新型コロナ「5類」に見直し 発熱外来の医師“負担増すのでは”

新型コロナの感染症法の分類を5類に見直すことについて、発熱外来で患者に対応する医師からは、これまで保健所などが担ってきた入院調整の業務が医療機関に任され、負担が増すのではないかと懸念する声があがっています。

埼玉のクリニックでは

埼玉県春日部市の「あゆみクリニック」は、糖尿病やぜんそくの患者などの一般の診療に加えて、屋外にプレハブを設けて発熱外来を設置し、熱などの症状がある患者を診療しています。

現在は、新型コロナの患者が入院する際には、保健所などが受け入れ先の病院の調整を担っていますが、コロナ以外の患者の場合は患者の診察にあたる医師や、看護師が調整にあたります。

受け入れ先の病院のベッドに空きがないなどの理由で断られることも多く、入院先が見つからないまま、長い時間、酸素吸入と点滴で対応することもあるということです。
感染症法上の分類の5類への見直しについて、クリニックの藤川万規子医師は「現在でもコロナ以外の方の入院調整がすごく難しく、スタッフが数時間対応しても見つからない状態だが、5類になってコロナも私たちが調整しなければならなくなると、人手が足りずパンクしてしまう。保健所による入院調整は急にやめるのではなく、少しずつ手を離す方法をとってほしい」と話していました。

一方で、「コロナの患者をどこの医療機関でも診療することになれば、コロナの患者が増えたとしてもほかの医療機関に分散し、発熱外来がある医療機関への患者の集中が解消され、余裕をもって診察に取り組めるのではないか」と期待を寄せていました。

発熱外来 未設置のクリニックの医師は

新型コロナの感染症法の分類を5類に見直すことについて、これまで発熱外来を設置していなかった医療機関からは感染対策の難しさなど、今後受け入れるうえでの課題を指摘する声が聞かれました。

神奈川県鎌倉市の「章平クリニック」の院長、湯浅章平医師(64)は、20年ほど前にクリニックを開業し、地域の患者を幅広く受けて入れてきました。

3年前、新型コロナの感染が拡大すると、発熱外来を設置する医療機関も増えていきましたが、このクリニックは対応が難しいとして設置しませんでした。

課題の一つは、感染している可能性がある患者と他の患者を分ける「ゾーニング」です。

およそ40平米のこのクリニックでは、待合室と診察室が一つずつで、それぞれの動線を分けることが難しいということです。

通院患者の7割が高齢者で、慢性疾患を抱える人も多く、重症化リスクが高い患者も少なくありません。

一方で、湯浅医師自身は発熱外来がある病院で週1回勤務したり、休日夜間急患診療所で診療に当たったりとできる範囲でコロナ患者への対応にあたってきたということです。
湯浅医師は「5類になったからといって、コロナの感染力が落ちるわけではないので、これまで外来でみてこなかった医師がコロナをみるというのは、しばらくの間難しいのではないか」と説明しました。

そのうえで、「5類だからどこの医療機関もみてくれるだろうと患者さんの意識が変わって、現実はそうでないとなると現場がかなり混乱することが考えられる。段階的に5類にしていくということは必要だと思うが、現場の状態を考えて進めてほしい」と話していました。