【詳細】米本土飛行の中国気球を撃墜 残骸回収し解明へ

アメリカ軍はアメリカ本土やカナダの上空を横断していた中国の気球を、南部サウスカロライナ州の沖合で戦闘機によって撃墜しました。
引き揚げ用の船やダイバーなども投入して残骸の回収作業を行い、中国が気球を利用してどのような情報を収集しようとしていたのか、解明を進めています。

気球は、偵察が目的だとするアメリカ側と気象研究用の民間飛行船だとする中国側。
これまでの経緯と最新の情報をお伝えします。

船やダイバー投入し回収作業 FBI捜査官も同乗

アメリカ軍の幹部や国防総省の高官によりますと、撃墜した気球の残骸は海上およそ11キロにわたって、海面や深さおよそ15メートルの海中に散らばっているということで、引き揚げ用の船や海軍のダイバーなども投入して回収作業を進めています。

また、船にはスパイ防止の活動を行うFBI=連邦捜査局の捜査員も同乗するということです。

アメリカ国防総省「機密性高い軍事施設の上空も飛行」

気球が飛行したルートにある西部モンタナ州にはICBM=大陸間弾道ミサイルを運用するアメリカ軍の基地もあり、国防総省の高官は「気球は機密性の高い軍事施設の上空も飛行していた」と指摘しています。

アメリカ軍は気球の残骸を回収することで中国側がどのような情報を収集しようとしていたのか、解明を進めています。

米4日(日本時間5日)国防総省 気球をミサイルで撃墜と発表

アメリカのオースティン国防長官は、現地時間の4日午後、日本時間の5日、午前5時すぎに声明を発表し、南部サウスカロライナ州の沖合の領海の上空で、アメリカ軍の戦闘機が、アメリカ本土の上空を飛行してきた中国の気球を撃墜したと明らかにしました。

アメリカ国防総省の高官によりますと、現地時間の午後2時39分、日本時間の午前4時39分にF22ステルス戦闘機が気球に向けて空対空ミサイル1発を発射し、海に墜落させたということです。

高官は「気球を撃墜したことで、われわれは回収の任務に移行した」と述べ、すべての残骸を回収する考えを強調しました。
これについて、バイデン大統領は、今月1日の時点で、できるだけ速やかに撃墜するよう指示していたことを明らかにし「軍は地上への被害を避けるため気球が海の上に出るのを待っていた。撃墜に成功したパイロットたちをたたえたい」と述べました。

また、オースティン国防長官は、撃墜した気球について「アメリカ本土の戦略的な拠点を監視するため中国が使用していたものだ」と指摘するとともに「バイデン政権がアメリカ国民の安全を常に第一に考え、中国による容認できない主権の侵害に効果的に対処することを示すものだ」と強調しました。

中国国防省が談話「明らかに過剰反応 米側のやり方に厳重抗議」

中国国防省の報道官は5日、談話を出し「アメリカ側が武力でわが国の民間の無人飛行船を襲撃したのは明らかに過剰反応だ。アメリカ側のやり方に厳重に抗議し、必要な手段を使って類似の状況に対処する権利を留保する」として、必要に応じて対抗措置をとる姿勢を示唆しました。

気球 アメリカ本土を横断したあとの撃墜になった理由は

ワシントン支局の根本幸太郎記者は、次のように解説します。

気球の撃墜で住民に被害が及ばない海上に出るのを待っていた形です。

実は、バイデン大統領は今月1日の時点で、速やかな撃墜を指示していました。

決断の背景には自国の安全保障に直結する問題に発展していたことがあります。

中国の偵察目的とみられる気球は、これまでもアメリカ本土上空で確認されているんですが、これほど長い飛行は前例がありませんでした。

アメリカはそのルートから明らかに機密の軍事施設がねらいだと分析しました。

また中国への強硬路線を強める野党 共和党からは撃墜を求める声が相次ぎました。

今回の気球の動向、そして国内世論を考えると、バイデン大統領には撃墜以外に選択肢はない状況だったと言えます。

ブリンケン国務長官は引き続き、開かれた意思疎通が重要だとして、状況が整えば早期に中国を訪問したい意向を示しています。

ただ、今回の問題を受けて国民感情が硬化し、中国に強い姿勢で臨むべきだという声がさらに強まる可能性があり、中国の出方をにらみながら、難しい対応を迫られることになります。

中国 国有企業が偵察や監視などを行う気球を開発

中国では、軍事装備の製造を担う複数の国有企業が、偵察や監視などを行う気球を開発しています。

このうち、中国軍の主力戦闘機を製造している「中国航空工業集団」は、15日間続けて任務にあたることができるとする飛行船のような形をした気球を開発したほか、宇宙開発を担う「中国航天科工集団」は、軽量で半径およそ40キロを監視することができるという気球を開発しています。

