“年収の壁”「公平性念頭に対応について議論深めたい」厚労相

一定の年収を超えると配偶者の扶養を外れる、いわゆる「年収の壁」をめぐり、加藤厚生労働大臣は衆議院予算委員会で、公平性を担保しながら、どのような対応が可能か、議論を深めていきたいという考えを示しました。

この中で加藤厚生労働大臣は、いわゆる「年収の壁」をめぐり「社会保険の『130万円の壁』について、意識せずに働くことが可能になるよう、短時間労働者への適用拡大を逐次進めている」と説明しました。

そのうえで「単身で同じように働いている人とのバランスをどうするかや、国民年金などの加入者で基準に満たない年収でも保険料を負担している人もいる。社会保障の公平性は非常に大事だと考えており、これも念頭におきながら、適用拡大をはじめとした取り組みを中心に、さらにどういう対応が可能なのか、議論を深めたい」と述べました。

また、卒業式でのマスクの着用について、永岡文部科学大臣は「今の指針では、マスクをしなければ出席したくないという子どもはマスクをし、マスクは外して行くと家庭で決めた子どもは外しての参加となろうかと思う。卒業式にマスクを着用するかどうかが、現場の教師の責任とならないように、速やかに検討していく」と述べました。

このほか、立憲民主党が、男性の育休取得を進めるため、育児休業給付金の支給上限を撤廃するよう求めたのに対し、加藤厚生労働大臣は「社会保障の公平性や再分配機能はすごく大事で、慎重に検討すべきだ」と述べました。

「年収の壁」とは

配偶者の扶養に入っているパートやアルバイトなどの労働者は、年収が130万円を超えると扶養から外れ、自身で厚生年金などの社会保険に加入することになります。

また、年収が130万円を超えていない短時間労働者でも、およそ106万円を超えると、勤務時間や勤務先の企業規模などによっては同様に社会保険に加入することになっています。

加入によって新たに保険料を負担しなければならなくなり、手取りの収入が減るため、基準となる収入を超えないように働く時間を抑えるケースがあることから、「年収の壁」と呼ばれています。

政府は、「壁」を意識せずに働けるよう、企業規模の要件を緩和するなどして、厚生年金の加入対象を拡大し受け取る年金が増えるなどのメリットがあると、理解を求めています。

公明 山口代表「年収の壁 周知 政府の取り組み足りず」

いわゆる「年収の壁」をめぐり、公明党の山口代表は、所得税の「配偶者控除」が受けられる年間の給与収入が、5年前から「150万円以下」に引き上げられていることが関係者に理解されておらず、政府の取り組みが足りないと苦言を呈しました。

いわゆる「年収の壁」のうち、所得税の「配偶者控除」は、パートで働く配偶者がより長い時間働くことができるよう、5年前、控除が受けられる年間の給与収入が、それまでの「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げられました。

これについて、山口代表は、党の中央幹事会で「制度を修正したが、現場では、働く人も、雇う側も『103万円の壁』があるという意識が変わっていない。もっと周知徹底する必要があるが、政府の取り組みが足りない」と苦言を呈しました。

そのうえで、配偶者の扶養を外れ、社会保険の負担が生じる「130万円」や「106万円」の壁があることも踏まえ、「そうした『壁』を意識しないで働けるような状況をどうつくるか、いろいろ課題があるので、検討していく必要がある」と述べました。