米独 ウクライナに戦車供与表明 ロシアでは批判的論調広がる

アメリカやドイツが相次いで主力戦車をウクライナに供与すると表明しました。これに対してロシアでは批判的な論調が広がっています。

ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナに対してドイツ政府は25日、戦車「レオパルト2」を供与すると発表し、この戦車を保有する国々からウクライナへの供与を認める方針も示しました。
また、アメリカのバイデン大統領も25日、主力戦車「エイブラムス」を供与すると発表しました。

これについて、ロシアでは各メディアが大きく報じていて、26日付けの政府系「ロシア新聞」は議会上院のコサチョフ副議長の寄稿を掲載しました。
この中でコサチョフ副議長は、ドイツがアメリカの圧力に屈して戦後歩んできた平和路線を放棄する過ちを犯したと批判しました。

コサチョフ氏は「ショルツ首相は面目を保とうとしたのかもしれないが、ドイツの歴史的な功績だけでなくヨーロッパの文明的で平和な未来まで失われかねない」と主張しました。

また、有力紙の「ベドモスチ」は、アメリカとドイツはNATO=北大西洋条約機構の分裂を招かぬよう方針転換を余儀なくされたという見方を伝えました。

さらに「戦況を好転させることにはつながらない」とする専門家の主張も伝えています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ロシア側が戦車供与を脅威と受け止めていることの表れとみられる」と分析しています。

戦車供与 各国の動き

ウクライナに対しては、これまでポーランドやチェコがソビエト時代の戦車を供与していました。

ウクライナ側が攻撃力の高い戦車の供与を求める中、今月11日、ポーランドのドゥダ大統領はウクライナを訪問した際、自国が保有するドイツ製の戦車「レオパルト2」を供与する意向を表明しました。

ドイツ政府は25日、戦車を保有する国からの供与を認める方針を示しました。

こうした状況の中、フィンランドとノルウェーが自国が保有する「レオパルト2」の供与を表明したほか、各国メディアの報道によりますと、スペインやオランダ、ポルトガル、それにカナダも供与を検討しているということです。

このほか、イギリスのスナク首相は今月14日、陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」の供与を表明しました。

フランスも今月供与を表明した大型の砲を備えた装甲車に加え、フランス製戦車「ルクレール」を供与する可能性を排除しないとしています。

ロシア “欧米各国は紛争へ直接的関与”

アメリカやドイツがウクライナへの戦車の供与を発表したことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日、記者団に「欧米各国は、兵器の供与が紛争への関与を意味するものではないと繰り返し主張するが、全く同意できない。すべてが紛争への直接的な関与とみなされ、われわれは、これが拡大していると見ている」と述べ、欧米をけん制しました。

また、ロシアの国営通信社によりますと、プーチン大統領の側近のパトルシェフ安全保障会議書記は26日、会合で「アメリカなどNATOが紛争を長引かせようとし続け、その当事者になったことを示している」と主張したということです。

欧米によるウクライナへの軍事支援の強化をめぐっては、ロシアのラブロフ外相も23日、「ウクライナで起きていることはハイブリッド戦争ではなく、もはや本物の戦争となっている」と述べています。