中国メディアは、これらの気球は、滞空時間が長く、コストが安いことに加え、気球に載せた観測機器を使えば、地上のレーダーでは感知が難しい目標を捉えることができるなどとして、軍事面での活用にメリットが大きいと伝えています。

専門家 “米議会の中国への対応 一層厳しくなる”

中国の気球について、防衛省防衛研究所の高橋杉雄 防衛政策研究室長は「衛星と違い、気球は1か所に長くとどまって情報収集ができる。また地表に近い分、精度の高い画像や、電波や電磁波についても、より精度の高い情報を取ることができると考えられる」と述べました。

そのうえで、中国側の意図について「今回、気球が通過したアメリカ軍基地周辺には大陸間弾道ミサイルが配備されていて、基地の電波や交信などのパターンを把握することが、ねらいの1つと考えられる」と指摘しました。

さらに、中国側が強い不満と抗議の意を表明したことについては「中国は海上で装置やデータを回収する意図があったものの、撃墜され、できなくなったので、アメリカを非難しているのではないか」と述べました。

そして、米中関係への影響については「中国製の気球がアメリカ本土に飛んできて、中国は恐ろしい国だという印象を受けたアメリカの国民感情は、政策に反映される。アメリカ議会の対中政策はこれまでも相当厳しかったが、さらに厳しい法律が作られていくということは考えられる」として、アメリカ議会の中国への対応が一層厳しくなるだろうと指摘しました。

撃墜の瞬間は

ロイター通信が配信したアメリカ南部のサウスカロライナ州で撮影された映像では、左側から右下に向かって移動していく白い筋が確認できます。これが戦闘機とみられます。

途中から白い筋は二股に分かれます。その一方が、気球とみられる白い物体の方向に向かって伸びていくのが分かります。これが撃墜に使われた空対空ミサイルとみられます。しばらくすると、気球とみられる白い物体が煙を上げ、その後、落下していくのがわかります。

目撃した男性は

気球が撃墜される様子を目撃したという南部サウスカロライナ州の写真家の男性は「気球が攻撃を受けたとき爆発はとくに起きず、大きな火の玉や火炎も見られなかった。飛行機から何かが発射されたあと、気球は崩壊し、落下し始めた」などと話していました。

中国5日 中国外務省 強い不満と抗議の意 対抗措置の示唆も

アメリカ国防総省が中国の気球を撃墜したと発表したことについて、中国外務省は5日談話を出し、「中国はアメリカに対し、無人飛行船が民間のものであり、アメリカに入ったのは不可抗力で、全く予想外の状況だと何度も伝え、冷静かつ理性的に処理するよう明確に求めていた」として、強い不満と抗議の意を表明しました。

そのうえで「アメリカ側が武力を使用したことは明らかに過剰な対応であり、国際的な慣例に著しく違反している。中国側は関連する企業の正当な権益を断固として守ると同時に、必要な反応を行う権利を留保する」として必要に応じて対抗措置をとる考えを示唆しました。

米国防総省高官 気球飛行中に搭載された装置を分析 偵察が目的

国防総省の高官によりますと気球は先月28日にアリューシャン列島の北方のアメリカの防空識別圏に進入したあと30日にカナダの領空を通過し、31日に再び西部アイダホ州北部からアメリカの領空に入ったということです。

この高官は気球が飛行している間、搭載された装置などを分析できたとした上で、気球は偵察を目的とするものだという認識を改めて示しました。

米3日(日本時間4日) ブリンケン国務長官の訪中延期を発表

中国の気球がアメリカ本土の上空を飛行していることが明らかになったことを受けて、アメリカのブリンケン国務長官は中国側に対し「明確な主権の侵害だ」とした上で、日本時間の4日出発する予定だった中国への訪問を延期すると伝えました。

国務省によりますとブリンケン国務長官は3日、中国共産党で外交を統括する王毅氏と電話会談を行い、中国訪問の延期を直接、伝えたということです。

この中でブリンケン長官は気球の飛行は「無責任な行動であり、明確な主権の侵害と国際法の違反にあたる」としてこうした状況は中国訪問の意義を台なしにするもので訪問は適当でないと説明したということです。

