都立高校入試 英語スピーキングテストの採点に誤り 複数訂正も

去年、初めて実施された、東京の都立高校の入試の合否判定で活用される英語のスピーキングテストで、解答が正しく録音されず、誤って低く採点された生徒が8人いたことが明らかになりました。

これは7日、都の教育委員会が発表しました。

スピーキングテストは、都立高校の入試で英語の「話す力」をはかろうと、去年、都内の公立中学校などに通う3年生、7万1000人余りを対象に初めて実施されました。

採点の高い順から「A」から「F」までの6段階で評価され、今月実施される高校入試の合否判定に活用されることになっていて、先月、生徒に結果が通知されました。

このあと、都の教育委員会は、検証のため採点を担当したフィリピンの英語の指導資格を持つ現地講師に、全員分の音声データを聞き直してもらった結果、8人の解答の音声の一部が正しく録音されず無回答と認識され、誤って低く採点されていたことがわかったということです。

関係者によりますと、当初「D」とされた生徒が2段階上の「B」に修正されたケースもあったということです。

都の教育委員会は6日、対象の生徒や保護者に経緯を説明したうえで謝罪し、都立高校の一般入試の出願の受け付け期間が7日までになっていることから、手続きのサポートなどを行うことにしています。

都の教育委員会は「出願時期にこうした事例が起きて大変申し訳ない。来年度以降こういったことがないよう再発防止に努めたい」としています。

採点ミス なぜ起きた?

今回の採点ミスに、都の教育委員会が気付いたのは、採点結果が生徒に通知されたあとに行われた音声データの検証がきっかけでした。

都の教育委員会によりますと、テストの運営を担った教育サービス大手のベネッセが
テストのあとに音声データの検証を行うことになっていました。

1月26日までにテストを受けた全員分の採点結果が通知されたあと、1月27日から2月5日にわたって、ベネッセから委託を受けて採点を担当したフィリピンの英語の指導資格を持つ現地講師が、全員分の解答用の音声データを聞き直したということです。

その結果、生徒の解答の音声データの一部に「ザー」という機械音だけが聞こえるものがあることがわかり、改めて検証が行われることになりました。

検証にあたっては、採点で使われたヘッドセットのマイクを通じて録音された音声データではなく、タブレット端末に備え付けられたマイクを通じて録音されたバックアップ用の音声データが使われました。

その結果、バックアップの音声データには解答が正しく録音されているものがあり、採点し直した結果、8人の成績が誤って低く採点されていたことがわかったということです。

都の教育委員会は、ヘッドセットのマイクに何らかの不具合があった可能性があるとしていて、担当者は「ご迷惑をかけた生徒や保護者、学校関係者におわびしたい」と話していました。

また、最初の採点の際に、録音のトラブルに気付くことができなかったことについて、「解答が全く録音されていない場合は、すぐにバックアップを確認する手はずになっていた。しかし、今回のように一部のみが聞こえないということは想定していなかったので、気付くのが検証のタイミングになってしまった。今後の再発防止に向けて、ルールの見直しも含め検討していきたい」としています。

専門家「疑問の声に耳を傾け 検証を」

入試やテストの制度に詳しい東京大学の南風原朝和名誉教授は「初めての実施で、いろんなことが起こるだろうと想定されていたので、今回のことは十分あり得ることだ。スピーキングテスト自体は、「話す」技能をはかるうえで大事だと思うが、これまでずっと問題なしとしてきたのが、突然、問題が出てきたので、検証の体制、進め方には疑問が残る」と指摘しました。

また、テストの6段階ある評価は4点刻みとなっていることを踏まえ、「1つ評価が違えば4点の差が出るため、合否のボーダーラインにいたり進路を迷っていたりする生徒からすると、採点ミスの影響は大きい。入試という生徒の人生を左右するものなので、疑問の声に耳を傾けて、検証をしてほしい」と話していました。