【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

国連安保理で武器供与めぐり応酬

国連の安全保障理事会でウクライナ情勢をめぐる会合が開かれ、欧米によるウクライナへの戦車などの武器の供与について、ロシアのネベンジャ国連大使は「欧米による武器の供与は軍需産業を潤すための口実だ。ロシア人やウクライナ人の命を犠牲にして武器の実験をするものだ」と非難。これに対し欧米などは軍事侵攻に対する正当な自衛権への支援だと反論しました。

イギリスのウッドワード国連大使は「ロシアは国連制裁に反してイランや北朝鮮から入手した武器も使っている。ウクライナが行使しているのは国連憲章が認める自衛権で、われわれは支援を続けていく」と述べました。

ロシア大統領府 イギリスなどの関与批判

ゼレンスキー大統領がヨーロッパを訪問し、イギリスなどが軍事支援を続ける姿勢を示していることについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は9日「これはロシアとウクライナの紛争へのイギリス、ドイツ、フランスの関与の高まりととらえている。間接的な関与と直接的な関与の境界線が徐々に消えつつある。紛争をめぐる緊張の拡大につながっている」などと批判しました。

そのうえで「これによって、紛争の結果が根本的に変わるものではなく、ロシアが特別軍事作戦の目標を達成するということは変わらない」と述べ、ウクライナへの侵攻を続ける姿勢を強調しました。

ゼレンスキー大統領 EU議会で演説

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、ベルギーの首都ブリュッセルにあるEU=ヨーロッパ連合の議会で演説。「われわれはもっとも反ヨーロッパ的な勢力と戦っている。われわれは戦場であなた方とともにある」と述べ、EU各国からのこれまでの支援に謝意を示しました。

そしてウクライナはEU加盟に向けた改革を戦争のさなかにも進めていると強調したうえで「われわれはEUに近づきつつある。ウクライナはEUに加盟する。われわれがともにいるかぎり、ヨーロッパはヨーロッパのままであり続けられるだろう」と述べ、加盟に向けて支持を訴えました。

ロシア軍 ウクライナ東部で戦闘激化 ルハンシク州で攻撃開始か

ウクライナに侵攻するロシア軍は完全掌握を狙うウクライナ東部で戦闘を激化し、このうちルハンシク州では新たな攻撃を開始したという分析も出ています。

ウクライナ側は、24日で侵攻から1年となるのを前に、ロシア軍が大規模な攻撃に踏み切ると警戒し徹底抗戦する構えを強調しています。

ウクライナに侵攻するロシア軍は、東部のドンバス地域の完全掌握を狙っていて、このうちドネツク州ではウクライナ側の拠点バフムトを包囲しようと激しい攻撃を続けています。

また東部ルハンシク州についてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は8日「ロシア軍はウクライナで主導権を取り戻しルハンシク州では次の大規模攻撃を開始した」と指摘し、特に州西部のスバトベからクレミンナの前線でロシア軍は、戦車や空てい部隊などの3つの師団を投入し攻撃のペースが増していると分析しています。

これに対して、ウクライナ軍はこれまではロシア軍の大幅な前進を食い止めているとしていますが、「ロシアの攻撃はまだ最大限に達していないようだ」と指摘しています。

ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は7日、ロイター通信のインタビューに対し侵攻から1年となる2月24日を前に、ロシア軍が大規模な攻撃に踏み切るという見方を示しました。

その上で、ドンバス地域に加え、東部ハルキウ州や南部ザポリージャ州も新たな攻撃の標的となる可能性があると、警戒感を示し徹底抗戦する構えを強調しました。

ゼレンスキー大統領 フランス・ドイツに支援求める

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、イギリスに続いてフランスのパリを訪れ、大統領府でマクロン大統領とドイツのショルツ首相と共に記者発表に臨みました。
この中で、まずマクロン大統領が「ロシアが勝つことがあってはならない。ロシアが攻撃を続けるかぎり、われわれがウクライナとその将来のために軍事支援を続けることが必要だ」と述べました。
これに対し、ゼレンスキー大統領は「私はきょうのことではなく、数週間、数か月先の平和のために必要な兵器について話している。フランスとドイツはこの先の戦況を変える潜在力を持つ存在だ」と述べ、両国にさらなる軍事支援を求めました。
また、ショルツ首相は先月、ドイツ製の戦車の供与を決めたことに触れたうえで「われわれはウクライナへ大規模な支援を行ってきた。今後も必要なかぎり続けていく」と述べ、支援を継続する考えを強調しました。

