輸出額は2012年には4497億円でしたが、10年連続で増え続け、3.1倍に拡大しました。
去年は外国為替市場で円安が進んだため、海外市場で日本の農産物などの割安感が高まったほか、コロナ禍で落ち込んだ外食需要が欧米や中国などで回復し、輸出額を押し上げました。

農林水産物と食品の輸出額 過去最高に ホタテ貝が品目別トップ
去年1年間の農林水産物と食品の輸出額は1兆4148億円と、前の年を14%上回り、過去最高となりました。欧米や中国で外食需要が回復していることや、円安によって割安感が高まっていることなどが要因です。
品目別で輸出額が最も多かったのは「ホタテ貝」で、前の年より40%以上増えて910億円でした。
記事後半では、専門家に輸出をさらに拡大するために必要な取り組みなどについて聞いています。
農林水産省によりますと、去年1年間の農林水産物と食品の輸出額は、前の年を14.3%上回り、1兆4148億円となりました。


品目別では
▽「ホタテ貝」が前の年より42.4%増えて910億円
▽日本酒やウイスキーなどの「アルコール飲料」が21.4%増えて1392億円
▽「ソースなどの調味料」が11.2%増えて483億円などとなっています。
政府は輸出額を2025年までに2兆円に増やす目標を掲げていて、目標を前倒しで達成できるよう、新たな戦略をまとめています。
このなかでは、海外で人気が高く高値で取り引きされる「にしきごい」など、およそ30品目を重点品目に指定し、生産者や産地への支援を強化するなどとしていて、輸出を拡大し農業の基盤強化につなげたい考えです。
▽「ホタテ貝」が前の年より42.4%増えて910億円
▽日本酒やウイスキーなどの「アルコール飲料」が21.4%増えて1392億円
▽「ソースなどの調味料」が11.2%増えて483億円などとなっています。
政府は輸出額を2025年までに2兆円に増やす目標を掲げていて、目標を前倒しで達成できるよう、新たな戦略をまとめています。
このなかでは、海外で人気が高く高値で取り引きされる「にしきごい」など、およそ30品目を重点品目に指定し、生産者や産地への支援を強化するなどとしていて、輸出を拡大し農業の基盤強化につなげたい考えです。
何が?なぜ?伸びた
国や地域別で輸出額がもっとも多かったのは
▽中国の2783億円で前の年より25.2%増えました。
▽次いで香港が2086億円(-4.8%)
▽アメリカが1939億円(+15.2%)などとなっています。
品目別では
▽「ホタテ貝」が910億円ともっとも多く、前の年に比べて42.4%
▽「ぶり」も362億円と32.7%増えました。
アメリカや中国で外食需要が回復したほか、アメリカへは冷凍した「ぶり」の輸出が好調だったということです。
▽中国の2783億円で前の年より25.2%増えました。
▽次いで香港が2086億円(-4.8%)
▽アメリカが1939億円(+15.2%)などとなっています。
品目別では
▽「ホタテ貝」が910億円ともっとも多く、前の年に比べて42.4%
▽「ぶり」も362億円と32.7%増えました。
アメリカや中国で外食需要が回復したほか、アメリカへは冷凍した「ぶり」の輸出が好調だったということです。
“ホタテ さらに販路拡大を”

日本のホタテが人気の理由は貝柱の大きさです。
農林水産省によりますと、アメリカなどでとれるホタテは日本とは種類も異なり比較的小ぶりだということで、日本のホタテに人気が集まり、輸出が増加しているということです。
このうち、養殖ホタテの生産が日本一の青森県では、円安を追い風にさらに販路を広げようと取り組んでいます。
青森市の水産加工会社は、加工したホタテをアメリカや東南アジアなどに毎年200トンから300トン程度輸出しています。
急速冷凍することで鮮度を維持したまま加工できることなどが評価されていて、円安も追い風になって、今年度の輸出額は前の年度の1.5倍の4億円を超える見通しです。
このうち、養殖ホタテの生産が日本一の青森県では、円安を追い風にさらに販路を広げようと取り組んでいます。
青森市の水産加工会社は、加工したホタテをアメリカや東南アジアなどに毎年200トンから300トン程度輸出しています。
急速冷凍することで鮮度を維持したまま加工できることなどが評価されていて、円安も追い風になって、今年度の輸出額は前の年度の1.5倍の4億円を超える見通しです。

この会社では来年度以降、輸出額を5億円程度に増やす目標を掲げていて、そのためヨーロッパへの販路を拡大しようとしています。
1月はフランス・リヨンで開かれた食品展示会に参加し、試食用のホタテがすべてなくなるほど、現地のシェフやバイヤーなどの反応がよかったということです。
このため会社では国際的な認証を取得し付加価値を高めるほか、EUの衛生基準に適合したホタテを確保するなどして、輸出を拡大したい考えです。
1月はフランス・リヨンで開かれた食品展示会に参加し、試食用のホタテがすべてなくなるほど、現地のシェフやバイヤーなどの反応がよかったということです。
このため会社では国際的な認証を取得し付加価値を高めるほか、EUの衛生基準に適合したホタテを確保するなどして、輸出を拡大したい考えです。

