2012年に中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し9人が死亡した事故を受け、国土交通省は橋やトンネルについて5年に1度の点検を自治体などに義務づけていて、必要な対応の緊急度合いに応じ4段階で判定しています。
NHKは、国土交通省が公開した去年3月末時点の判定結果のデータを基に、4段階のうち最も老朽化が進んで「緊急に対応が必要」と判定されたもののうち、「未対応」とされている全国の343の橋について調査しました。
その結果、去年12月の時点で、全国41の都道府県の合わせて265の橋で、修理や撤去の対応が取られず、1年以上「通行止め」が続いていることがわかりました。

修理や撤去できず 1年以上“通行止め”橋 全国265か所 NHK調査
インフラの老朽化が進むなか、国が義務づけた点検で緊急の老朽化対策が必要とされた橋のうち、修理や撤去の対応が取られず、1年以上「通行止め」が続いている橋が、全国で265か所にのぼることがNHKの調査でわかりました。
専門家は「老朽化が集中して予算が確保できない状況が国全体で起きている。すべて維持するのは不可能で、インフラ全体で対応策の優先順位を考えていく必要がある」と指摘しています。
「数が多く手が回らない」「費用が不足」

さらに通行止めの期間が
▽5年以上の橋が131か所、
▽10年以上が33か所、
▽20年以上も7か所あり、
▽最も長いものでは1985年からの37年間にも及んでいて、
各地で通行止めが長期化している実態が浮き彫りになりました。
「通行止め」が続いている理由を自治体などに聞いたところ、
▼「橋の数が多く手が回らない」が96か所と最も多く、
次いで
▼「対応する費用が不足している」が80か所、
▼「地域住民との合意が形成できていない」が42か所でした。
通行止めの橋のなかには、腐食して一部が崩れたり、台風や大雨で流されたりするケースもありました。
インフラの老朽化問題について詳しい東洋大学大学院経済学研究科の根本祐二教授は「老朽化が集中して予算が確保できない状況が国全体で起きていて、今後さらに深刻化するおそれがある。すべて維持するのは不可能で、橋だけでなくインフラ全体で予算を含めた対応策の優先順位を考えていく必要がある」と指摘しています。
▽5年以上の橋が131か所、
▽10年以上が33か所、
▽20年以上も7か所あり、
▽最も長いものでは1985年からの37年間にも及んでいて、
各地で通行止めが長期化している実態が浮き彫りになりました。
「通行止め」が続いている理由を自治体などに聞いたところ、
▼「橋の数が多く手が回らない」が96か所と最も多く、
次いで
▼「対応する費用が不足している」が80か所、
▼「地域住民との合意が形成できていない」が42か所でした。
通行止めの橋のなかには、腐食して一部が崩れたり、台風や大雨で流されたりするケースもありました。
インフラの老朽化問題について詳しい東洋大学大学院経済学研究科の根本祐二教授は「老朽化が集中して予算が確保できない状況が国全体で起きていて、今後さらに深刻化するおそれがある。すべて維持するのは不可能で、橋だけでなくインフラ全体で予算を含めた対応策の優先順位を考えていく必要がある」と指摘しています。
通行止めの現場を訪ねると…
修理や撤去の対応が取られず、1年以上「通行止め」が続いている橋のうち、関西2府4県のものは21か所で
▼奈良県が18か所、
▼大阪府が2か所、
▼和歌山が1か所となっています。
このうち、奈良県十津川村の旧川津大橋は長さ178メートル、幅3.6メートルの木や鉄骨でつくられたつり橋で、5年以上、通行止めのままとなっています。
▼奈良県が18か所、
▼大阪府が2か所、
▼和歌山が1か所となっています。
このうち、奈良県十津川村の旧川津大橋は長さ178メートル、幅3.6メートルの木や鉄骨でつくられたつり橋で、5年以上、通行止めのままとなっています。

