コロナ5類でワクチン接種これからどうなる? Q&Aで詳しく

「すべての世代に対してことしの秋から冬に次の接種を行うべき」

新型コロナワクチンの今後の接種のあり方を議論する厚生労働省の専門家部会が、8日にとりまとめた基本方針です。

一方で、このところの接種率は若い世代を中心に伸び悩んでいます。

「5類」見直しの方針も決まる中で、今後のワクチン接種はどうなる?

費用負担、接種の効果について最新情報は?

Q&A方式でまとめました。

Q1. 8日の専門家部会、どんな方針がまとまった?

新型コロナのワクチン接種は現在、まん延を予防するために緊急の必要があるとして「特例臨時接種」との位置づけで無料での接種が行われていますが、その期限はことし3月末までとなっています。

8日に開かれた厚生労働省の専門家による部会がとりまとめたのは、新年度になることし4月以降の接種のあり方についての基本方針です。
この中では重症者を減らすことを目的に、第1の対象を「高齢者など重症化リスクが高い人」としています。

そのうえで「それ以外の全ての世代に対して接種の機会を確保することが望ましい」としています。

また接種の時期については、これまで年末年始に比較的多くの死者を伴う感染拡大があったことなどから、「秋から冬に次の接種を行うべき」だとしています。

さらに、今後の感染拡大や変異株の状況などを踏まえ、重症化リスクの高い人のほか、重症化リスクの高い人に頻繁に接する人には追加して接種を行う必要性にも留意するとしています。

一方、使用するワクチンについては検討を進めた上で早期に結論を出すべきだとしています。

新型コロナのワクチン接種を巡っては、政府はことし4月以降も必要な接種であれば自己負担無く受けられるようにする方針を示していて、厚生労働省は今後、いまの「特例臨時接種」を継続するかについて、ことし3月にも方針を示すことにしています。

Q2. ワクチン接種、今どの程度行われているの?

厚生労働省は、当初、希望する人が去年の年末までに接種を終えられるよう目指していました。

そのために十分な量のワクチンの配送や職域接種など体制の整備を進め、8日公表時点での接種率は42.3%となっています。

接種回数をみると、去年の夏に従来型のワクチンで4回目を接種した高齢者の5回目の接種が本格化した去年11月、12月の金曜日や土曜日には、国が目標としている1日100万回を超える日がありました。

一方で2月5日までの1週間の平均は、1日8万回ほどとなっています。

これに伴い、接種率(オミクロン株対応ワクチン)の増加ペースも鈍化しています。

こちらは、去年11月下旬以降の1週間ごとの接種率と、毎週の増加分の値をまとめたものです。
去年12月には平均で毎週4ポイントほど増加していましたが、1月以降の伸び率は半分以下の1%台前後にとどまっています。

一方、6日公表時点の年代別の接種率は以下の通りです。
70代から90代は70%を超えている一方で、若い世代の接種率が伸び悩んでいます。

これについて厚生労働省は「高齢者が接種するピークは12月だと想定していたので、接種率の増加も落ち着いてきていると考えている。希望する方でまだ打っていない人は積極的に接種してほしい」とコメントしています。

厚生労働省は引き続き接種を希望する人が打てるように自治体に体制整備を求めるほか、テレビやインターネットの広告で接種を呼びかけることにしています。

Q3. ワクチンの効果、最新情報は?

新型コロナウイルスのワクチンは、感染や発症を防ぐ効果については免疫から逃れやすい変異ウイルスが広がった結果、長く続かなくなってきている一方、オミクロン株対応ワクチンでは変異ウイルスに対しても重症化や死亡を防ぐ効果は維持されていると考えられています。

オミクロン株に対応したファイザーやモデルナのワクチンの効果について、アメリカのCDC=疾病対策センターが、「BA.5」が主流だった2022年9月から11月にかけて接種していない人と比べて分析しました。
その結果、接種から1週間以上たった人の場合、以下の効果があったということです。

・発症を防ぐ効果にあたる救急の受診に至るのを防ぐ効果…56%、
・重症化を防ぐ効果…57%

また、CDCは、アメリカで広がっているオミクロン株の変異ウイルス「XBB.1.5」などに対するワクチンの効果も調べていて、去年12月から先月(1月)中旬にかけて、新型コロナの検査を受けた人のワクチンの接種状況などをもとに追加接種しない場合と比べたワクチンの効果を分析した結果を発表しています。

