の実験をするものだ」と非難したのに対し、欧米などは軍事侵攻に対する正当な自衛権への支援だと反論しました。

安保理の会合は8日、欧米によるウクライナへの戦車などの供与に反発するロシアの要請で開かれました。

冒頭、国連の軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長は武器の流入が紛争を激化させる懸念を示すとともに、ロシアがウクライナへの攻撃を続けていることも改めて批判しました。

このあと、ロシアのネベンジャ国連大使は「欧米による武器の供与は軍需産業を潤すための口実だ。ロシア人やウクライナ人の命を犠牲にして武器の実験をするものだ」などと非難しました。

これに対し欧米各国が相次いで反論し、このうちイギリスのウッドワード国連大使は「ロシアは国連制裁に反してイランや北朝鮮から入手した武器も使っている。ウクライナが行使しているのは国連憲章が認める自衛権で、われわれは支援を続けていく」と述べました。

また、日本の石兼国連大使も「ロシアの行動は国際法の明白な違反で、侵略を阻止するための支援は、国際平和と安全の維持のために正当なものだ。ロシアはみずからの行いから関心をそらすために安保理を悪用すべきではない」とロシアを非難しました。