アメリカ国防総省「中国が気球使い世界各地で大規模偵察活動」

アメリカ国防総省の報道官は、中国がアメリカや世界各地の上空で気球を飛行させ、大規模な偵察活動を行っているという認識を示しました。アメリカ政府は中国の気球について各国と情報共有を進めています。

アメリカ国防総省は、アメリカ本土を横断した中国の気球を今月4日、軍が撃墜したことに関連して、トランプ前政権以降、これまでに少なくとも4回、アメリカの領空で気球が確認されていたと説明しています。

国防総省のライダー報道官は8日の会見で過去4回の気球の飛行について「中国が関心を持つような場所の上空を飛行していた」と述べた上で、アメリカ以外に東アジアや東南アジア、中南米、それにヨーロッパなどでも確認されていると指摘しました。

そして「偵察用の気球を使った中国の大規模な計画だ」と述べ、中国が数年前から大規模な偵察活動を行っているという認識を示しました。

ブリンケン国務長官「中国が責任もって行動を」

またブリンケン国務長官も8日の会見で中国の気球に言及し「すでに世界の数十か国と情報を共有している」とした上で、「われわれは、中国が責任をもって行動するよう求める」と述べ、中国政府に国際法を順守し、主権の侵害をやめるよう求めました。

この会見には、NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長も同席し「中国の諜報活動の危険性を認識し、自衛のための措置を強化する必要がある」と警戒感を示しました。

トランプ前大統領「世界に弱さをさらけ出した」

一方、野党・共和党は、中国の気球への対応をめぐり、バイデン政権への批判を強めています。

トランプ前大統領は7日、声明を出し「バイデンは、撃墜するまでの間に、偵察用の気球がアメリカの情報を好きなだけ集めるという事態を許し、世界に弱さをさらけ出した」と批判しました。

また、議会下院の外交委員長を務める共和党のマコール議員はアメリカメディアの取材に対し「中国は、非常に挑発的な物体をアメリカに送り込み、われわれを試した。弱さを露呈させようとし、一定程度、それを成し遂げた。私はなぜ、アラスカ沖のアメリカ領空に入る前に気球を撃ち落とさなかったのかわからない」と述べ、バイデン政権の対応に疑問を投げかけました。

そして「中国軍は習近平国家主席の意向に沿わないことはしない。今回の出来事は、おそらく習主席の決断の結果、起きたと見ている」と述べました。

議会上院の外交委員会では9日、シャーマン国務副長官などを呼んで、公聴会が開かれる予定で、共和党側は、バイデン政権の責任を追及する構えです。

中国「米が客観的な事実に基づいてほかの国に状況説明を」

アメリカ政府が中国の気球をめぐって、各国と情報共有を進めていることについて、中国外務省の毛寧報道官は8日の記者会見で「アメリカが客観的な事実に基づいてほかの国に状況を説明するよう望む」と述べ、アメリカをけん制しました。

松野官房長官「情報収集と分析に全力を挙げる」

松野官房長官は午前の記者会見で「令和2年6月や令和3年9月などに、わが国上空において目撃された飛行物体は、今般のアメリカでの事案との関連も含め、分析を進めている」と述べました。

そのうえで「情報収集と警戒監視活動の中で所属不明の類似の気球を確認した事例があり、例えば去年1月に九州西方の公海の上空で確認した。引き続き、同盟国とも連携しつつ、大きな関心を持って、気球の情報収集と分析に全力を挙げていく」と述べました。