それによりますと、従来型のワクチンを複数回、接種したあと、オミクロン株の「BA.5」対応のワクチンを追加接種すると、以下のようなXBB系統のウイルスによる発症を防ぐ効果は、以下のようになりました。

・18~49歳…49%
・50~64歳…40%
・65歳以上…43%

CDCは、オミクロン株対応ワクチンを追加接種することによって「XBB」や「XBB.1.5」でも症状が出るのを抑える効果が上がるとしていて、可能な人は最新のワクチンの追加接種を受けるべきだとしています。

また、ワクチンの効果のうち、重症化や死亡を防ぐ効果は長続きすることを示すデータが出されています。

イギリスの保健当局が2月に発表した資料によりますと、65歳以上に対するワクチンの効果について、オミクロン株が主流の時期に接種していない人と比較して分析したところ、以下のような効果が認められました。

・重症化を防ぐ効果(3回以上接種した人の場合)
接種から2週間~2か月…78.1%
3~5か月…65.3%
1年~1年2か月…52.3%

・死亡を防ぐ効果(3回接種した場合)
接種から2~4週間…85.0%
4か月前後…75.6%
約10か月以上たったあと…56.9%

このように、死亡を防ぐ効果は比較的維持される傾向が見られています。
臨床ウイルス学が専門でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「確実に言えるのは、接種から1か月から3か月程度は感染や発症を抑えることが期待できるということと、その後、抗体のレベルが下がっても重症化を抑える効果は十分あるということだ。重症化を防ぐという個人のメリットに重点を置いて考えるべきで、年に1回のペースで秋や冬に接種するのは妥当な考え方だと思う。新しい変異ウイルスが出現するとワクチンのアップデートが必要になるかもしれないので、ウイルスを調べて世界で情報共有することがいままで以上に重要になると思う」と話しています。

Q4. 国内製薬会社のワクチン開発は?

厚生労働省によりますと、国内の製薬会社2社が開発を進めている新型コロナワクチンの承認申請を行っています。

このうち、大阪の製薬大手「塩野義製薬」は、去年11月、ウイルスのたんぱく質を遺伝子組み換え技術で作成して人に投与する「組み換えたんぱく質ワクチン」を厚生労働省に承認申請しました。
このワクチンは従来の新型コロナウイルスに対応した成分が含まれていて、20歳以上を対象に1回目と2回目の接種、それに3回目の接種用として承認を求めています。

また、製薬大手「第一三共」はことし1月、ファイザーやモデルナと同じ「mRNAワクチン」を厚生労働省に承認申請をしました。
このワクチンは、従来型の新型コロナウイルスに対応した成分が含まれていて、18歳以上を対象に、3回目の接種としての使用を想定しているということです。

このほか、熊本の製薬企業「KMバイオロジクス」は不活化したウイルスを人に投与する「不活化ワクチン」を、創薬ベンチャーの「VLPセラピューティクス・ジャパン」は、遺伝情報を伝えるmRNAが投与したあと一定の期間だけ体内で増殖する新しい仕組みを使った「次世代mRNAワクチン」の開発を進めています。
厚生労働省は3年前の8月から国内での生産を支援する目的で国内の製薬会社などにあわせて約1830億円の補助金を出して開発を支援していて、国産の新型コロナウイルスのワクチンの早期安定供給を目指すとしています。

Q5. 今後の議論は?

厚生労働省は無料での接種となっている「特例臨時接種」の期限がことし3月末までとなっていることから、新年度、ことし4月以降のワクチン接種の具体的な体制について、3月にも方針を決めることにしています。

8日に出された基本方針部会のとりまとめを受け、今月下旬に予防接種・ワクチン分科会を開いて、より具体的な対象者や回数、時期、ワクチンの種類の検討が進められます。

また、政府はことし4月以降も必要な接種であれば自己負担無く受けられるようにする方針を示していますが、現在の「特例臨時接種」を継続するかについても議論されます。

厚生労働省は今月24日に予定されているアメリカCDC=疾病対策センターでの新型コロナワクチンに関する議論などを踏まえて、来月上旬にも今後のワクチン接種体制の方針を分科会にはかったあと、必要な政省令の改正などを行うことにしています。