使い捨てカイロの意外な活用法 消臭から水質改善まで

使い捨てカイロの意外な活用法 消臭から水質改善まで
1月の記録的な寒波では、立往生した車や電車で使い捨てカイロに救われたという声がSNSなどで相次ぎました。

ことしは例年よりも売れているというカイロ。
最近は、使い終わったあとの活用法も注目を集めています。

そのカイロ、捨てるのちょっと待ってください。

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今シーズンは年が明けても売れている

「なんか、寒波がくるらしいのでカイロ購入しました。備蓄しとかないとね」

1月中旬、使い捨てカイロの写真と一緒にこうツイートした女性。
購入した背景には、万が一に備える気持ちがあったそうです。
「停電になってしまったらと考えてもいて、避難グッズとしての気持ちもありました。購入は2年ぶりくらいです」
大阪市の大手メーカーによりますと、使い捨てカイロの売り上げは例年10月ごろから年末にかけてピークを迎えますが、今シーズンは年が明けてからも売れ行きが好調だということです。
メーカー担当者
「寒波の影響もあって売れています。冬場の災害時の備えとして買っていく人もいるようです」
備えは大事ですが、使い切れなかった場合は次のシーズンまで置いておいても大丈夫?
「使い捨てカイロには使用期限があり、製品によりますがおおむね3年ほどです。期限が過ぎると持続時間や温度に影響が出る可能性はありますが、使用いただくこともできます」

スマホが劣化するかも? カイロであたためはNG

使い捨てカイロについて調べていると、ネット上で気になる書き込みを見つけました。

「寒いとスマホのバッテリーの減りが早い。カイロでスマホをあたためると長持ちする」
気温がスマートフォンのバッテリーの消費に影響するのは本当なようです。通信大手のKDDIが実験した結果を公表しています。
暖房の効いた室温の25度に比べてマイナス20度では電源が落ちるまで半分以下に短くなっています。

日本では気温がマイナス20度まで下がることはほとんどありませんが、今の時期は夏場に比べてバッテリーが早く減ると考えられるのです。

では、カイロでスマホをあたためると減るのを抑えられるの?
KDDI担当者
「減りを少なくすることはできるかもしれませんが、その方法はおすすめできません」
スマートフォンのバッテリーは寒さだけではなく実は高い温度にも弱いそうです。

カイロと一緒にポケットに入れたりしてあたためることで性能が劣化してしまったり、まれなケースとして発火の危険もあるということです。

それでも先日の立往生のような状況になれば、少しでもバッテリーをもたせたいと思うもの。どうすればいいのでしょうか。
KDDI担当者
「どうしても必要なときにはスマートフォンの温度が高くなりすぎないように気をつけてださい。だいたい体温と同じくらいの35度をこえないようにするのがポイントです」

開封したあとの工夫で長持ち

使い方のお役立ち情報でもう1つ。

通勤や通学で使ったあと、まだ温かいけど屋内ではもう使わないなあ、もったいないなあ。そんな風に思ったことはありませんか。

実はカイロは発熱するのを途中で止めて、あとで使うことができるそうです。

暮らしの知恵などについてこれまで4000以上の家庭にアドバイスしてきたという岩嵜紀子さんに聞きました。
家事代行サービス「ベアーズ」指導教官 岩嵜紀子さん
「カイロは空気に触れて酸化反応を起こすことであたたかくなるので、密閉袋に入れて空気を抜くと酸化反応が止まり、すぐに冷めます。再び袋を開けると、またあたたかくなり使うことができるのです」
「もともと入っていた袋に戻ったようにイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。使える合計時間がそのまま伸びるわけではありませんが、分けて使えるのはありがたいですよね」

使い終わったカイロ こんな使い方も!?

ところで使い終わったあとのカイロ、皆さんはどうしていますか?