立ち入りを防ぐため、橋の入り口には通行止めを知らせる看板が設置されていて、橋桁などにはさびが目立ち、通路の板の部分の多くは朽ちていました。

また、奈良県五條市にある下田橋は2015年度の点検で橋脚のコンクリートなどにひび割れが複数見つかったため市はその後、橋を通行止めにしました。

橋の入り口には車止めブロックが置かれているだけで、通行止めを周知する看板やバリケードなどは設置されていません。
市によりますと、「通行止め」の状態は続けながらも、地元住民などの利用が多いことから、事実上、歩行者に限って通行を可能にしているということです。
市によりますと、「通行止め」の状態は続けながらも、地元住民などの利用が多いことから、事実上、歩行者に限って通行を可能にしているということです。
住宅街の橋も通行止め相次ぐ
通行止めの状態が続く橋は、住宅が建ち並ぶ地域にもあります。
静岡県熱海市の住宅街にある長さ8メートルほどの和田浜橋はおととし10月から通行止めになっています。
静岡県熱海市の住宅街にある長さ8メートルほどの和田浜橋はおととし10月から通行止めになっています。

市によりますと、通行止めにしたのは点検で橋桁などに腐食がみつかり、緊急に対応が必要だと判定されたためでした。
その後も通行止めのままになっているのは
▼修理を行うか架け替えを行うかの検討が続いていることと、
▼橋の管理を担当する職員が足りないことが理由だとしています。
地元の住民からは「う回は不便なので早く通れるようにしてほしい」といった声が寄せられているということです。
また、長野市の南部にある岡田川下橋は長さ21メートルほどで、住宅が建ち並ぶ地域にあります。
その後も通行止めのままになっているのは
▼修理を行うか架け替えを行うかの検討が続いていることと、
▼橋の管理を担当する職員が足りないことが理由だとしています。
地元の住民からは「う回は不便なので早く通れるようにしてほしい」といった声が寄せられているということです。
また、長野市の南部にある岡田川下橋は長さ21メートルほどで、住宅が建ち並ぶ地域にあります。

市によりますと、昨年度の点検では床が抜け落ちているのがみつかっていて、3年半以上前から通行止めの状態が続いているということです。
この橋について、隣接地区の住民から定期的に「早く修理してほしい」という要望が寄せられているということです。
市も修理を行いたいとしていますが、市内に1750ほどある橋の管理のほか、道路やトンネルもあり、担当職員の手が回っていないということです。
近くに住む84歳の女性は「川の向こう側に畑や田んぼ、果樹園があり、時期によっては毎日行くので通行止めは不便です。通行止めになってからも以前は、柵を乗り越えて通っていました。早く直してほしいです」と話していました。
住民によりますと、橋がかかる川は4年前の台風19号で水があふれたということです。
修理の要望を出している地区で区長を務める71歳の男性は「たまに通る人がいたので万が一、危険なことになったらいけないと思い、要望を出しています。修理してほしいですが、難しいのなら、撤去してほしいです。台風19号では、橋にいろいろなものが引っ掛かっていました。橋ごと流されたりしたら迷惑をかけると思います」と話していました。
この橋について、隣接地区の住民から定期的に「早く修理してほしい」という要望が寄せられているということです。
市も修理を行いたいとしていますが、市内に1750ほどある橋の管理のほか、道路やトンネルもあり、担当職員の手が回っていないということです。
近くに住む84歳の女性は「川の向こう側に畑や田んぼ、果樹園があり、時期によっては毎日行くので通行止めは不便です。通行止めになってからも以前は、柵を乗り越えて通っていました。早く直してほしいです」と話していました。
住民によりますと、橋がかかる川は4年前の台風19号で水があふれたということです。
修理の要望を出している地区で区長を務める71歳の男性は「たまに通る人がいたので万が一、危険なことになったらいけないと思い、要望を出しています。修理してほしいですが、難しいのなら、撤去してほしいです。台風19号では、橋にいろいろなものが引っ掛かっていました。橋ごと流されたりしたら迷惑をかけると思います」と話していました。

近くに住む80歳の男性は「う回路があり、交通量が少ない橋は撤去も含めて考えないといけないと思います。修理が難しく通行止めが長引くようであれば、どこかで決断しなければならない。放置が一番まずく、4年前に水害を経験した身としては、不要なものはないほうがいいと思います」と話していました。
周辺に住宅や畑がある愛知県弥富市の末広橋は長さ50メートルほどで、6年以上前から通行止めになっています。
周辺に住宅や畑がある愛知県弥富市の末広橋は長さ50メートルほどで、6年以上前から通行止めになっています。

