【詳報】トルコ大地震 死者1万7000人 72時間以降に救出も

トルコ南部のシリア国境近くで起きた地震ではトルコとシリアの両国でこれまでにあわせて1万7000人以上が死亡しました。倒壊した建物の下にはいまだ多くの人が取り残されていて、現地では懸命な救助活動が続いています。

現地の状況や、各国の救援の動きなど最新情報をまとめています。
(※日本とトルコとの時差は6時間 原則日本時間で表記します)

トルコ南部で6日に発生したマグニチュード7.8の地震や、その後も続く大きな揺れにより、トルコとシリアではこれまでにトルコ国内で1万4014人、シリア側では少なくとも3162人が死亡していて、亡くなった人の数は両国あわせて1万7000人を超えています。

現地では、生存率が急激に下がると言われる発生から72時間が経過していますが、懸命な救助活動が続いています。

揺れの範囲と建物が倒壊した都市は

トルコ南部で6日未明に発生したマグニチュード7.8の地震について、アメリカのUSGS=地質調査所によりますと、トルコ南部とシリア北部にまたがる広い地域で、強い揺れが発生しました。

このうち、震源地に近いカフラマンマラシュ周辺では、ぜい弱な構造の建物に甚大な被害が出るレベルの揺れが起きたとされます。

また、ぜい弱な構造の建物に大きな被害が出たり、多くの人が恐怖を感じたりするレベルの揺れは広範囲にわたり、トルコ側ではガジアンテプやオスマニエ、アダナ、ディヤルバクルなどが含まれます。

シリア側では北部のアレッポや北西部のイドリブ周辺などの地域が含まれます。

これらの都市では実際に多くの建物の倒壊が確認されています。

天皇陛下がエルドアン大統領にお見舞いの電報

天皇陛下は、トルコ南部のシリア国境近くで起きた地震を受けて、9日、トルコのエルドアン大統領にお見舞いの電報を送られました。

宮内庁によりますと電報には、地震の被害について天皇皇后両陛下のお見舞いの気持ちが記されているということです。

両陛下は4年前の令和元年、エルドアン大統領夫妻が日本を訪れた際、皇居・宮殿で会見されています。

南部ガジアンテプ 取り残された人探すため静寂の中の作業も

トルコ南部ガジアンテプの複数の建物が倒壊した現場では、がれきの中に取り残された人が発する音を確認するため、時折、音を立てないよう指示が出され、静寂に包まれる中、親族などの安否を気遣って集まった人たちが、捜索の様子を見守っていました。

倒壊した建物におばなど親族6人が取り残されているという、19歳の大学生の女性は「近くの倒壊した建物からは生存者が救出されましたが、とにかく救助にあたる人手が足りません。よいニュースを期待したいですが、夜間は気温がマイナスになります。救助を急いでほしい」と話していました。

72時間経過以降も3人救出 救出活動続く

ガジアンテプでは現地時間の9日朝、マンションの倒壊した現場で家族3人が救出され病院に運ばれました。

現場は市内中心部からおよそ6キロ離れたマンションが建ち並ぶ地区で、このうち4棟が倒壊しています。3人が救出されたマンションだけでも多数の住民ががれきの下にいるという情報もあり、救助隊がクレーンで崩れたがれきを撤去しながら生存者を探しています。

3人が救出された様子を目撃していた56歳の男性によりますと、3人がいた台所は押しつぶされずに空間が確保されていて、石で壁をたたいて救助隊に助けを求めたということです。ただ、この家族の母親はまだがれきの下に取り残されているとして、この男性は「状況は厳しいが希望を捨ててはいけない。各地でがれきの下で取り残されている人も同様に助かってほしい」と話していました。

災害医療の専門家「過去には72時間を超えて助かったケースも」

海外の大地震の際、国際緊急援助隊の一員として被災地での医療に携わってきた高知市の近森病院の井原則之医師は、災害の生存率が急激に下がるとされる発生から72時間が経過したことについて「過去には72時間を超えて助かったケースもある。救助活動をする人にとって72時間だから厳しいとかそういうことはない」と述べ、引き続き救助活動などの支援が必要だとしています。

がれきから赤ちゃん救出 地震から65時間超

シリア国境沿いのトルコ南部のハタイ県では、地震から65時間以上がたって、倒壊した建物のがれきの中から赤ちゃんが救出されました。

トルコメディアなどによりますと救出された際、赤ちゃんの健康状態に大きな問題はなかったということです。

また、ロイター通信は、8日夜には南部の町アドゥヤマンでがれきの中から家族4人が救出されたと伝えています。

「食料支援も必要」 現地にスタッフ派遣のNGO

トルコ南部のシリア国境近くで6日起きた地震で、震源に近い南部の都市、ガジアンテプにスタッフを派遣しているNGOは「現地では建物に被害が出て多くの人が避難しているが飲食店が閉まっているほか、避難先でも調理が難しい状況で、食料面でも支援が必要だ」と話しています。

取材に応じたのはアジアを中心に国際協力を行っている東京に本部があるNGO「パルシック」で、トルコ南部で6日に起きた地震のあと、日本人のスタッフを震源に近い南部の都市、ガジアンテプに派遣し被災状況の調査などを行っています。

このスタッフがガジアンテプで撮影した写真や動画では、ビルのような建物の壁の一部がはがれているほか、大きなひびが入っているのが確認できます。また、町なかにある多くの店のシャッターが閉じている様子も確認できます。

このNGOの担当者によりますと現地のスタッフからの情報で、建物は倒壊のおそれがあるため、多くの人がモスクや学校などに避難していますが、飲食店が閉まり避難先でも調理が難しい状況だということです。