ただ、中国側が気球の飛行について「遺憾だ」としていることには留意するとしています。

そしてブリンケン長官は米中両国の対話のチャンネルを維持する姿勢に変わりはないとして、状況が整えばなるべく早い段階で中国を訪問するとの考えを伝えたということです。

国務長官の訪中の経緯は

アメリカのブリンケン国務長官の中国訪問は去年、行われた米中首脳会談をきっかけに調整が始まったものです。

アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席は去年11月、訪問先のインドネシアで初めて対面での首脳会談を行い、政府間の対話を継続するため、ブリンケン長官が中国を訪問することで合意しました。

これを受けて両政府はブリンケン長官のことしの早い時期の訪問に向けて調整を続け、アメリカ時間の3日夜、日本時間の4日、ブリンケン長官が中国の北京に向けて出発し、秦剛外相などと会談する予定になっていました。

おととしバイデン政権が発足して以降、アメリカの閣僚はこれまで中国を訪問しておらず、ブリンケン長官の訪問が実現すれば初めてとなる予定でした。

米で中国への強い態度求める声相次ぐ

アメリカでは中国に対して強い態度で臨むよう求める声が相次いでいます。

議会下院に設置された中国特別委員会の委員長に就任した共和党のギャラガー議員はツイッターに動画メッセージを投稿し、ブリンケン国務長官が中国訪問を延期したことについて「正しい判断だった」としたうえで「中国によるアメリカの主権の侵害は言語道断であり、何事もなかったようにはできない。アメリカが押し返さないかぎり、中国はこうした度を超えた行動を続けるだろう」と述べました。

また、トランプ前大統領はソーシャルメディア上に「気球を撃ち落とせ!」と書き込んでいます。一方、民主党の議員からも「より断固とした対応をとるべきだ。怒りを行動で示さなければならない」などといったコメントの発表が相次いでいて、与野党双方から中国に対して強い態度で臨むよう求める声が高まっています。

中国3日 「気象研究用の中国の民間飛行船」

中国外務省は、3日夜、気象などを研究する中国の民間の飛行船だとした上で「不可抗力によってアメリカに迷い込んだことを遺憾に思う」と発表しました。

アメリカ国防総省は、2日、偵察用の気球が民間機が利用するよりも高いアメリカ本土の上空を飛行しているのを確認したと発表し、中国のものだという分析を明らかにしていました。

これについて、中国外務省は3日の記者会見で「関連する報道を注視しており、現在、状況を確認している」としていましたが、その後、「気象などを研究する中国の民間の飛行船だ」と発表しました。

その上で「偏西風などの影響で予定の進路から大きく外れた。不可抗力によりアメリカに迷い込んだことを遺憾に思う」と表明しました。

そして、「アメリカと引き続き意思疎通を図り、不可抗力が引き起こした不測の事態に適切に対処する」としています。

アメリカ政府は中国側に対し、「事態を深刻に受け止めている」と伝えていました。

米3日 国防総省 「偵察用の気球」と反論

アメリカ国防総省のライダー報道官は3日、記者会見で、アメリカ本土の上空を飛行している中国の気球について「われわれは偵察用の気球だということを知っている」と述べて、気象などを研究する民間の飛行船だとする中国側の発表に反論しました。

そのうえでライダー報道官はこの気球は操縦することができ、気球の下に偵察のための装置が取り付けられているという見方を示しました。

また、気球は進路を変更し、現在、アメリカの中央部の上空を東に移動しているということで、アメリカ軍などでつくるNORAD(ノーラッド)=北米航空宇宙防衛司令部が監視しているということです。

ライダー報道官は「気球はアメリカの領空を侵犯し、国際法にも違反しており、容認できるものではない。われわれは複数のレベルで中国側に直接伝えた」と非難しました。一方、気球を撃墜するのか問われたのに対し、「状況を注視し、選択肢を検討している」と述べるにとどめました。

米3日 国務長官 気球飛行の中国非難も外交的関与の継続を強調

中国の気球がアメリカ本土の上空を飛行しているのを受けて、中国への訪問を延期したアメリカのブリンケン国務長官が記者会見し、中国側を強く非難する一方、外交的な関与を続けていく考えを強調しました。
予定していた中国への訪問を急きょ延期したアメリカのブリンケン国務長官が記者会見し「中国が偵察用の気球を飛ばしたことは容認できないし無責任だ」と述べて中国側を強く非難しました。