市内に住む70代の男性は「昔は、川の対岸の店や駅に行くには通るしかない重要な生活道路でしたが、何年か前に新しい橋ができてからずっとこのままなので、撤去したほうがいいと思います」と話していました。
こうした通行止めのままの橋は都市部にもあり、東京・あきる野市の「網代橋」は住宅街のすぐ近くにあり、1年以上、通行止めが続いています。
このほか仙台市、前橋市、富山市、奈良市、松山市などにもあります。
こうした通行止めのままの橋は都市部にもあり、東京・あきる野市の「網代橋」は住宅街のすぐ近くにあり、1年以上、通行止めが続いています。
このほか仙台市、前橋市、富山市、奈良市、松山市などにもあります。
住民との合意や費用が課題に
自治体と住民の意見がまとまらず対応が決まらないまま通行止めが続いている橋があります。
茨城県高萩市にある「菖蒲橋」は、少なくとも50年以上前に建設された、長さ25メートル余りの木製の橋です。
橋の向こう側にある集落に住む人が市の中心部に出かける時や子どもたちの通学路として使われてきました。
これまでは修理をするなどして維持してきましたが、2016年7月に一部が腐食したことが原因で落橋して以降、およそ6年半の間、通行止めとなっています。
茨城県高萩市にある「菖蒲橋」は、少なくとも50年以上前に建設された、長さ25メートル余りの木製の橋です。
橋の向こう側にある集落に住む人が市の中心部に出かける時や子どもたちの通学路として使われてきました。
これまでは修理をするなどして維持してきましたが、2016年7月に一部が腐食したことが原因で落橋して以降、およそ6年半の間、通行止めとなっています。

さらに腐食は進み、いまでは3分の1が落橋しています。
近くに市道の橋ができたことや「菖蒲橋」の老朽化が進んだことから市は1つを撤去して2つの橋を1つに集約するための模索を始めました。
市は集約化に向けて地域の住民と話し合いを重ね、2019年にはおよそ25人の住民が参加する説明会を開き、架け替えなどにかかる費用の概算を提示しました。
それによりますと、
▽コンクリートの橋に架け替えをする場合はおよそ1億円、
▽橋台のみを修繕する場合はおよそ3000万円ほどで、その後も補修のランニングコストがかかるということです。
住民からは撤去ではなく架け替えを求める声があがり「人だけでも渡れるようにしてほしい」などといった意見が寄せられ、このときの説明会では結論は出ませんでした。
住民との話し合いはつかず、今も対応が決まっていませんが、市は大雨による2次災害を防ごうと橋の状況確認を続けています。
近くに市道の橋ができたことや「菖蒲橋」の老朽化が進んだことから市は1つを撤去して2つの橋を1つに集約するための模索を始めました。
市は集約化に向けて地域の住民と話し合いを重ね、2019年にはおよそ25人の住民が参加する説明会を開き、架け替えなどにかかる費用の概算を提示しました。
それによりますと、
▽コンクリートの橋に架け替えをする場合はおよそ1億円、
▽橋台のみを修繕する場合はおよそ3000万円ほどで、その後も補修のランニングコストがかかるということです。
住民からは撤去ではなく架け替えを求める声があがり「人だけでも渡れるようにしてほしい」などといった意見が寄せられ、このときの説明会では結論は出ませんでした。
住民との話し合いはつかず、今も対応が決まっていませんが、市は大雨による2次災害を防ごうと橋の状況確認を続けています。

高萩市産業建設部都市建設課の蛭野努課長は「将来的に橋を管理したり、修繕したりするには費用がかかってしまうので、管理する橋の数を減らすことも大事だと思います。ただ、住民から見れば、あったものがなくなることになるので、今後の対応については住民の理解を得ることが欠かせず、説明を尽くしていきたい」と話しています。
通行止めが続いていることについて住民からはさまざまな声が聞かれました。
2歳の息子がいる29歳の父親は、以前のように橋が通れるようになることを希望しています。
通行止めが続いていることについて住民からはさまざまな声が聞かれました。
2歳の息子がいる29歳の父親は、以前のように橋が通れるようになることを希望しています。

