長崎の盗難仏像 韓国の寺側の所有権認めず 韓国高裁が逆転判決

長崎県の寺から盗まれ韓国で見つかった仏像をめぐり、韓国の寺が所有権を主張して引き渡しを求めている裁判で、韓国の2審の高等裁判所は、1審とは逆に韓国の寺側の訴えを退け、引き渡しの要求を認めないとする判決を言い渡しました。日本側は、仏像の返還を求めていますが、判決を受けて、原告の韓国の寺側は、最高裁判所に上告する意向を示しました。

長崎県対馬市の観音寺から2012年に盗まれ、その後韓国で見つかった県の文化財の仏像をめぐり、韓国中部にあるプソク寺が「中世の時代に倭寇に略奪されたものだ」として所有権を主張し、仏像を保管する韓国政府に引き渡しを求めて韓国で裁判を起こしました。

1審の地方裁判所は、プソク寺への仏像の引き渡しを命じる判決を言い渡しましたが、2月1日、韓国中部にある2審のテジョン高等裁判所は、1審とは逆に、プソク寺側の訴えを退け、引き渡しの要求を認めないとする判決を言い渡しました。

判決では、プソク寺に仏像の所有権があるとは認められないとしたほか、観音寺は20年以上公然と仏像を所有してきたもので所有権は観音寺にあると認定しました。

日本政府は、仏像を日本側に返還するよう韓国政府に求めていますが、判決のあと、原告のプソク寺側は「所有権がないという高裁の認定は受け入れられない」として、最高裁判所に上告する意向を示しました。

仏像が盗まれた寺の先代の住職「非常に喜ばしい」

判決を受け、仏像が盗まれた観音寺の先代の住職の田中節孝さんが対馬市内で報道陣の取材に応じ「韓国の司法が初めて正当性を認めたということで非常に喜ばしいと思う。帰ってきた仏様を拝まないと確信は持てないが、やっと一歩進むことができたと思う。単純な窃盗事件で政治を絡める必要もないし、なぜ10年もかかるのか疑問に思う」と話していました。

外務省「早期に日本に返還されるよう韓国政府に働きかけへ」

外務省の小野外務報道官は記者会見で「観音寺の主張に沿った判決が出されたと考えている。政府としてはいまだ返還が実現していない仏像が早期に日本に返還されるよう、韓国政府に引き続き働きかけるとともに、関係者と緊密に連絡を取りながら適切に対応していく」と述べました。

松野官房長官「主張に沿った判決」

松野官房長官は午後の記者会見で「観音寺が仏像の所有者であるという主張に沿った判決が出された。いまだ返還が実現していない仏像が早期に日本に返還されるよう韓国政府に働きかけるとともに、観音寺を含む関係者と連絡を取りつつ適切に対応していく」と述べました。