広域強盗 藤田容疑者の残りの裁判すべて棄却 フィリピン裁判所

全国で相次いでいる一連の広域強盗事件に関連して、日本がフィリピンに身柄の引き渡しを求めている日本人4人のうち、藤田聖也容疑者について、現地の裁判所が3日、手続きが残っていた3件の裁判を棄却したことがわかりました。
フィリピンのレムリア司法相はこれで「4人のうち2人について日本への引き渡しが可能になった」としています。

一連の広域強盗事件に関連して、日本の警察当局は、別の特殊詐欺事件などに関わったとして逮捕状を取っている
▽渡邉優樹容疑者と
▽小島智信容疑者
▽藤田聖也容疑者
▽今村磨人容疑者の
4人の身柄を引き渡すようフィリピン側に要請しています。

しかし、4人のうち3人はフィリピン国内で別の事件の裁判や手続きが行われていて、裁判が続くかぎり、日本への引き渡しはできないことになっています。

こうした中、3人のうちの1人、藤田容疑者についてネグロス島の中心都市、バコロドにある裁判所が3日、手続きが残っていた暴力事件に関する3件の裁判を棄却したことがわかりました。

藤田容疑者をめぐっては、すでに脅迫事件に関する裁判が棄却されていて、フィリピンのレムリア司法相はさきほど記者団に対し、これで藤田容疑者の裁判はすべて棄却されたと明らかにしました。

このほか今村磨人容疑者も暴力事件についての裁判が先月、棄却されていて、レムリア司法相は「4人のうち2人について日本への引き渡しが可能になった」としています。

司法相は準備ができた容疑者から先に引き渡す可能性もあるという見方を示していて、容疑者の身柄の引き渡しに向けた日本側との調整が今後、本格化するものとみられます。

告訴していた女性「容疑者たちは送還されるべき」

裁判が棄却された藤田聖也容疑者を、暴行を受けたとして告訴していた元交際相手の女性がNHKの取材に応じました。

女性は藤田容疑者と4年前にフィリピンで知り合い、およそ9か月間、交際していたということです。

その間、女性は首都マニラの高級マンションで藤田容疑者と暮らし、そのマンションには同じく身柄の引き渡しを求められている、小島智信容疑者も住んでいたといいます。

また、交際していた際、藤田容疑者から毎月、日本円で35万円余りを受け取っていたほか、フィリピン国内のリゾート地などを一緒に旅行したということです。

女性は「そうしたお金の出どころについて、どのように稼いでいるのか仕事の話を聞くと、いつも怒りだして教えてくれなかった」と証言しました。

また、女性は渡邉優樹容疑者にも会ったことがあり、藤田容疑者らは「ボス」と呼んでいたということです。

女性はその後、酒に酔った藤田容疑者から殴られるようになり、交際をやめたあと、藤田容疑者を告訴したということです。

女性は藤田容疑者が日本での一連の広域強盗事件に関わった疑いがあると、報道で知ったということで「告訴はしましたが、裁判が棄却されたことは喜ばしいと思います。一連の事件では命を奪われた人もいると聞きました。日本での事件に関わった疑いがある容疑者たちは送還されるべきです」と話しています。

藤田容疑者の父親 “償いきれるようなものでない”

藤田聖也容疑者(38)の父親が取材に応じ、被害者に申し訳ないという思いを明かしました。

関係者によりますと藤田容疑者は北海道七飯町の小、中学校に通っていたということで、父親が自宅のインターフォン越しに取材に応じました。

父親はこの10年以上、藤田容疑者と連絡を取っていないということで、事件の受け止めについて「別の記事に出ているとおりでそれ以上でも以下でもない」と話しました。

そのうえで「被害者に申し訳ないという思いか」という問いかけに対して、「はい」と答えました。

また、藤田容疑者に望むことについては「どうしてほしいと言っても、どうしようもない」と語りました。

さらに償ってほしいが償いきれるようなものではなく藤田容疑者に対して腹立たしい思いがあると明かしました。

藤田容疑者の同級生「とんでもないことをした」

藤田容疑者と小、中学校で同級生だったという男性は「クラスが違ったので特に印象に残っていないが、普通の子という感じだったと思う。中学校を卒業して以降のことは全く知らないが、ニュースで顔を見て本人だとすぐに分かりました。とんでもないことをしたなと驚いています」と話していました

渡邉容疑者に会った男性「かばんに現金何百万円か」

一連の広域強盗事件で指示を出していた疑いがあり、特殊詐欺に関わったとして警視庁が逮捕状を取っている渡邉優樹容疑者に数年前、フィリピンで会ったという男性がNHKの取材に応じました。

男性が渡邉容疑者と会ったのは、マニラのホテルに併設されたカジノで、2019年に特殊詐欺グループの拠点が摘発される前だったということです。

男性は一緒にいた知人からカジノのVIP席にいた「ハオ」と呼ばれる渡邉容疑者を紹介されたといいます。

男性は「友達から誘われて遊びに行ったときに、『すごいお金を使う日本人がいる』ということで、一般客ではなく、VIPの人が遊ぶところで会った。ハーフパンツにTシャツ姿でお金を持っているようには見えなかったが、バカラなどに1回に200万円とか300万円賭けていた。かばんの中に現金を日本円で何百万円か入れていた」と話しました。

一緒に食事をした際には、容疑者はカジノがあるホテルに滞在していて、詐欺に関わっていると明かしたということです。

男性は「どんな仕事をしているか聞いたらカードのすり替え詐欺をやって月に1億円は稼いでいると言っていた。詐欺をやる人を紹介してくれればお金を稼げると言われた」と話しました。

口かずは少なくもの静かな印象でしたが、カジノで一緒にいた別の日本人男性からは「ボス」と呼ばれていたということです。

フィリピンに滞在している理由については、「以前は別の国で同じようなことをしていたが、賄賂を渡せば捕まらないのでフィリピンに来たという趣旨の話をしていた。知り合いがいるので、自分は絶対捕まらないというようなことも言っていた」と話しました。