日産とルノー出資比率 対等な立場に見直すなど基本合意で声明

日産自動車とルノーは、30日に声明を発表し、両社の出資比率を対等な立場に見直すなど、新たな提携に向けた合意案を正式に明らかにしました。両社は最終合意に向けて取締役会に諮る方針です。

日産は、両社の資本提携で、それぞれが持ち合う株式の比率が、日産の15%に対して、ルノーが43%となっていることから、これを対等な立場の15%に引き下げることを求めて交渉を進めてきました。

両社は30日「協議は重要なマイルストーン(節目)を迎えた」として、共同で声明を発表しました。

両社は
▽ルノーの出資比率の引き下げにあたって、株式を別会社に信託して段階的に売却し、議決権の比率もそろえるとしているほか
▽資本関係の見直しにあわせて、ルノー側が求めていたEVの新会社に対する日産の出資については、最大で15%にするとしています。

また
▽新たな協業「リロードプロジェクト」として、今後、成長が見込めるインドや中南米のほか、ヨーロッパで協業を進めます。

そのうえで声明では「最終合意に向けた協議は引き続き行われており、実施に関しては、取締役会の決議を経る必要がある」としています。

関係者によりますと、両社の間で大きな対立軸はなく、最終合意する見通しとなっています。

日産の経営危機をきっかけに、20年余りにわたって続いてきた、ルノーに有利な資本関係が抜本的に見直されることになり、両社の関係は、新たな段階に移ります。

ルノーも“基本合意”と発表

フランスの自動車メーカー、ルノーは、日産自動車との数か月におよぶ協議の結果、両社の出資比率を対等な立場に見直すことや、ルノーが設立したEVの新会社に対して日産が最大で15%、出資することなどで基本合意したとする声明を発表しました。

この中でルノーは「両社の提携の絆を強化し、すべての利害関係者の価値を最大化することを目指す」としています。

出資比率を見直す思惑は

“成功例”とも言われ、長年続いてきた日産自動車とルノーの提携関係。

今回、両社が出資比率を見直す背景には「対等な立場」となって経営の独立性を高めたい日産側と、日産の協力も得ながらEV=電気自動車シフトを加速させたいルノー側の思惑が一致したことがあります。

両社の関係は、1999年に始まりました。

日産はバブル経済崩壊後の販売不振などで深刻な経営危機に陥り、ルノーが救済する形で6000億円を出資しました。

ルノーの副社長から日産の最高執行責任者に就任したカルロス・ゴーン氏のもとで、主力工場の閉鎖や大規模な人員削減など徹底した合理化を進め、業績はV字回復しました。

一方で、経営においては、日産の株式を43%持つルノーの影響力が強まったうえ、売り上げ規模で勝る日産が、多額の配当金などの形でルノーの業績を下支えする構図に転換します。

こうした中、日産内部ではルノーに対する不満もくすぶっていたうえ、2019年にはルノーが日産に対して、経営統合を求めるなど、主導権をめぐる両社の対立が激しくなったこともあります。

こうしたことから日産の社内ではルノーの支配力が強い今の資本関係を「対等な立場」に見直すべきだという声が根強く、今回の交渉でルノー側に見直しを求めました。

一方、ルノーがみずからに有利な資本関係を見直す交渉を受け入れた背景には、主力市場のヨーロッパで加速するEVシフトへの対応を迫られたことがあります。

EV開発での競争力の強化には多額の資金が必要で、ルノーはEV事業を分社化し、上場によって資金調達する戦略を掲げ、日産にも新会社への出資を求めていました。

また、技術面でも日産の協力を得るねらいがあったものと見られます。

こうした思惑が相まって、両社は去年から資本関係の見直しとEVの新会社への出資をあわせて交渉し、ことしに入って懸案となっていた技術特許の取り扱いでルノー側が譲歩したことで交渉が大きく前進しました。

今回の交渉で日産が求めてきた「対等な立場」が実現する見通しとなりましたが、自動車業界が100年に一度と言われる変革期を迎える中で、日産が今後、どう勝ち抜こうとしているのか、具体的な経営戦略が求められます。