「山神」の穐元美幸専務は「県産ホタテの品質のよさを世界の人に理解してもらい、最終的に青森県や日本に興味を持ってもらえたらうれしい」と話しています。
“日本酒 さらに輸出拡大を期待”
また「アルコール飲料」は中国や欧米のほか、シンガポール向けが伸びていて
▽「ウイスキー」が560億円と前の年に比べて21.5%
▽「日本酒」は474億円と18.2%増えました。
▽「ウイスキー」が560億円と前の年に比べて21.5%
▽「日本酒」は474億円と18.2%増えました。
このうち仙台市の酒造会社は、欧米やアジアなどに日本酒を輸出していて、新型コロナの水際対策の緩和によって、さらに輸出が拡大することを期待しています。

江戸時代に創業し、300年以上続く仙台市の酒造会社は、およそ10年前から輸出に取り組み、欧米やアジアなどおよそ20の国と地域に出荷しています。
海外では主に高級和食店で料理とともに日本酒を楽しむ消費者が多いことから、輸出するのは純米大吟醸など高価格帯のものが中心で1本3万円する日本酒も人気だということです。
海外では主に高級和食店で料理とともに日本酒を楽しむ消費者が多いことから、輸出するのは純米大吟醸など高価格帯のものが中心で1本3万円する日本酒も人気だということです。

会社では海外でのニーズを意識し、味の違いが見て分かるよう英語表記のラベルを作成しているほか、現地で覚えてもらいやすいよう、ボトルはワインと同じような形にしています。
今では売り上げの3割を輸出向けが占めているということで、新型コロナの水際対策の緩和によって外国人旅行者が購入し、さらに輸出が拡大することを期待しています。
今では売り上げの3割を輸出向けが占めているということで、新型コロナの水際対策の緩和によって外国人旅行者が購入し、さらに輸出が拡大することを期待しています。

「勝山酒造」の伊澤平蔵社長は「政府の水際対策の緩和で海外のお客も急激に増えている。今後は海外でイベントを再開するなどして輸出をさらに増やしたい」と話しています。
さらに「野菜や果物」は、香港や台湾で贈答用や家庭用の需要が高まっていることから
▽「りんご」が187億円と前の年に比べて15.4%
▽「ぶどう」が53億円と16.4%
▽「いちご」が52億円と29.1%増えました。
政府は2年後に輸出額を2兆円に拡大する目標の達成に向けて、コメや牛肉などを「重点品目」に指定し、生産者や産地への支援を強化することにしています。
▽「りんご」が187億円と前の年に比べて15.4%
▽「ぶどう」が53億円と16.4%
▽「いちご」が52億円と29.1%増えました。
政府は2年後に輸出額を2兆円に拡大する目標の達成に向けて、コメや牛肉などを「重点品目」に指定し、生産者や産地への支援を強化することにしています。

去年12月には、この品目に海外で人気が高く高値で取り引きされる「にしきごい」を加え、重点品目はあわせて29にのぼっています。
また政府は、農産物のブランド品種が海外に流出するのを防ぐため、海外での品種登録や、違法な栽培を防ぐための対応などを一元的に行う組織を設置することにしています。
国内では人口減少によって市場の縮小が懸念されていますが、政府としては産地の輸出の取り組みを後押しすることで、農業の基盤強化につなげたい考えです。
また政府は、農産物のブランド品種が海外に流出するのを防ぐため、海外での品種登録や、違法な栽培を防ぐための対応などを一元的に行う組織を設置することにしています。
国内では人口減少によって市場の縮小が懸念されていますが、政府としては産地の輸出の取り組みを後押しすることで、農業の基盤強化につなげたい考えです。
盆栽の輸出 海外のバイヤーの来日で増加に期待
海外で人気の高い盆栽の輸出を手がける、さいたま市の貿易会社。
新型コロナの感染拡大前は海外から来たバイヤーを連れて盆栽の生産者のもとを訪れ、商品の説明などを行っていました。
新型コロナの感染拡大前は海外から来たバイヤーを連れて盆栽の生産者のもとを訪れ、商品の説明などを行っていました。

