少子化対策「N分N乗方式」って?導入されたら納税額は変わる?

少子化対策をめぐって、フランスで採用されている制度で、子どもなど扶養家族が多いほど世帯の所得税の負担が軽減される、いわゆる「N分N乗方式」(エヌぶんエヌじょう)の導入を求める声が出ていて、2日の国会でも議論となりました。
所得税にN分N乗方式が導入された場合、納税額はどう変わるのでしょうか。
詳しくまとめました。

夫婦と子ども2人の家庭で見ていきます。
夫婦共働きで収入から保険料などを控除した課税対象の所得が1人は400万円。
配偶者は200万円の合わせて600万円の場合です。

日本の所得税は、個人単位で課税するため夫婦の納税額は合わせて47万5000円となります。

同じ家庭がN分N乗方式になったらどうなるか。

「N分N乗方式」の場合、世帯単位で課税するのが大きな違いです。
この方式では、1世帯分の所得を合算したうえで、子どもを含めた人数「N」で総所得を割り、その数字を元に1人当たりの税額を計算。
そこに人数「N」を再びかけて所得税の納税額が決まる仕組みです。

同じ夫婦と子ども2人の家庭がN分N乗方式になったらどうなるか。
制度を導入しているフランスと同様に2人目の子どもまでは0.5人と計算すると、「N」に当たる数字は「3」となります。
これで所得税を計算すると、今の納税額より16万7500円減る計算です。

一方、夫婦子ども2人で、夫婦のどちらか1人だけが働くいわゆる「片働き」で所得が同じ600万円の場合、所得税は77万2500円となります。
こちらの家庭の場合もN分N乗方式では30万7500円が所得税になるので、所得税は46万5000円減る計算です。

財政や税制の専門家は

財政や税制が専門の一橋大学の佐藤主光教授は「日本の所得税は累進課税になっているので、家族の中で所得を分散した方が税金が安くなる。子育て世帯にとって有利な形で所得税を再構築したいという意向があるのではないか」と指摘しました。

そのうえで「『N分N乗方式』は、累進課税が機能しにくくなる。所得が高い人たちが有利になり、所得の再分配機能が低下することにならざるをえない。さらに、所得税の税収を変えないということであれば、税率の見直しまで踏み込むこととなる。導入にはかなり時間がかかるのではないか」と述べ、導入には課題が多いと指摘しています。