一方で「開かれた意思疎通が引き続き重要だ。状況が整えば中国に行くつもりだ」と述べ外交的な関与を続けていく考えを強調しました。

バイデン政権としては両国の意図しない衝突を避けるため、対話を継続したい考えで、中国側の反応が注目されています。

気球の扱いをめぐってはブリンケン長官が「領空から追い出すことが第1の課題だ」と述べる一方、野党・共和党などからは撃墜すべきだという声も出ています。

米3日 国防総省「別の中国の偵察用の気球 中南米を飛行」

アメリカ国防総省のライダー報道官は3日、声明を発表し、アメリカ本土の上空を飛行しているものとは別の中国の偵察用の気球が中南米を飛行していると明らかにしました。

中国3日 王毅政治局委員「意見の相違をコントロールすべき」

中国外務省によりますと、中国共産党で外交を統括する王毅政治局委員は、3日夜、ブリンケン国務長官と電話で会談し「双方は冷静さを保ち適切にコミュニケーションをとることで意見の相違をコントロールすべきだ」と述べ、バイデン政権との対話を継続する姿勢を示しました。

また、中国外務省は4日、報道官の談話を発表し、アメリカ本土の上空を飛行している中国の気球について「民間用で、気象などの科学的な研究に使用される飛行船だ」として、アメリカ側が指摘する偵察用のものではないと重ねて主張しました。

その上で「偏西風などの影響で予定の進路から大きく外れた。不可抗力が引き起こした不測の事態で、中国は一貫して国際法を順守し故意に主権国家の領土や領空を侵犯したことはない」と、あくまでも「不可抗力だ」と釈明しました。

また、アメリカ側がブリンケン長官の訪中延期を発表したことについては、両国の正式な発表前だったと指摘した上で「アメリカが関連した情報を発表するのはみずからの事情によるもので、われわれはそれを尊重する」という立場を示しました。

一方で「アメリカの一部の政治家やメディアがこの問題を利用して中国を攻撃し中傷することに断固として反対する」として、バイデン政権への批判は避けつつ中国に強硬な姿勢を示すアメリカの野党・共和党などをけん制しました。

米2日(日本時間3日) 国防総省 気球が本土上空を飛行と発表

アメリカ国防総省のライダー報道官は2日、偵察用の気球が民間機が利用するよりも高いアメリカ本土の上空を飛行しているのを確認したと発表しました。
気球は数日前に本土上空に入り、1日、西部モンタナ州の上空を飛行していたということです。

国防総省の高官は記者団に対し、この気球は中国のものだという分析を明らかにしました。

気球は地上の住民に対して軍事的な脅威になるものではないとしてアメリカ軍が警戒監視を続けています。

アメリカ政府内では、この気球についてバイデン大統領にも報告され、モンタナ州の人口の少ない地域の上空で撃墜するかどうか検討されましたが、破片によって地上に被害が及ぶおそれが排除できないと判断し、見送られたということです。

国防総省高官は、撃墜する場合に備えて周辺の空域に航空機が入らないよう、航空当局と一時、調整したとしていて、地元メディアによりますと、モンタナ州の南東部にある空港で、あわせて3便に遅れが出たということです。

また、この高官によりますと気球は機密に関わる場所の上空を飛行しようとしているということですが、国防総省は収集できる情報は限られると分析しているとしています。

国防総省は、こうした気球の活動について過去数年間で複数回、確認しているということで、アメリカ政府は中国側に対し「事態を深刻に受け止めている」と伝えたということです。

米政府高官「気球はバス3台分の大きさ」

アメリカのABCテレビは、アメリカ本土の上空を飛行しているのが見つかった中国のものとみられる偵察用の気球の映像を伝えています。

映像では、白い気球の下側に黒い機器のような物体が映り込んでいるのが確認できます。

ABCテレビは政府高官の話として「気球はバス3台分の大きさで電子機器が備わっている」と伝えているほか、国防総省の関係者の話として「気球は過去数年間、何回かアメリカに飛来しているが、今回はより長い時間飛んでいるようだ」と伝えています。

気球が飛来したモンタナ州はアメリカ西部のカナダとの国境沿いに位置し、州内にはロッキー山脈があるほか、核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイルを運用するアメリカ空軍基地などがあります。

写真撮影の住民「星にしては大きすぎると思った」

アメリカ西部モンタナ州の住民が1日、撮影した映像では、白く丸い物体が上空を浮遊する様子が映っています。

この住民は当時の状況について「いつものように窓の外を眺めていると視界の端に何かが見え、最初は星だと思いました。しかし、そのときは昼間だったのでおかしいと感じましたし、星にしては大きすぎると思いました」と話していました。

その上で「中国の気球とみられるということですが、とても大胆なことだと思います」などと述べ、気球についてアメリカ政府が徹底的な調査をすべきだと話していました。

カナダ国防省も“カナダ上空での飛行を確認”

