服役中のロック歌手死亡で 国側 ほぼ満額の賠償金支払いで和解

6年前、ロックバンドのボーカルだった男性が服役中に死亡したのは、刑務所が適切な医療を受けさせなかったことが原因だと主張して、遺族が国におよそ4300万円の損害賠償を求めた裁判で、国がほぼ満額の賠償金を支払うことで7日、和解が成立しました。

ロックバンド「THE FOOLS」のボーカルだった伊藤耕さん(当時62)は、2017年、覚醒剤取締法違反などの罪で北海道月形町にある刑務所に服役中、体調不良を訴えて倒れ、その2日後に死亡しました。

これについて遺族は「刑務所が適切な医療を受けさせなかったことが原因だ」と主張して、国に損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしていました。

裁判で国は「対応に問題はなかった」と争っていましたが、遺族側の弁護士によりますと、裁判所から国に過失があるという前提での和解を促され、国がほぼ請求どおりの4300万円の賠償金を支払うことで7日、和解が成立したということです。

この裁判では、最初に診察を行った町立病院を運営する町との間でも、町が50万円を支払う内容で去年、和解が成立しているということです。

妻「もうすぐ出所予定だった 気持ち思うと胸が詰まる」

原告で妻の伊藤満寿子さんは「和解の内容についてはよかったと思うが、夫はもうすぐ出所する予定だったので、気持ちを思うと胸が詰まる。国は受刑者をちゃんと人間扱いしてほしい」と話していました。

遺族側の島昭宏弁護士は「満額を支払う内容の和解で、国が全面的に過失を認めたとしか考えられない。刑務所や入管施設での対応についてさまざまな問題が指摘されているが、このケースもその1つとして多くの人に知ってもらいたい」と述べました。

法務省「適切な医療の実施に努めていく」

和解の成立について法務省は「今後とも被収容者の健康管理には万全を期するとともに、適切な医療の実施に努めていく」とコメントしています。