
【証言】フィリピン拠点の特殊詐欺の実態を知る人は
国内で相次いでいる一連の広域強盗事件に関連して、日本の警察当局は、別の特殊詐欺事件などに関わったとして逮捕状を取っている渡邉優樹容疑者や今村磨人容疑者ら4人の身柄を引き渡すよう、フィリピン側と詰めの調整を続けています。
4人は、フィリピンを拠点に日本に向けて詐欺の電話をかけていたグループのメンバーで、「ルフィ」などと名乗って指示を出していた疑いがあり、一連の被害はおよそ2300件、35億円に上るということです。
フィリピンを拠点とした特殊詐欺の実態や、容疑者らの過去について証言をまとめました。
フィリピン拠点の特殊詐欺「研修」に参加した男性が証言
4人の容疑者のうち、渡邉容疑者が首謀者とみられている、フィリピンに拠点があった特殊詐欺グループに加わるための“研修”に参加したという男性が取材に応じました。

男性は、自身が被害に遭ったことがあるため詐欺の実態を知りたいと、2019年に「闇バイト」に応募したといいます。
闇バイトのサイトには「電話オペレーターの仕事。月に100万円稼げる」といった内容が書かれていて、グループからは時間がたつとメッセージが消えるアプリでのやり取りを求められました。
フィリピンに到着して連れて行かれたのは都市部にある廃ホテルで、10代後半から高齢者まで30人以上が1グループ8人ほどに分かれて電話をかけていて、ほかに数人のとりまとめ役がいたということです。
闇バイトのサイトには「電話オペレーターの仕事。月に100万円稼げる」といった内容が書かれていて、グループからは時間がたつとメッセージが消えるアプリでのやり取りを求められました。
フィリピンに到着して連れて行かれたのは都市部にある廃ホテルで、10代後半から高齢者まで30人以上が1グループ8人ほどに分かれて電話をかけていて、ほかに数人のとりまとめ役がいたということです。

男性は「全身や顔に入れ墨を入れた人もいた。一番若いのは19歳で高校出たばかりくらいの人もいた。北海道出身の人が多いということは耳にしたし、『ここで一旗揚げたいとか、100万円をもうけて帰りたい』とかそういう話をしていた」と振り返りました。

男性は到着した日から3日間、詐欺の電話をかける手順などについて教えられたといい「ほかの人がかけている電話の会話をじっと聞いていることが多かった。銀行員や警察官、金融庁の職員を名乗って次々に電話をかけていた。電話をかける先の名簿は一日に2、3回は変わっていたと思う。名前と住所と電話番号が書かれていて、高齢者が多いと聞いた。グループの幹部は私たち新人には優しく接していたが、成績をあげられない人には『技術が足りない』とかなりきつく叱責していた」と話しました。
さらに「金曜日にはその週の締めをやっていて『成績優秀者』の名前を呼んで表彰していた。今週は20万とか30万もうけたと言って羽振りのよさそうな人もいた。その先には被害者がいるわけでやるせない気持ちが強くなった」と振り返りました。
拠点の中は自由に動き回れて鍵もかかっておらず、幹部の男が「現地の警察や入管の幹部と知り合いだから捕まる心配はない」と説明していたということです。
そして男性は、土曜日にカジノが併設されている別のホテルに連れて行かれた際に拠点では見なかった別の幹部数人に会ったと証言しました。
男性を含む「かけ子」の新しいグループをつくることになり、顔合わせを行ったということですが、そこに「ハオ」と呼ばれる人物がいたと明かしました。
さらに「金曜日にはその週の締めをやっていて『成績優秀者』の名前を呼んで表彰していた。今週は20万とか30万もうけたと言って羽振りのよさそうな人もいた。その先には被害者がいるわけでやるせない気持ちが強くなった」と振り返りました。
拠点の中は自由に動き回れて鍵もかかっておらず、幹部の男が「現地の警察や入管の幹部と知り合いだから捕まる心配はない」と説明していたということです。
そして男性は、土曜日にカジノが併設されている別のホテルに連れて行かれた際に拠点では見なかった別の幹部数人に会ったと証言しました。
男性を含む「かけ子」の新しいグループをつくることになり、顔合わせを行ったということですが、そこに「ハオ」と呼ばれる人物がいたと明かしました。