このため炊き出しが行われていますが、食料面でも支援が必要で、現地ではスタッフがほかの団体と協力し食料の配布などを行うことにしているということです。

NGO担当者「難民も多い地域で復興は遠い 息の長い支援が必要」

「パルシック」の担当者の小栗清香さんは「今回の地震の被害は甚大で難民も多い地域なので、一時的にしのげても復興は遠い。息の長い支援が必要だ」と話していました。

「パルシック」では、ホームページで寄付を募っていて、集められた寄付金は、食料や生活用品の購入などにあてられるということです。

世界遺産の遺跡にも複数の被害か ユネスコ

ユネスコ=国連教育科学文化機関によりますと、今回の地震で世界遺産に登録されているトルコとシリアの一部の遺跡にも被害が出ているということです。

このうち、シリア北部の「古代都市アレッポ」では、要塞に甚大な被害が出たほか、旧市街の塔が崩れたことが報告されています。

また、トルコ南東部の「ディヤルバクル城塞とエブセル庭園」にある複数の歴史的な建造物が崩壊するなどの被害が確認されたということです。

ユネスコは現地に専門家を派遣して被害の状況を詳しく調べることにしています。

シリア被災者 人口の半数 1000万人超か 国連担当高官

国連でシリアを担当する高官らが8日、オンラインで会見を開き、シリアに駐在するベンラムリ調整官は、今回の地震でシリア国内で被災した人の数は「1090万人にのぼる」と述べました。

シリアの人口はおよそ2000万とされ、人口の半数が被災したことになります。

このうち震源に近いシリア北西部には、アサド政権の攻撃から逃れた人たちが暮らすキャンプなどがあり、こうした地域に支援を届ける方法は限られていると、危機感を示しました。

またシリアの人道問題を担当するハディ地域人道調整官は「最も重要なのは、困難な状況の中で、支援を必要としている人たちに届けることだ」と述べ、早ければ9日にもトルコ経由で食料や医薬品といった物資の搬入を再開したい考えを示しました。

そしてアサド政権の協力を得て被災者を支援することについて実現に向け意欲を示す一方で、「さまざまな関係者の間で複数の調整が必要だ。シリア政府軍が展開する地域での支援活動は容易ではない」と厳しい見通しを示しました。

ニューヨークのトルコ領事館に支援物資寄せられる

アメリカ・ニューヨークのトルコ総領事館には、缶詰の食料や衣服、それに子ども用のおむつや生理用品など、市民からさまざまな支援物資が寄せられています。

こうした物資は総領事館とトルコの国連代表部の呼びかけで集まったもので、職員やボランティアが仕分けをしながら箱に詰める作業を行っていて、このあとトルコ航空の協力を得て現地に運ばれるということです。

仕分け作業を行っていたトルコ出身の男性は「支援物資を届けたいと思って来たのですが、明らかに人手が足りなかったのでボランティアとして仕分け作業を手伝いました。1人でも多くの人が救出されることを祈っています」と話していました。

シリア 40時間以上閉じ込めの子ども救出映像 SNSに

トルコの隣国シリアでも懸命の救助活動が続いています。

シリア北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は、北西部イドリブ郊外で7日、救助隊員ががれきの中から子どもを救出する様子をうつした映像をSNSに投稿しました。

子どもは40時間以上がれきの下に閉じ込められていたということで、助け出された瞬間、現場の救助隊員などから大きな歓声があがっていました。

震源に近いトルコ南部のアパート倒壊現場では

震源に近いトルコ南部カフラマンマラシュに入った日本の緊急援助隊が捜索を行っている、アパートの倒壊現場では、8日、多くの市民が活動の様子を見守っていました。

アパートの3階に、姉とその家族のあわせて4人が取り残されていると話すトルコ人の男性は「地震の直後に、倒壊したアパートの中から姉が何かをたたいて音を出したり、私の名前を呼んだりしているのを聞いた。近所の人たちと救出を試みたが、うまく行かなかった。とにかく生きて助け出されるのを願うばかりだ」と話していました。

「水も電気もない。あらゆるものを必要としている」

甚大な被害を受けたトルコ南部カフラマンマラシュの市街地でも、救助活動を見守る人たちの姿がありました。

このうち4階建ての集合住宅が倒壊した現場の近くでは、気温1度の寒空のもと、市民がたき火で暖をとりながら、険しい表情で救助活動を見つめていました。この集合住宅は4階部分の外壁が崩れ落ちてキッチンや居間がむき出しになり、下の階は完全に押しつぶされています。
この部屋で家族と13年間暮らしたウール・エルマさん(30)は、親類や近所の知り合いが今もがれきの中に取り残されているとした上で「彼らがなんとか助かってほしいという思いでここにいます」と話していました。

エルマさんは今の暮らしについて「水も電気もない。いま、人々はあらゆるものを必要としている」と述べ、インフラの早期の復旧を求めていました。

WHO 被災地での食料や清潔な水などの不足に危機感

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は8日の会見で、トルコ南部で発生した地震について「天候や余震の影響で、人命救助は時間との闘いになっている」と述べ、被災地で食料や清潔な水、それに医薬品なども不足していることに危機感を示しました。

また、会見にオンラインで参加したWHOのシリア事務所の代表は、地震の影響で被災地に近づくことが困難になっているとした上で「医療システムはこの12年間ですでに被害を受けていたうえ、さらに地震でひっ迫している」と述べ、内戦でぜい弱となっている現地の医療システムに懸念を示しました。