ウクライナでは、今月24日の侵攻から1年の節目を前に、ロシア軍が大規模な攻撃に踏み切るという見方が広がる一方、ゼレンスキー政権は徹底抗戦する姿勢を崩していません。

ゼレンスキー大統領 予告なしに訪英 戦闘機供与求める

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、事前の予告なしにイギリスを訪問しました。

1年前にロシアが軍事侵攻を始めて以来、外国を訪れるのは去年12月のアメリカとポーランド訪問に続いて3か国目です。

ゼレンスキー大統領はロンドンの首相官邸でスナク首相と会談したあと、議会内で演説し「すべてのウクライナ人は、勇気を持てば想像を絶する困難を乗り越え、最終的に勝利で報われるということを知っている」と強調しました。

そして、下院議長にウクライナ空軍のヘルメットを贈り「自由を守るための翼、戦闘機が必要だ」と訴え、ロシアに対抗するための追加の軍事支援として戦闘機の供与を求めました。

ゼレンスキー大統領 演説内容は?

イギリス議会内のウェストミンスターホールで、国会議員などを前に演説したゼレンスキー大統領は「私は、今も塹壕で敵の砲火にさらされている兵士や、ウクライナの空を敵の航空機やミサイルから守っている砲手たちの代わりにここに立っている。すべてのウクライナ人は、勇気を持てば想像を絶する困難を乗り越え、最終的に勝利で報われることを知っている」とした上で「ここにいる皆さんの勇気に感謝したい。イギリスは、世界がまだどう対応すればいいのか分からなかった侵攻当初から、支援の手を差し伸べてくれた」と述べました。
そして「私たちは自由が勝利し、ロシアが敗北することを知っている。そして勝利によって、世界が長く待ち望んだ変革が訪れることを知っている。クレムリンのように、力で国境を動かし、ほかの国の人々に破壊と死をもたらし、独裁を維持しようとする侵略者は、必ず敗北する。私たちはすでに驚くべき成果をあげたが、これを将来にわたって世界的な安全の礎としなければならない」と述べました。

また「私たちは紛れもないテロ国家に厳しい制裁を科し、G7の国々とともに、法に基づく秩序と人権を守るための、価値観の同盟を作り上げた。それが機能するためには、正義が必要だ。テロ行為に関わるものは罰せられなければならない。しかし、悪はまだはびこり、戦いは続いている。私たちは日々、英雄たちの命を犠牲にし、勝利をたぐり寄せるために痛みを感じ、涙を流し続けている」とした上で「イギリスのチャールズ国王は空軍のパイロットだったが、ウクライナでは今、すべてのパイロットが王様だ。彼らは人数が少なく、とても大切な存在だ。世界が彼らに最新の戦闘機を提供してくれるよう、私はできるかぎりのことをする」と強調しました。
その上で、イギリスの下院議長に、ウクライナ空軍のエースパイロットのものだというヘルメットを手渡し「このヘルメットが私たちの次なる『戦闘機の同盟』の象徴となることを信じている。皆さん、そして世界に呼びかける。ウクライナに自由を守るための翼、戦闘機を下さい」と訴えました。

