高校野球 夏の甲子園 2部制 今夏導入見送り 暑さ対策で検討

高野連=日本高校野球連盟などは、夏の全国高校野球の新たな暑さ対策として検討を進めてきた試合を朝と夕方に分けて行う2部制について、この夏は導入を見送り、一方で、5回終了後に休息をとれるよう「クーリングタイム」を導入することを決めました。

高野連などは1日、大阪市で夏の全国高校野球の運営委員会を開きました。この中で、去年7月から新たな暑さ対策として検討を進めてきた気温が上がる日中を避けて朝と夕方に分けて試合を行う2部制について、現状では難しいとして、この夏の導入を見送ることを決めました。

主な理由として、観客を入れ替える時間を確保できない点をあげています。

一方、ことしの大会からは▽5回終了後に「クーリングタイム」を導入し、最大10分の休息をとれるようにして試合中に選手たちが体の冷却や水分の補給にあてる時間を確保するほか▽暑さ対策などの観点から控え選手の役割が増えているとしてベンチに入れる選手の数を2人増やし20人とすることを決めました。

高野連の小倉好正事務局長は「ことしの大会については専門家の意見を踏まえてできることを判断した。今後もやれるところから取り組みを考えて暑さ対策に臨んでいきたい」と話しています。

暑さ対策の議論を行うため発表を遅らせていた、ことしの大会の日程については開幕を8月6日とし、3日間の休養日を含み22日までの17日間で開催し、外野席の料金を300円値下げすることを決めました。

これまでも暑さ対策

炎天下で行われる夏の全国高校野球では、近年、選手の健康面を考慮してさまざまな対策がとられてきました。
▽2017年(平成29年)から暑さ対策として決勝の開始時間を気温が下がり始める午後2時に繰り下げ

▽2018年(平成30年)には開会式や試合途中に給水時間を設けました。

▽夏の甲子園と同じ時期に行われた2020年(令和2年)の交流試合から黒色に限られていたスパイクの色について、熱を吸収しにくい白色が認められました。

▽おととし(2021年)から大会期間中の休養日を1日増やして合わせて3日としました。

このほか、球場に配置する理学療法士が試合前に選手たちの体調確認やチーム関係者に熱中症対策の説明を行っているほか、試合中には、選手たちが給水できているかなどを確認しているということです。

日本スポーツ協会 川原貴委員長「対策考える余地ある」

日本スポーツ協会のスポーツ医・科学委員会の川原貴委員長はスポーツの熱中症対策に詳しく数年前には甲子園の暑さ対策の現場も視察しています。

川原委員長は「試合を気温が比較的低い夜に行うなど環境について対策を進めることが最も効果的だが、こまめに休みを入れて、水分を補給し、体温を下げることで熱中症の対策につなげられる」と話しています。

そのうえで今後に向けて「暑さの我慢比べにならず、選手たちが実力を出しきれるように対策を考える余地はある。どういう環境で何をしたときに熱中症が起きているのかという実態をよく調べて、それに応じて対策をしないといけない」と話しています。

理学療法士 小柳磨毅さん「健康管理を第一に」

理学療法士の小柳磨毅さんは、1995年(平成7年)から日本高校野球連盟からの要請を受けて、春・夏の甲子園で球場に待機し、けがをした選手や熱中症の症状を訴えた選手の手当てを行ってきました。

小柳さんは「熱中症を訴えるほとんどの選手が足がつるなどのけいれんを訴える程度だが、中には意識が少しもうろうとしていて、医療機関に搬送しないといけないケースもあった」と現状を話しました。

そのうえで「ベンチの中で冷却するという意識はだいぶ浸透してきている。大きな球場でたくさんのお客の前でプレーできるというのは球児の人生のすごく大きな目標になっている。健康管理を第一に万全のコンディションで、大会に参加させてほしいと思う」と話していました。