しかし、この2年間は新型コロナウイルスの影響で海外のバイヤーが来日できなかったことから、オンラインで販売してきました。
ただ実物を直接見ることができないということもあって、この2年間は年間の盆栽の輸出額が3年前に比べ、それぞれ2割ほど減少したということです。
こうした中、ことしはこれまで取り引きのなかった会社も含め、4月以降およそ10社のバイヤーが来日することになっているということです。
またEU=ヨーロッパ連合への黒松盆栽の輸出が令和2年に解禁されたことも後押しとなり、会社ではことしの盆栽の輸出額は去年を上回るとみています。
ただ実物を直接見ることができないということもあって、この2年間は年間の盆栽の輸出額が3年前に比べ、それぞれ2割ほど減少したということです。
こうした中、ことしはこれまで取り引きのなかった会社も含め、4月以降およそ10社のバイヤーが来日することになっているということです。
またEU=ヨーロッパ連合への黒松盆栽の輸出が令和2年に解禁されたことも後押しとなり、会社ではことしの盆栽の輸出額は去年を上回るとみています。

「盆栽ネットワーク・ジャパン」の中水義弘社長は「盆栽は自分の目で見て触って納得した上で買うのが本来の姿なので、バイヤーに来ていただければ販売数も増えると思う」と話していました。
野村農相「たいへん明るいニュースだ」

去年1年間の農林水産物と食品の輸出額が過去最高となったことについて、野村農林水産大臣は閣議のあとの記者会見で「たいへん明るいニュースだ。2025年に2兆円という目標の達成に向けて、官民一体となった取り組みをさらに進めていきたい」と述べました。
そのうえで「国内で少子化が進み消費が伸びない中では、海外のマーケットを活用しないと日本の農業生産は伸びない。これからは、現地の需要や規制内容の情報収集のほか、現地の事業者との連携強化に軸足を置く『マーケットイン』の取り組みを進めていく」と述べ、輸出先のニーズにあった商品開発や出荷の体制を構築し、輸出拡大につなげる考えを示しました。
そのうえで「国内で少子化が進み消費が伸びない中では、海外のマーケットを活用しないと日本の農業生産は伸びない。これからは、現地の需要や規制内容の情報収集のほか、現地の事業者との連携強化に軸足を置く『マーケットイン』の取り組みを進めていく」と述べ、輸出先のニーズにあった商品開発や出荷の体制を構築し、輸出拡大につなげる考えを示しました。
【専門家Q&A】輸出拡大のカギは?
農林水産物と食品の輸出をさらに拡大するために必要な取り組みや今後の見通しについて、JETRO=日本貿易振興機構の石田達也主幹に聞きました。

Q.さらに輸出を拡大するために必要なことは何ですか?
A.いまは中国、香港、台湾、それにアメリカなどへの輸出が多いのですが、さらにすそ野を広げる必要があります。
いまも輸出に取り組んでいる企業はさらに新しい市場に、また国内向けの取り引きが中心の企業は、ぜひ新たに挑戦してみてほしいです。
いまも輸出に取り組んでいる企業はさらに新しい市場に、また国内向けの取り引きが中心の企業は、ぜひ新たに挑戦してみてほしいです。
Q.すそ野を広げるにはどのようなことが必要ですか?
A.大事なのは「付加価値の見える化」です。
日本の商品だから安心です、おいしいですというだけでなく、プラスアルファの付加価値を分かりやすい形で提供する必要があります。
日本の商品だから安心です、おいしいですというだけでなく、プラスアルファの付加価値を分かりやすい形で提供する必要があります。

例えば名古屋市の食品メーカーは、欧米向けに無添加・無着色のわさびを輸出しています。
日本の伝統的な食品というだけでなく、無添加や無着色といった現地の消費者に受け入れられる付加価値をつけることで、販路開拓につなげています。
日本の伝統的な食品というだけでなく、無添加や無着色といった現地の消費者に受け入れられる付加価値をつけることで、販路開拓につなげています。

ほかにも鹿児島県の焼酎メーカーは、輸出用のボトルをワインボトルのようなデザインに変えたり、アルコール度数を高めたりすることで、欧米のバー向けの販売を強化しています。
日本では見慣れないデザインですが、商品が良いものかどうかを決めるのは作り手ではなく現地の消費者です。海外の市場に求められるものを作る「マーケットイン」の発想が重要です。
日本では見慣れないデザインですが、商品が良いものかどうかを決めるのは作り手ではなく現地の消費者です。海外の市場に求められるものを作る「マーケットイン」の発想が重要です。
Q.政府は輸出額増の目標掲げているが今後の見通しは?
A.一概には言えませんが、輸出全体は伸びていく方向にあると思います。企業によっては1年以上の時間をかけて輸出を実現しているところもあります。
いまは新型コロナの感染拡大前から輸出に取り組んでいる企業の成果が少しずつ出てきている時期だと思います。ですので今後も地道な取り組みをひとつずつ積み上げていくことが大切です。
こうした取り組みが広がれば、輸出額2兆円も近づいてくると思います。
いまは新型コロナの感染拡大前から輸出に取り組んでいる企業の成果が少しずつ出てきている時期だと思います。ですので今後も地道な取り組みをひとつずつ積み上げていくことが大切です。
こうした取り組みが広がれば、輸出額2兆円も近づいてくると思います。