父親が子どものころは菖蒲橋を通学路として使っていましたが、通行止めのままだと、回り道をして交通量が多い道を通らなくてはなりません。
父親は「遠回りになると歩いて通えるか不安ですし、大きな道はトラックが通り、車のスピードも速いので正直、通らせたくないです。橋を直してもらえると安心できます」と話していました。
また、橋の前に住む73歳の男性は壊れた橋がそのままになっていることに不安を感じていて「大雨の際は、川の水位があがるので、橋をそのままにしておくのは危険だと思う」と話していました。
高萩市には住民との合意がとれて撤去が決まった橋もありました。
近くにある2つの橋のうち1つを撤去するのにあわせて今後、住民が使うことになる道路を拡幅して整備することを提示したことで住民の理解を得ることができたということです。
市は、過疎化が進み、財源が限られていく中で、インフラの整備のあり方を考える時期が来ていると感じています。
蛭野課長は「昔は作って、壊して、新しくするという時代もありましたが、いまは将来像を見据えながら、どう集約化していくのかを見極めるタイミングが非常に大事だと思います。限られた財源の中で使用頻度や必要性などから費用対効果を考えなければなりません」と話しています。
父親は「遠回りになると歩いて通えるか不安ですし、大きな道はトラックが通り、車のスピードも速いので正直、通らせたくないです。橋を直してもらえると安心できます」と話していました。
また、橋の前に住む73歳の男性は壊れた橋がそのままになっていることに不安を感じていて「大雨の際は、川の水位があがるので、橋をそのままにしておくのは危険だと思う」と話していました。
高萩市には住民との合意がとれて撤去が決まった橋もありました。
近くにある2つの橋のうち1つを撤去するのにあわせて今後、住民が使うことになる道路を拡幅して整備することを提示したことで住民の理解を得ることができたということです。
市は、過疎化が進み、財源が限られていく中で、インフラの整備のあり方を考える時期が来ていると感じています。
蛭野課長は「昔は作って、壊して、新しくするという時代もありましたが、いまは将来像を見据えながら、どう集約化していくのかを見極めるタイミングが非常に大事だと思います。限られた財源の中で使用頻度や必要性などから費用対効果を考えなければなりません」と話しています。
通行止めの間に台風や大雨で流出する橋も…
通行止めにしている橋が台風や大雨の被害に遭って流出するケースも出ています。
栃木県栃木市の永野川にかかる牛落橋は、橋脚が傾いたため4年以上、通行止めの状態が続いています。
この橋は、長さ40メートル、幅が2.4メートルのコンクリート製で、47年前の1976年に作られました。
通行止めになったおよそ1年後の2019年10月、台風の被害を受け、橋の半分以上が橋脚ごと流されました。
栃木県栃木市の永野川にかかる牛落橋は、橋脚が傾いたため4年以上、通行止めの状態が続いています。
この橋は、長さ40メートル、幅が2.4メートルのコンクリート製で、47年前の1976年に作られました。
通行止めになったおよそ1年後の2019年10月、台風の被害を受け、橋の半分以上が橋脚ごと流されました。

近くの高台の住宅に住む兼業農家の三浦弘さん(66)によりますと、当時、近くの堤防が決壊し、周辺の住宅では床上浸水の被害が出たということです。
台風のあと、上流にあった別の橋の残骸が牛落橋の周辺に散乱していたということで、三浦さんは「上流の橋が流されてきて牛落橋にひっかかったために水位が上がったようです。とても怖かったです。何かしら対応をしてもらえていたら被害が出なかったかもしれないと感じます」と話していました。
橋を管理する栃木市も、牛落橋が水位の上昇と関係した可能性があるとしています。
栃木市によりますと▼修理か架け替えかなどをめぐる地元住民との話し合いや▼国の補助金を使った予算の調達に時間がかかり、通行止めの期間が長くなっているということです。
来年度から架け替え工事を行い、幅を広げた橋を新設する予定だということです。
山形県遊佐町にある長さ125メートルの栄橋は、通行止めのさなかに一部が崩れました。
老朽化が進んだことを理由に2012年から通行止めが続いていましたが、去年6月、およそ7メートルにわたって崩れ橋桁の一部が水につかったままの状態になっています。
台風のあと、上流にあった別の橋の残骸が牛落橋の周辺に散乱していたということで、三浦さんは「上流の橋が流されてきて牛落橋にひっかかったために水位が上がったようです。とても怖かったです。何かしら対応をしてもらえていたら被害が出なかったかもしれないと感じます」と話していました。
橋を管理する栃木市も、牛落橋が水位の上昇と関係した可能性があるとしています。
栃木市によりますと▼修理か架け替えかなどをめぐる地元住民との話し合いや▼国の補助金を使った予算の調達に時間がかかり、通行止めの期間が長くなっているということです。
来年度から架け替え工事を行い、幅を広げた橋を新設する予定だということです。
山形県遊佐町にある長さ125メートルの栄橋は、通行止めのさなかに一部が崩れました。
老朽化が進んだことを理由に2012年から通行止めが続いていましたが、去年6月、およそ7メートルにわたって崩れ橋桁の一部が水につかったままの状態になっています。