そのまま捨てるのはもったいないと思う人が多いようで、再利用法もネット上で盛り上がっています。

実際、再利用はできるのでしょうか。
▽消臭剤・除湿剤として使う
「使い捨てカイロに含まれる活性炭には臭いや湿気を吸収する作用があります。靴の中や下駄箱など、臭いや湿気の気になる場所に置くと効果が期待できます。ただ市販の消臭剤に比べると活性炭の量が少ないので、私の経験では1週間ほどで効果が感じられなくなります」
▽土壌改良に使う
「使い捨てカイロにはバーミキュライトという土壌を改良する作用がある成分も含まれています。注意してほしいのは大半のカイロには食塩として使われる塩化ナトリウムが含まれているということです。塩化ナトリウムは植物に悪影響を与えてしまうので、コーヒーフィルターなどを使ってろ過してから使用する方法もありますが、何回やれば完全に取り除けるのかははっきりしません」
最近は塩化ナトリウムの代わりに、肥料としても使われている塩化カリウムを配合し、そのまま土に返せるようにしているカイロも販売されているので、土壌改良に使いたい人はそうした製品を選ぶといいとのことでした。
▽陶芸にも!?

こんなおもしろい使い方をする人も。陶芸で使う粘土にカイロの中身を混ぜた作品がこちら。
作品を作った陶芸作家 吉岡美緒さん
「家にあるもので作品にバリエーションを出せないかと思っていたところカイロを使うという話を思い出しました。渋い雰囲気が出て、手軽に作風に幅を出せたのがよかったです」
皆さん、そのまま捨てられるはずのカイロをいろいろな方法で活用しています。

一方で気になるのが事故やトラブルです。NITE=製品評価技術基盤機構によると、カイロに関する事故は低温やけどに関するものがほとんど。

使用中に肌に直接貼り付けたり、体の同じ場所を長時間あたためたりしたことによるもので、使用後の再利用による事故は把握していないとのこと。

ただし子どもが誤って飲み込まないよう、袋を開ける場合は手の届かないところで行い、再加熱するおそれもあることを念頭に靴などに入れる場合は、冷えきったものを使うようにしてほしいとしています。

食品大量廃棄で罪悪感… カイロで“地球をキレイに”

全国的に共感が広がっている、新たな再利用法もあります。
この茶色い固形物は使用済みカイロの成分でできていて、池や川などに入れるとヘドロから発生する物質と反応して水質を改善する作用があるというもの。

大阪の会社が4年ほど前に製品化しました。

製品化した山下崇さんはかつてコンビニオーナーで、大量に廃棄される食べ物に心を痛めていたそうです。
Go Green Group 代表取締役 山下崇さん
「なにか環境に良いことをしたいと考えていたとき、目についたのが“使い捨てカイロを使ってヘドロを除去する”という研究でした。捨てるもので環境改善…これだ!と思いました」
山下さんはすぐに、研究を進めていた東京海洋大学の佐々木剛教授に会いに行きます。
佐々木剛教授
「すごく熱心に環境のことを語っていて応援したいと思いました。ぜひ研究結果を活用してもらえればと話しました」
使い終わったカイロは、地元の企業や学校などに協力してもらって回収。
「開封の儀」と名前をつけて子どもたちと一緒にカイロの中身を開ける作業を行うなど、次世代の環境教育にも力を入れました。

始めは小さなスペースで手弁当で始まった事業でしたが、取り組みに共感した人が広い倉庫や工場を貸してくれ、回収ボックスを置かせてくれる店も増えていきました。

今では年間約40トンものカイロを回収できるまでになったほか「国連海洋科学の10年」に採択された佐々木教授提唱のプロジェクトにも参加しているそうです。
Go Green Group 代表取締役 山下崇さん
「大変ありがたいことにカイロの回収は十分にできるようになりました。これからの課題は、この製品を使ってくれるところを増やすこと。海や川で使うには行政などの許可が必要な場合もあるので、連携して進めていきたいです」
実は反響が大きすぎて、回収ボックスに大量のカイロが持ち込まれ対応に苦慮することもあるそうです。

持ち込む際は、家庭で使ったぶんくらいにとどめるほうがよさそうです。

まだまだ寒い日が続きます。使い捨てカイロの活用法、ぜひ参考にしてください。
(ネットワーク報道部 野呂一輝 廣岡千宇 松原圭佑 池田侑太郎)