カナダ国防省は2日、偵察用の気球がカナダ上空を飛行しているのを確認したと発表しました。

アメリカ軍とカナダ軍でつくるNORAD(ノーラッド)=北米航空宇宙防衛司令部が気球の動きを追跡しているということです。

カナダ国防省は「アメリカのパートナーと協力し海外の脅威からカナダの機密情報を守るために必要な措置をとり続ける」という声明を発表し、カナダの人々は安全で、起こりうる事故の可能性を監視するなど領空の安全を確保するための措置をとっているとしています。

米報道「以前にハワイやグアムでも目撃」

アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは国防総省の関係者の話として偵察用の気球は中国からアリューシャン列島、そしてカナダの北西部を数日間かけて移動し、モンタナ州に到着したと伝えています。

また、ワシントン・ポストは情報機関の関係者の話として、同じような気球が以前、ハワイとグアムの上空でも目撃されたとした上で、気球には誘導装置が搭載されているとの見方を伝えました。

共和党議員「脅威に立ち向かわなければならない」

アメリカ議会下院に設置された中国特別委員会の委員長に就任した共和党のギャラガー議員は2日、声明を発表し「ブリンケン国務長官の中国訪問のわずか数日前に起きたこの出来事は、アメリカの主権を侵害しているだけでなく、中国共産党の最近の外交面での提案が、政策に何ら実質的な変化をもたらしていないことを示している。さらには、中国共産党の脅威が、遠く離れた大陸に限定されず、アメリカ本土に存在することを証明しており、われわれはこの脅威に立ち向かわなければならない」と強く非難しました。

松野官房長「警戒監視を切れ目なく」

松野官房長官は3日午後の記者会見で「政府としては平素から警戒監視に万全を期すとともに、さまざまな各種の情報収集、分析に努めているが、アメリカとのやりとりの有無を含めて、一つ一つの情報については、事柄の性質上、答えを差し控える」と述べました。

その上で「引き続き、わが国や周辺の上空についての警戒監視を切れ目なく行い、対応に万全を期していく」と述べました。

中国外務省「アメリカとともに冷静かつ慎重な処理を望む」

アメリカ国防総省が、中国のものとみられる偵察用の気球がアメリカ本土の上空を飛行しているのを確認したと明らかにしたことについて、中国外務省の毛寧報道官は3日の記者会見で「関連する報道を注視しており、現在、状況を確認している。事実がはっきりする前に推測や大げさな宣伝をしても問題の適切な解決には役立たない」と述べました。

そのうえで「アメリカとともにこの問題を冷静かつ慎重に処理することを望んでいる」と強調しました。

中国安全保障の専門家「中国のものだとすれば目的があるか」

アメリカ本土の上空で確認された偵察用の気球について、中国の安全保障に詳しい笹川平和財団の小原凡司上席研究員は「中国のものだとするならば、他国の領土の上をセンサーを積んで飛ばすということ自体には目的があるのだろうと考えるのが妥当だ」と指摘し、アメリカの上空に偶然流れ着いたものではないという見方を示しました。

その上で気球が運べる機器の大きさや重さには限界があるとして「すでにある低軌道衛星のセンサーで取れないデータを取るとなると、一体何があるのか疑問だ。現段階で中国はアメリカとの衝突は望んでいないので、アメリカに中国に対する警戒感を抱かせるような行為は控えるのではないか」と述べ、中国側の意図についてはわからないとしています。

またアメリカが今回、気球を確認したと公表したことについては「戦略的コミュニケーションの一種で、中国がこのようなオペレーションをしていることをアメリカは理解し、関心を持っている。もしこの情報収集が軍事的目的だったり、アメリカの利益を損なうような目的で使われることがあったりすればアメリカは対処するという意志を示したのだと思う」と話しています。

気候力学の専門家「中国からアメリカ大陸到達 不可能ではない」

アメリカ本土の上空で中国のものとみられる偵察用の気球が確認されたことについて、気候力学が専門の東京大学先端科学技術研究センターの中村尚教授は「上空にはジェット気流という西風が吹いているので、気球がジェット気流に乗れば太平洋をまたいで中国からアメリカ大陸に到達するのは不可能ではない」という見方を示しました。

中村教授によりますと、春先に中国から日本にも飛来する黄砂は、ジェット気流で中国から1万キロ以上離れたアメリカ大陸まで到達することも確認されているということで、気球のように浮力があるものがアメリカ大陸に到達することは考えられるとしています。

また、冬はジェット気流が強い季節だとしたうえで「ジェット気流に乗れば4日ほどで中国から北アメリカに到達するという見積もりができる」と指摘しています。

さらに「数日先までの世界的な大気の状態は多少誤差はあっても予測することができる。そのデータを入手して、どの高さに気球を飛ばし、どのように流されるのか計算することは不可能ではない」と話しています。