遊佐町は危険な状態だとして、今後、数年かけて撤去することにしています。
新潟県関川村の山あいにある長さ25メートルの大里沢橋は10年ほど前から通行止めになっています。以前は、周辺で作業する農家の人たちが使っていましたが、利用する人がいなくなったことに加え、老朽化が進んだことが理由でした。
こうした中、去年、8月に起きた豪雨災害で橋脚ごと流されました。
関川村によりますと橋の流出による下流への影響は確認されていないということです。
新潟県関川村の山あいにある長さ25メートルの大里沢橋は10年ほど前から通行止めになっています。以前は、周辺で作業する農家の人たちが使っていましたが、利用する人がいなくなったことに加え、老朽化が進んだことが理由でした。
こうした中、去年、8月に起きた豪雨災害で橋脚ごと流されました。
関川村によりますと橋の流出による下流への影響は確認されていないということです。
修理や撤去ができない自治体に聞くと…
多くの自治体では「緊急に対応が必要」と判定された橋について予算や人手の不足が原因で修理や撤去ができないとしています。
奈良県宇陀市では市が管理するおよそ500の橋のうち4つの橋が「緊急に対応が必要」とされました。
4つの橋は住宅地から離れた山の中などにあり利用する人はほとんどいませんが、早急に対策をするよう求められています。
奈良県宇陀市では市が管理するおよそ500の橋のうち4つの橋が「緊急に対応が必要」とされました。
4つの橋は住宅地から離れた山の中などにあり利用する人はほとんどいませんが、早急に対策をするよう求められています。

市では、4つの橋についていずれ修理するか撤去しなければいけないとしていますが、限られた予算の中、当面は地域住民が日常的に利用する交通量が多い橋の修理が優先となり市ではいずれも平成30年から通行止めとするなど判断は先延ばしとなっています。
また、橋の維持・管理に携わる職員も不足しています。
市内各地の橋の点検などは複数の職員が日常的に行っていますが、▼5年に1度の点検と▼大規模な修理業務は担当の職員が1人で対応していて手が回っていない状態だということです。
宇陀市建設課の花本達哉主査は「費用もマンパワーもかぎりがあるのですべてを一気に修理するのは難しく市民生活に影響がないよう、交通量の多い橋から優先順位をつけていかざるをえない。限られた資源の中で市民の安心・安全に応えられるよう取り組んでいきたい」と話しています。
また、橋の維持・管理に携わる職員も不足しています。
市内各地の橋の点検などは複数の職員が日常的に行っていますが、▼5年に1度の点検と▼大規模な修理業務は担当の職員が1人で対応していて手が回っていない状態だということです。
宇陀市建設課の花本達哉主査は「費用もマンパワーもかぎりがあるのですべてを一気に修理するのは難しく市民生活に影響がないよう、交通量の多い橋から優先順位をつけていかざるをえない。限られた資源の中で市民の安心・安全に応えられるよう取り組んでいきたい」と話しています。
橋を手放す自治体も
「緊急に対応が必要」と判定されたものの、修理や撤去ができず、橋の維持・管理をやめようとする自治体も出始めています。
愛知県新城市の山あいにある市道巣山線の「5号橋」は、鉄筋コンクリートと石造りの橋で長さ3メートル、幅2.4メートルあります。
愛知県新城市の山あいにある市道巣山線の「5号橋」は、鉄筋コンクリートと石造りの橋で長さ3メートル、幅2.4メートルあります。