別の関係者によりますと、渡邉容疑者は「ハオ」と名乗っていたという情報もあるということです。
男性は「幹部は身なりがよくて指輪も高級だった。『ハオ』と呼ばれる男は柔和な表情で、ひげはなかったので、今の写真とは違いますが、輪郭や目は渡邉容疑者に似ている気がする。別の幹部の様子からもハオがトップだという感じがした」と話しました。
男性は「幹部は身なりがよくて指輪も高級だった。『ハオ』と呼ばれる男は柔和な表情で、ひげはなかったので、今の写真とは違いますが、輪郭や目は渡邉容疑者に似ている気がする。別の幹部の様子からもハオがトップだという感じがした」と話しました。

その後「月曜日からかけ子の仕事を始めてもらう」と言われ、男性は犯罪には加担したくないと日本に戻ってきたということです。
一連の強盗事件で渡邉容疑者らが「ルフィ」や「キム」などと名乗って指示を出していた疑いがあることについて、男性は「事実だとすれば、特殊詐欺が知れわたって実入りがだんだん悪くなったからではないか」と話していました。
一連の強盗事件で渡邉容疑者らが「ルフィ」や「キム」などと名乗って指示を出していた疑いがあることについて、男性は「事実だとすれば、特殊詐欺が知れわたって実入りがだんだん悪くなったからではないか」と話していました。
交際相手が日本から現金を運ぶ
また、渡邉優樹容疑者について、新たな事実が判明しました。
4年前、当時の交際相手(32)が、特殊詐欺で得たとみられる現金を日本からフィリピンにいる容疑者のもとに運んでいたことがわかりました。
4年前、当時の交際相手(32)が、特殊詐欺で得たとみられる現金を日本からフィリピンにいる容疑者のもとに運んでいたことがわかりました。

警察などによりますと、交際相手は、2019年11月、警察官などをかたって高齢者にうその電話をかけ、キャッシュカードを盗んだとして逮捕されました。
その後、複数の特殊詐欺事件に関わったとして起訴され、2020年10月に実刑判決が言い渡されています。
大阪地裁の判決によりますと、2019年3月、フィリピンのマニラを訪れた際に実業家を名乗る渡邉容疑者と出会い、交際を始めました。
4月、容疑者の誘いで再びマニラを訪れ、その際、日本から持ち出した現金2000万円を容疑者に渡したとされています。
その後、複数の特殊詐欺事件に関わったとして起訴され、2020年10月に実刑判決が言い渡されています。
大阪地裁の判決によりますと、2019年3月、フィリピンのマニラを訪れた際に実業家を名乗る渡邉容疑者と出会い、交際を始めました。
4月、容疑者の誘いで再びマニラを訪れ、その際、日本から持ち出した現金2000万円を容疑者に渡したとされています。

この頃から交際相手は、SNSや秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」で「田中」という偽名を使って特殊詐欺の受け子をリクルートしていたということです。
さらに、5月下旬ごろからは、容疑者との関係やリクルート役としての実績から、現金を運搬したり回収したりする役も担うようになりました。
2019年だけで7回フィリピンに渡り、警察の捜査では、集めた金を数千万円ずつ運んでいたとみられるということです。
さらに、5月下旬ごろからは、容疑者との関係やリクルート役としての実績から、現金を運搬したり回収したりする役も担うようになりました。
2019年だけで7回フィリピンに渡り、警察の捜査では、集めた金を数千万円ずつ運んでいたとみられるということです。

容疑者と出会ってから8か月後、大阪府警に逮捕され、当時、警察が公開した受け子などを勧誘するためのマニュアルには「『稼げる仕事』を探している人をネットで検索してDM送りまくってください」などと書かれています。

