アメリカ軍が中国の気球を撃墜したことに関連して、中国外務省の報道官は、中国の別の民間飛行船が中南米の上空を飛行していると明らかにしました。
中国外務省の毛寧 報道官は6日の記者会見で、アメリカ国防総省が中南米の上空にも中国の偵察用の別の気球が飛行していると明らかにしたことについて確認を求められたのに対し「中国の民間の無人飛行船と確認された。気象の影響を受けて予定されていたルートを大きく外れ、中南米とカリブ海の上空に迷い込んだ」と明らかにしました。
一方、毛報道官はアメリカ軍が撃墜した気球を飛行させた中国企業の名前や、中国軍との関係について質問されたのに対し「具体的な企業について、提供できる情報はない」とだけ述べました。

気球撃墜 中国外務省の次官 北京の米大使館に厳正な申し入れ
アメリカ軍が中国の気球を撃墜したことについて、中国外務省は、謝鋒 次官が北京にあるアメリカ大使館に厳正な申し入れを行ったと発表しました。
中国外務省によりますと、アメリカ軍がアメリカ本土の上空を飛行していた気球を撃墜したことについて、謝鋒 次官が5日、北京にあるアメリカ大使館に厳正な申し入れを行ったということです。
この中で謝次官は「中国の民間の無人飛行船がアメリカの領空に迷い込んだのは完全に不可抗力であり、予想外の偶発的な事件だ。事実は非常にはっきりしており、わい曲して中傷することは許さない」と強調しました。
そのうえで、アメリカ側の行為は去年11月にインドネシアで行われた米中首脳会談以降、両国関係を安定させる努力と過程に深刻な影響と損害を与えたと非難しました。
そして「強烈な抗議を行うとともにアメリカに対し、これ以上中国の利益を損なわず、緊張した状況をエスカレートさせないよう求める」としています。
また「中国政府は、中国企業の正当な権益を断固として守る」として、必要に応じて対抗措置をとる考えを改めて示唆しました。
中国外務省「中南米の上空にも別の飛行船」
戦略的に「軍民融合」促進する中国
今回撃墜された気球についてアメリカ側は、中国が戦略的な拠点を監視するために使用していたと指摘する一方、中国側は気象などを研究する民間の無人飛行船だと主張しています。
しかし、中国では軍事装備の製造を担う複数の国有企業が、偵察や監視などを行う気球を開発しています。
こうした気球について、中国メディアは滞空時間が長くコストが安いことに加え、気球に載せた観測機器を使えば、地上のレーダーでは感知が難しい目標を捉えることができるなどとして、軍事面での活用にメリットが大きいと伝えています。
中国では習近平指導部のもと、近年、軍と民間企業の協力を促進する「軍民融合」を国家戦略に掲げ、戦略的に重要と位置づける分野の技術について国産化を急速に進め、宇宙やサイバーなどの分野での軍事力の強化を図っているとみられています。
しかし、中国では軍事装備の製造を担う複数の国有企業が、偵察や監視などを行う気球を開発しています。
こうした気球について、中国メディアは滞空時間が長くコストが安いことに加え、気球に載せた観測機器を使えば、地上のレーダーでは感知が難しい目標を捉えることができるなどとして、軍事面での活用にメリットが大きいと伝えています。
中国では習近平指導部のもと、近年、軍と民間企業の協力を促進する「軍民融合」を国家戦略に掲げ、戦略的に重要と位置づける分野の技術について国産化を急速に進め、宇宙やサイバーなどの分野での軍事力の強化を図っているとみられています。
元空将「対話のチャネル開きやり取り必要」
アメリカ軍が撃墜した中国の気球について、航空自衛隊で戦闘機のパイロットを務めた元空将の荒木淳一さんは、「アメリカ本土の上空を数日間にわたって飛行していることからすると、軍事的な偵察目的が主な目的と考えるのがふつうだ。仮に気象観測が目的だとしても他国の領空を通過するときは事前に通知をしているはずで、それをしないこと自体が主権を侵害する行為に当たる」と指摘しています。
今回のアメリカの対応については、「主権の及ぶ範囲なので、侵入してきたものに対しては当該国が必要に応じて対処することになる。高い高度を飛行する気球を捕獲することはほぼ不可能なので、今回撃墜をしたのだろう。今後は、回収した機材が気象観測用のものなのか、それとも軍事目的に使える電波や画像を収集できる機能がついているのかどうかが焦点になる」と指摘しています。
そのうえで、「これを機会にアメリカと中国の対立が激化することは避けないといけない。誤った認識に基づいて不要なエスカレーションを避けることは大事なので、対話のチャネルを開きつつ、いろいろな情報のやり取りをしていく必要がある」と話しています。
今回のアメリカの対応については、「主権の及ぶ範囲なので、侵入してきたものに対しては当該国が必要に応じて対処することになる。高い高度を飛行する気球を捕獲することはほぼ不可能なので、今回撃墜をしたのだろう。今後は、回収した機材が気象観測用のものなのか、それとも軍事目的に使える電波や画像を収集できる機能がついているのかどうかが焦点になる」と指摘しています。
そのうえで、「これを機会にアメリカと中国の対立が激化することは避けないといけない。誤った認識に基づいて不要なエスカレーションを避けることは大事なので、対話のチャネルを開きつつ、いろいろな情報のやり取りをしていく必要がある」と話しています。
NASA長官「われわれのアドバイス参考にしながら撃墜決定」
アメリカ軍が中国の気球を撃墜したことについて、NASA=アメリカ航空宇宙局のネルソン長官は「NASAは気球の研究や残骸の回収についての専門的な知識を持っているため、アメリカ国防総省から相談を受けた。その結果、われわれのアドバイスを参考にしながら撃墜する決定がなされた」と経緯を説明しました。
また、この問題について「なぜ中国は、アメリカの国務長官が中国を訪問する直前に、アメリカ上空に気球を飛ばしたのだろうか」と疑問を示したうえで、「国務長官の訪中を取りやめるほどインパクトがあったということだ。バイデン大統領にとって許されない行動だったため、気球の撃墜を指示した」と指摘しました。
そして「アメリカがどういう行動を取るかは中国の対応次第だ。中国の習近平国家主席が心を開いたり、情報を共有したりすることに期待したいが様子を見ないと分からない」と述べ、引き続き中国の対応を注視する必要があると指摘しました。
また、この問題について「なぜ中国は、アメリカの国務長官が中国を訪問する直前に、アメリカ上空に気球を飛ばしたのだろうか」と疑問を示したうえで、「国務長官の訪中を取りやめるほどインパクトがあったということだ。バイデン大統領にとって許されない行動だったため、気球の撃墜を指示した」と指摘しました。
そして「アメリカがどういう行動を取るかは中国の対応次第だ。中国の習近平国家主席が心を開いたり、情報を共有したりすることに期待したいが様子を見ないと分からない」と述べ、引き続き中国の対応を注視する必要があると指摘しました。
林外相「アメリカの立場は十分に理解」
林外務大臣は、衆議院予算委員会で「いかなる国であっても他国の主権を侵害することは許されない。アメリカ政府は中国側によって容認しがたい主権侵害が行われたとしたうえで、自国の主権と国民の安全を守るため、慎重かつ合法的に対処していると説明しており、わが国もアメリカの立場は十分に理解している。中国側が十分な説明責任を果たすことが重要だ」と述べました。