市によりますと、この橋がつくられた時期は不明で、もともと集落の間を結ぶためにかけられたとみられています。
2017年度の点検では、土台にひび割れなどが見つかり、市の試算で、3750万円の修理費用が見込まれていますが、利用はほとんどないことから通行止めの対応をとり、5年余りたった現在もバリケードが設置されたままとなっています。
こうした中、市は今後の維持・管理がより難しくなるとして、市道としては廃止し、道路法で定められている橋としないことで、5年に1度の点検対象から外すことを決めました。この橋は、市の所有地にそのままの形で残されることになります。
先月には地区の住民から合意を得て、3月の定例議会に廃止の議案を提出する準備を進めているということです。
新城市建設部の天野充泰部長は「限られた予算で多くの橋を管理しなければいけない。今後、架設から年数がたち対応が必要な橋がどんどんと増えてくるなかで、利用実態のない橋は手放すことも1つの選択肢だと考えている」と話していました。
このほか、山形県鮭川村の国有林にある「深沢1号橋」は村が手放すことを検討しています。
2017年度の点検では、土台にひび割れなどが見つかり、市の試算で、3750万円の修理費用が見込まれていますが、利用はほとんどないことから通行止めの対応をとり、5年余りたった現在もバリケードが設置されたままとなっています。
こうした中、市は今後の維持・管理がより難しくなるとして、市道としては廃止し、道路法で定められている橋としないことで、5年に1度の点検対象から外すことを決めました。この橋は、市の所有地にそのままの形で残されることになります。
先月には地区の住民から合意を得て、3月の定例議会に廃止の議案を提出する準備を進めているということです。
新城市建設部の天野充泰部長は「限られた予算で多くの橋を管理しなければいけない。今後、架設から年数がたち対応が必要な橋がどんどんと増えてくるなかで、利用実態のない橋は手放すことも1つの選択肢だと考えている」と話していました。
このほか、山形県鮭川村の国有林にある「深沢1号橋」は村が手放すことを検討しています。

長さ8.5メートル、幅4メートルのこの橋は、1964年に森林を保全するために国が建設しましたが、村道の一部として、村の管理になっているということです。
2018年の大雨で、付近の山から土砂が流れ込んだ影響で、路面を支える「床版」と呼ばれる部分がおよそ15センチずれ落ち、これまで通行止めの対応がとられています。
しかし、村の担当者は「山菜採りで通る人もいるようだ」と話しています。
村は、修理などの財源が不足しているということで、森林を所管する林野庁に管理を移したいとしています。
また、岡山県真庭市にある「宗末上橋」は2020年度の点検で「床版」に30センチほどの穴が見つかり、2年半近く通行止めとなっています。
2018年の大雨で、付近の山から土砂が流れ込んだ影響で、路面を支える「床版」と呼ばれる部分がおよそ15センチずれ落ち、これまで通行止めの対応がとられています。
しかし、村の担当者は「山菜採りで通る人もいるようだ」と話しています。
村は、修理などの財源が不足しているということで、森林を所管する林野庁に管理を移したいとしています。
また、岡山県真庭市にある「宗末上橋」は2020年度の点検で「床版」に30センチほどの穴が見つかり、2年半近く通行止めとなっています。