判決では「グループはフィリピンにも拠点を置いていた。被告は犯罪収益を確実に回収することに貢献し、重要な役割を果たした」などとして懲役4年6か月の実刑判決が言い渡されました。
捜査関係者によりますと、当時、このグループによるものとみられる特殊詐欺の被害が全国で多発していて、交際相手への捜査で当時、マニラにいた渡邉容疑者の存在がすでに浮上していたということです。
捜査関係者によりますと、当時、このグループによるものとみられる特殊詐欺の被害が全国で多発していて、交際相手への捜査で当時、マニラにいた渡邉容疑者の存在がすでに浮上していたということです。
今村容疑者の中学時代の同級生「不良と呼ばれていた」
広域強盗事件で指示を出していた疑いがあり、別の特殊詐欺事件などに関わったとして警視庁が逮捕状を取っている今村磨人容疑者(38)の中学校の同級生がNHKの取材に応じました。

今村容疑者は昭和59年生まれで札幌市内の小、中学校に通い、関係者によりますと、その後、札幌の繁華街・ススキノで同じくフィリピンで拘束されている渡邉優樹容疑者らと出会ったとみられています。
今村容疑者の中学校の同級生の女性は、当時の様子ついて「中学では不良と呼ばれていた人でした。他校の生徒とけんかしていたという話を聞いたことがあります」と話していました。
今村容疑者の中学校の同級生の女性は、当時の様子ついて「中学では不良と呼ばれていた人でした。他校の生徒とけんかしていたという話を聞いたことがあります」と話していました。

一方で、サッカー部に所属していたということで「熱心に取り組んでいました。サッカーが好きだったんだと思います。見た目もすごくシュッとしていて、ファンクラブまではいきませんが、彼を好きな女子生徒もいたと思います」と話していました。
その後、ススキノで客引きなどをしているという話を聞いたことがあるということで、成人式ではスーツを着ていて太った印象だったということです。
現在の今村容疑者の写真をみて「太っていて全く別人だと思いました。悪いことは悪いと判断してやったことは償ってほしいです」と話していました。
その後、ススキノで客引きなどをしているという話を聞いたことがあるということで、成人式ではスーツを着ていて太った印象だったということです。
現在の今村容疑者の写真をみて「太っていて全く別人だと思いました。悪いことは悪いと判断してやったことは償ってほしいです」と話していました。
小中学校の後輩「優しくてかっこいい、目立つ存在」
今村磨人容疑者(38)と同じ札幌市内の小・中学校に通っていた後輩の女性は、当時の印象について「学校で会ってあいさつをすると話しかけてくれて後輩にも女性にも優しくて、かっこいいという印象で私も憧れていた先輩でした。当時、サッカー部に所属していて、エースというか目立つ存在だったと思います」と話していました。
そのうえで「学年が違うので不良だというイメージはあまりないですが、同級生をいじめているという話を聞いたことがあります」と話しました。
また、卒業後についてはわからないとしたうえで「私が高校生の時に街で見かけて声をかけられましたが、金髪になっていてちょっと不良みたいだったので怖くなって逃げました」と話していました。
事件については「本当にショックです。札幌の人が関わっているのは報道で知っていましたが、まさか知っている人だとは思いませんでした。優しい印象もあるので、なんでこうなったのだろうと思います」と話していました。
そのうえで「学年が違うので不良だというイメージはあまりないですが、同級生をいじめているという話を聞いたことがあります」と話しました。
また、卒業後についてはわからないとしたうえで「私が高校生の時に街で見かけて声をかけられましたが、金髪になっていてちょっと不良みたいだったので怖くなって逃げました」と話していました。
事件については「本当にショックです。札幌の人が関わっているのは報道で知っていましたが、まさか知っている人だとは思いませんでした。優しい印象もあるので、なんでこうなったのだろうと思います」と話していました。