このため国土交通省は、管理が不十分な物件を「管理不全空き家」に指定して行政が指導する、新たな制度を導入する方針を固めました。
「管理不全空き家」は、放置すれば「特定空き家」になるおそれがある場合に指定され、窓が割れていたり雑草が生い茂ったりしている物件を想定しているということです。

「管理不全空き家」指定し行政が指導へ 税の減額解除も 国交省
全国で増え続ける「空き家」の問題で、国の新たな対策案です。
国土交通省は、管理が不十分な物件を新たに「管理不全空き家」に指定して行政が指導を行うよう法律を改正する方針を固めました。
指導で改善されない場合は、空き家の固定資産税を減額する措置を解除し、適切な管理を促すことにしています。
新たな対策の方向性は、31日に開かれた国の審議会で確認されました。
空き家対策をめぐっては、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」で、そのまま放置すると倒壊する危険性があるなど特に危険性が高い物件を「特定空き家」に指定し、撤去などができるようになりました。
しかし、全国でおよそ350万戸とされる居住目的のない空き家のうち、昨年度までに特定空き家に指定されたのはおよそ4万戸、撤去などの措置がされたのは482戸にとどまっています。


これまでの制度では、空き家でも住宅として固定資産税が減額されるため放置につながっていると指摘されてきましたが、指定された空き家で状況が改善されない場合はその減額の措置を解除するとしています。
現状の試算では、「管理不全空き家」は全国で50万戸に上る見込みで、所有者に空き家の撤去など適切な管理を促すねらいです。
国土交通省は、さらに制度の具体的な検討を進め、今国会に法律の改正案を提出することにしています。
空き家対策小委員会の委員長で、日本大学の中川雅之教授は「空き家の増加が見込まれる中、管理状態が悪くなる前の段階での踏み込んだ対応は必須で、早い段階での空き家の活用が進むことを期待している」と話していました。
現状の試算では、「管理不全空き家」は全国で50万戸に上る見込みで、所有者に空き家の撤去など適切な管理を促すねらいです。
国土交通省は、さらに制度の具体的な検討を進め、今国会に法律の改正案を提出することにしています。
空き家対策小委員会の委員長で、日本大学の中川雅之教授は「空き家の増加が見込まれる中、管理状態が悪くなる前の段階での踏み込んだ対応は必須で、早い段階での空き家の活用が進むことを期待している」と話していました。
空き家に悩む夫妻は

自分が空き家の所有者になったらどうするか。
適切な管理につなげてもらおうと、神奈川県相模原市では定期的に専門の業者による相談会が開かれています。
今月28日の相談会では、市内に空き家がある加藤雄一さんと典子さん夫妻が訪れました。
建物は35年前に建てられましたが、父親が亡くなったあと住む人がいなくなり、およそ3年間そのままにしてきました。
時間がたつにつれて雑草が生い茂ったり、建物に傷みが出始めたりしたため相談会に参加したということです。
今後、業者のアドバイスも参考に空き家をどうするか検討することにしています。
加藤さんは「思い入れもある家で、放置して荒れ果ててしまうのは避けたかった。ただこの空き家をそもそもどうすればいいか分からず困っていた」と話していました。
相談を受けた会社「空き家コンサルティング」には、空き家の活用の依頼が年々増えているということで、金石成俊社長は「空き家をどうするかはそれぞれにとっては一生に一度あるかないかで悩む人は多くなっている。長年放置したためにほとんど資産価値がなくなった空き家も多く、安心して相談できる場所の需要と必要性は今後さらに高まると考えている」と話していました。
適切な管理につなげてもらおうと、神奈川県相模原市では定期的に専門の業者による相談会が開かれています。
今月28日の相談会では、市内に空き家がある加藤雄一さんと典子さん夫妻が訪れました。
建物は35年前に建てられましたが、父親が亡くなったあと住む人がいなくなり、およそ3年間そのままにしてきました。
時間がたつにつれて雑草が生い茂ったり、建物に傷みが出始めたりしたため相談会に参加したということです。
今後、業者のアドバイスも参考に空き家をどうするか検討することにしています。
加藤さんは「思い入れもある家で、放置して荒れ果ててしまうのは避けたかった。ただこの空き家をそもそもどうすればいいか分からず困っていた」と話していました。
相談を受けた会社「空き家コンサルティング」には、空き家の活用の依頼が年々増えているということで、金石成俊社長は「空き家をどうするかはそれぞれにとっては一生に一度あるかないかで悩む人は多くなっている。長年放置したためにほとんど資産価値がなくなった空き家も多く、安心して相談できる場所の需要と必要性は今後さらに高まると考えている」と話していました。
解体すると税金が増額も 処分をためらった人は
「空き家」を解体すると固定資産税が増額されることがありますが、この仕組みによって「空き家」の処分をためらった人もいます。
埼玉県内に住む50代の女性は、久喜市にある築およそ50年の住宅が、高齢の親が住まなくなったことなどをきっかけに4年前、空き家になりました。
この住宅の処分も検討しましたが、今の制度だと住宅があったままの場合は固定資産税が減額され、年間2万円余りで済む一方、取り壊してさら地にすると6倍に増えることもあり、「空き家」のまま放置しました。
女性は「本当は処分したかったが、売れないのであれば税金が安いままにしておこうと考えた」と当時を振り返ります。
その後、女性は久喜市が新たに始めた、空き家を撤去すれば一定期間、固定資産税を減額できる制度を利用し、解体業者の協力も受けて空き家を処分しました。
女性は「固定資産税を減額する制度で処分できたが、今のままでは何もしないほうが楽だと消極的な理由で放置してしまう人は多いのではないか」と話していました。
埼玉県内に住む50代の女性は、久喜市にある築およそ50年の住宅が、高齢の親が住まなくなったことなどをきっかけに4年前、空き家になりました。
この住宅の処分も検討しましたが、今の制度だと住宅があったままの場合は固定資産税が減額され、年間2万円余りで済む一方、取り壊してさら地にすると6倍に増えることもあり、「空き家」のまま放置しました。
女性は「本当は処分したかったが、売れないのであれば税金が安いままにしておこうと考えた」と当時を振り返ります。
その後、女性は久喜市が新たに始めた、空き家を撤去すれば一定期間、固定資産税を減額できる制度を利用し、解体業者の協力も受けて空き家を処分しました。
女性は「固定資産税を減額する制度で処分できたが、今のままでは何もしないほうが楽だと消極的な理由で放置してしまう人は多いのではないか」と話していました。
専門家「住まいにも終活が必要だという時代に」