ゼレンスキー大統領 イギリス南西部の訓練場を訪問

ゼレンスキー大統領はスナク首相とともにイギリス南西部の訓練場を訪れ、イギリスが供与を表明した戦車「チャレンジャー2」の訓練を受けているウクライナ兵たちを激励しました。
両首脳は現地で共同会見に臨み、この中でスナク首相は、イギリス軍などによる訓練の対象を、ウクライナの空軍と海兵隊にも拡大し、NATO=北大西洋条約機構の戦闘機を操縦できるようにするとしたほか、より射程の長いミサイルを供与すると明らかにしました。
そして「チャレンジャー2」については数週間以内に実戦での運用が始まるという見通しを示しました。

一方、戦闘機の供与については「あらゆることを検討している」と述べるにとどまりました。

ゼレンスキー大統領はこのあと、フランスでマクロン大統領とドイツのショルツ首相とも会談する予定です。

ロシアが2月中旬以降、新たな大規模攻撃を行うという見方が広がる中、ゼレンスキー大統領は一連の訪問を通じて各国との連携を確認するとともにいっそうの軍事支援を呼びかけるものと見られます。

ドイツ国防相 “ウクライナへ供与の戦車31両 3~4月に届く”

ウクライナに供与されるドイツ製の戦車「レオパルト2」を巡りドイツのピストリウス国防相は8日、訪問先のポーランドのワルシャワで会見し「ことしの最初の4か月、もしかしたら3か月で少なくともひとつの戦車大隊を届けられると思う」と述べ、3月から4月の間に、1個大隊に相当する31両の戦車が届くとの見通しを示しました。

ドイツは1月、自国が保有する「レオパルト2」14両を供与し、同じ戦車を保有するヨーロッパのほかの国にも呼びかけて、2個大隊の供与を目指すと発表しています。

ドイツ政府は大隊の規模を明らかにしてきませんでしたが、ドイツ国防省は8日、1個大隊が31両で構成され、あわせて62両の供与が目標だと説明しました。

ウクライナ国防省「ロシア側はバフムトなどへの攻撃に主力」

ウクライナ東部ドネツク州のウクライナ側の拠点のひとつ、バフムトをめぐり、ウクライナ国防省は8日、SNSに「ロシア側は、ドネツク州とルハンシク州の完全掌握を狙い、バフムトなどへの攻撃に主力を置いている」と投稿し、戦闘が激しくなっていると明らかにしました。

また、ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は7日、ロイター通信のインタビューに対し「ロシア側は、侵攻に踏み切った2月24日に国民に何かを示す必要があり、この日までに大きなことを成し遂げたいという願望がある」と述べ、侵攻から1年の節目を前に、ロシア軍が大規模な攻撃に踏み切ると分析した上で、徹底抗戦する考えを強調しました。

ロシア外相 アフリカ歴訪 途上国との連携強化で欧米対抗か

ロシアのラブロフ外相は、アフリカ諸国を歴訪していて、7日に訪問した西アフリカのマリに続き、8日はモーリタニアで大統領や外相と会談しました。

そして会談後の記者会見で「われわれの友人は、ロシアからの燃料や食料、それに肥料の供給に関心を持っている。モーリタニアや他のアフリカ諸国の要求に応える用意がある」と強調しました。

ラブロフ外相は1月も南アフリカなどアフリカの4か国を訪問したばかりで、ロシアとしては「グローバルサウス」と呼ばれる新興国や途上国との連携を強化し、ウクライナへの軍事支援を強める欧米側に対抗する狙いとみられます。

イギリス政府 ロシアの軍需企業などに追加の制裁

イギリス政府は8日、ウクライナのゼレンスキー大統領のイギリス訪問に合わせて、ロシアの軍需企業などに対し資産凍結や渡航禁止といった追加の制裁を科しました。

追加制裁が科されたのは、ロシアで無人機を製造するメーカーやヘリコプターの部品メーカーなど7団体と、プーチン政権への資金提供に関与したとされる企業の代表ら8人です。

ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降、イギリス政府は1300以上の個人と団体に制裁を科したとしていて「ウクライナの領土主権に対するロシアの脅威が完全に終わるまで、凍結した資産にアクセスできないようにする」と強調しています。