市によりますと、林業の作業で使いたいという要望もあるということで、地元の住民に譲渡することも選択肢の1つとして検討しているということです。
コスト削減を新手法導入で
予算と人手が限られる中、新たな手法を導入して、これまで通りの橋の維持・管理を続けようとしている自治体もあります。
奈良県北部にある田原本町は奈良盆地の中央部に位置し、町には県の北部と南部を結ぶ主要な幹線道路などが通っています。
交通量が多く市内各地にある橋の修理は重要な課題ですが、年々増えるコストの増加に頭を悩ませてきました。
こうした状況を改善し、将来にわたって橋を整備していくため町は3年前から工事を施工する業者に設計段階から関わってもらう「ECI方式」と呼ばれる方法を県内で初めて採用しました。
これまでの橋の修理工事では橋の構造などで不明点があればいったん作業を止めて設計業者や町に逐一、確認していましたが、これだと工期が長くなってしまいます。
一方、町が新たに採用した方式では設計業者が現場に立ち会うなどして、設計業者と施工業者が一体となって修理を行います。
こうすることで、効率的な工事の進め方ができるようになるほか、設計と施工で二重になっていた必要な資材が共有され、無駄なコストが省けるようになったということです。
さらに、町ではこれまで点検と設計業務を分けて年度ごとに発注し、事務が煩雑になっていましたが、2つをあわせて複数の年度にわたって1つの業者に一括発注する方式もあわせて採用しました。
町によりますとこれらの方式を導入したことで
▼修理にかかる期間がおよそ半分になったほか、
▼総事業費も5パーセントほど圧縮することができたということです。
田原本町まちづくり建設課の森戸和繁係長は「迅速に修理を進めることで町民の生活の利便性や安全性を保っていきたい」と話しています。
奈良県北部にある田原本町は奈良盆地の中央部に位置し、町には県の北部と南部を結ぶ主要な幹線道路などが通っています。
交通量が多く市内各地にある橋の修理は重要な課題ですが、年々増えるコストの増加に頭を悩ませてきました。
こうした状況を改善し、将来にわたって橋を整備していくため町は3年前から工事を施工する業者に設計段階から関わってもらう「ECI方式」と呼ばれる方法を県内で初めて採用しました。
これまでの橋の修理工事では橋の構造などで不明点があればいったん作業を止めて設計業者や町に逐一、確認していましたが、これだと工期が長くなってしまいます。
一方、町が新たに採用した方式では設計業者が現場に立ち会うなどして、設計業者と施工業者が一体となって修理を行います。
こうすることで、効率的な工事の進め方ができるようになるほか、設計と施工で二重になっていた必要な資材が共有され、無駄なコストが省けるようになったということです。
さらに、町ではこれまで点検と設計業務を分けて年度ごとに発注し、事務が煩雑になっていましたが、2つをあわせて複数の年度にわたって1つの業者に一括発注する方式もあわせて採用しました。
町によりますとこれらの方式を導入したことで
▼修理にかかる期間がおよそ半分になったほか、
▼総事業費も5パーセントほど圧縮することができたということです。
田原本町まちづくり建設課の森戸和繁係長は「迅速に修理を進めることで町民の生活の利便性や安全性を保っていきたい」と話しています。
専門家「インフラすべて維持するのは不可能」
インフラの老朽化問題について詳しい東洋大学大学院経済学研究科の根本祐二教授は、通行止めのままとなっている橋が全国で相次いでいることについて「現在、インフラの老朽化が集中的に起きていることで予算が確保できず、補修も撤去もできない状況が国全体で起きている。予算を工面できない以上は通行止めにせざるをえないのではないか」と指摘しています。

今後については「橋は1970年代に年間1万本架けられていて、コンクリートの耐用年数が60年だとすると、2030年には1万本を架け替えなければならない。インフラの老朽化は、始まったばかりで、今後さらに深刻になると考えられ、すべて維持するのは不可能だ」と話しています。
そのうえで、どう対応するかについて「日本は人口減少期にインフラの老朽化が集中的に起きているので予算の確保は簡単ではなく、いまあるインフラをたたむという発想が必要になる。その際には橋だけではなく、道路などほかのインフラの予算もあわせて考え、優先順位をつけて対応する必要がある」としています。
そして、利用者の意識も変える必要があるとして「自分の利便性ではなく、地域全体を持続可能にしていくために何ができるのかという観点で考えることが大事だ」と話していました。
そのうえで、どう対応するかについて「日本は人口減少期にインフラの老朽化が集中的に起きているので予算の確保は簡単ではなく、いまあるインフラをたたむという発想が必要になる。その際には橋だけではなく、道路などほかのインフラの予算もあわせて考え、優先順位をつけて対応する必要がある」としています。
そして、利用者の意識も変える必要があるとして「自分の利便性ではなく、地域全体を持続可能にしていくために何ができるのかという観点で考えることが大事だ」と話していました。
(関西調査報道チーム)
神戸放送局 小田和正/奈良放送局 八城千歳/和歌山放送局 伊藤敬一郎/大阪放送局 福島浩晃 大野敬太 鈴椋子 藤島新也
神戸放送局 小田和正/奈良放送局 八城千歳/和歌山放送局 伊藤敬一郎/大阪放送局 福島浩晃 大野敬太 鈴椋子 藤島新也