空き家問題に詳しい明治大学の野澤千絵教授は、今回の国の方針について「団塊の世代が後期高齢者になり空き家問題の深刻化が予想される今、空き家を早い段階で売る、貸す、解体するなどの適切な管理を促すもので有効な手段だ。ただ、管理不全になった場合の罰則的な措置だけでなく、解体を検討している人に対する支援策の充実も必要だ」と指摘しました。
そのうえで野澤教授は、空き家の所有者にできることについて、「空き家は時間がたつほど売れにくく問題も複雑になるうえ、解体コストも増えていく。家を相続したら長期間先送りにせず、空き家が売れたり貸せたりする段階で動き出すことが非常に重要だ。『住まいにも終活が必要だ』という意識を持つことが必要な時代になってくる」と話しています。
そのうえで野澤教授は、空き家の所有者にできることについて、「空き家は時間がたつほど売れにくく問題も複雑になるうえ、解体コストも増えていく。家を相続したら長期間先送りにせず、空き家が売れたり貸せたりする段階で動き出すことが非常に重要だ。『住まいにも終活が必要だ』という意識を持つことが必要な時代になってくる」と話しています。
“居住目的のない空き家”の現状は
総務省の調査では、2018年の時点で居住目的のない空き家の総数は全国で349万戸と、20年前から1.9倍に急増しています。
都道府県別では、数が多い方から
▽大阪府が20万9200戸、
▽東京都が18万戸、
▽北海道が15万7300戸、
▽兵庫県が15万1900戸、
▽神奈川県が14万7700戸などとなっています。
住宅全体に占める空き家の割合では、
▽高知県が12.7%、
▽鹿児島県が11.9%、
▽和歌山県が11.2%、
▽島根県が10.5%、
▽徳島県が10.3%など地方を中心に割合が高くなっています。
国土交通省は、2030年までに居住目的ではない空き家は470万戸に達すると推計していて、今後、対策を進めることでその数を400万戸程度に抑えたいとしています。
都道府県別では、数が多い方から
▽大阪府が20万9200戸、
▽東京都が18万戸、
▽北海道が15万7300戸、
▽兵庫県が15万1900戸、
▽神奈川県が14万7700戸などとなっています。
住宅全体に占める空き家の割合では、
▽高知県が12.7%、
▽鹿児島県が11.9%、
▽和歌山県が11.2%、
▽島根県が10.5%、
▽徳島県が10.3%など地方を中心に割合が高くなっています。
国土交通省は、2030年までに居住目的ではない空き家は470万戸に達すると推計していて、今後、対策を進めることでその数を400万戸程度に抑えたいとしています。
斉藤国交相「空き家の有効活用や管理の施策も強化」

人口減少で増え続ける「空き家」の問題について、斉藤国土交通大臣は31日の閣議のあとの記者会見で「これまで空き家への対策はおもに周囲に悪影響を与える、いわゆる『特定空き家』を中心に進めてきた。さらに空き家の増加が見込まれる中、有効活用や管理のための施策についても強化を図り、総合的に取り組む必要がある」と述べました。
そのうえで、斉藤大臣は「空き家対策の小委員会ではきょう、取りまとめに向けた議論を行う予定となっている。小委員会の取りまとめを踏まえ、法律の改正も含め、施策の具体化に努めていきたい」と述べ、対策を強化する考えを示しました。
そのうえで、斉藤大臣は「空き家対策の小委員会ではきょう、取りまとめに向けた議論を行う予定となっている。小委員会の取りまとめを踏まえ、法律の改正も含め、施策の具体化に努めていきたい」と述べ、対策を強化する考えを示しました。