電車の中に7時間、その時 “わたし”はどうなる

電車の中に7時間、その時 “わたし”はどうなる
動いていた電車が突然、停車。

そこから7時間、車内に大勢の人が閉じ込められました。

10年に一度という厳しい寒さの中の出来事。大雪の時、しばしば起きている事態です。

そんな時、私たちの体はどうなるのか、体を守るためにできることは何か。

もしもという時のために知っておきたいことです。

24日 午後7時20分

京都駅にいた男性。

JR湖西線に乗り込んだのは、午後7時20分ごろでした。

1駅先は山科駅。

ところが、その駅にさえ着くことができず、手前で車両が動かなくなったのです。

原因はJRの想定を上回った大雪。

動かないまま刻々と時が過ぎていきました。
時間がたつにつれ、徐々に乗客がトイレのある車両に移動しはじめます。
乗客の男性
「最初の2、3時間はみんな耐えていたんです。やがてトイレを利用する人が増え、車両が過密になっていきました」
具合が悪くなる人がだんだんと増えていきました。
乗客の男性
「車内は酸欠に近い状況になりました。体調が悪いと訴える人が次々出てきて消防の担架で運ばれる人もいました」

「過呼吸、ヤバイ」

車両に閉じ込められた時間は7時間。

雪で動けなくなる電車はほかにもあり、当時、SNS上でも

「満員の中、立ち疲れた人で車内はイライラ」

「過呼吸が何人も出ていてヤバイ」

など乗客と思われる人たちから不安を訴える投稿が相次ぎました。
また、別の乗客は車内で起きていた出来事を教えてくれました。
別の乗客
「車内のアナウンスで“お客様を車外に降ろしたいという要請を行いましたが『出ないでほしい』と返事があり、申し訳ございませんが、ご移動ができない状態です”と言われました」

「それに対して『結局無理やったんかい』といろいろな人がツッコミを入れていました」

「スマホの充電が切れそうになったので、近くにいた人にバッテリーを借りて10%まで充電させてもらって、親に連絡ができてよかったです」

席を譲り合ったものの…

JR嵯峨野線の列車では、午後5時に京都駅で乗客を乗せたまま動かなくなりました。

やがて座席に座れず立っていた人が少しずつ床に座り始めました。

10時間たった午前3時ごろにはビスケットとペットボトルのお茶が配られました。
乗客の20歳の学生
「数時間は耐えましたが、疲労と眠気が襲ってきてしゃがみこんでしまいました」
また、別の列車では座席に座れない人のため乗客どうし席を譲り合っていたものの、次第に疲労がたまり、救急車で搬送された人もいたということです。

25日正午までに列車が長時間、動けなくなり閉じ込められた影響で、救急搬送された人は13人にのぼりました。(消防まとめ)

閉じ込めから、失神も

長時間、電車内に閉じ込められてしまった時、私たちの体にどんなことがおきる可能性があるのか。

循環器内科が専門の鳥取県済生会境港総合病院の山崎純一副院長は、自律神経のバランスが崩れることの怖さを指摘します。
山崎純一医師
「例えば今回のように混雑し動けないような状況が長く続くと、人は“不快だ”と感じます。すると自律神経のうち、体をリラックスさせる副交感神経が緊張し、心身を活発にする交感神経の働きも抑えられてしまい、血圧が下がります」

「その結果、冷や汗をかいたり、おなかが痛いなどの症状が出ることがあります。ひどい場合は気を失って失神することがあります。神経調節性失神とよばれるものです」

失神が起こる前の症状は、対策は

神経調節性失神がおこる前の症状としては次のようなものがあり注意が必要です。
・冷や汗や腹痛
・頭が痛くなる
・体がふわふわ感じる
・血の気が引く
また症状が起きやすいのは座っている場合よりも混雑した車内で立ちっぱなしの場合です。
山崎純一医師
「対応策としては立っている場合は座ること、もしスペースがある場合には横になるなど姿勢を変えることです。そして大事なのは水分を十分にとって、下がった血圧を上げること。神経調節性失神はほとんどが短期間で回復し、後遺症もないことが多いです」

閉じ込めから、“過呼吸”となる可能性も

山崎さんは今回の状況で体調が悪くなった人の中に過呼吸をおこした可能性があることも指摘していました。

長時間、電車内に閉じ込められた場合、不安やストレスの高まりなどから、息を何度も激しく吸ったり、吐いたりする過呼吸状態になる可能性があるのです。
過呼吸で起こる症状

・息苦しい(呼吸困難)
・胸が痛い
・めまいや動悸がある
・手足のしびれや筋肉のけいれんなど

(日本呼吸器学会のサイトより)
もともと人は酸素を体内に取り込み二酸化炭素を体外に出し、体内でバランスを保っています。

しかし過呼吸となると、血液の中の二酸化炭素濃度が低くなり、呼吸困難などさまざま症状が現れるのです。

対策は“ゆっくり吐く”

山崎医師はこれを防ぐため「難しいかもしれませんが、意識的にゆっくりと呼吸をすることも対策のひとつ」としています。
日本呼吸器学会のサイトでも対策を示しています。
・意識的に呼吸を遅くする。
・呼吸を少し止めたりする。
こうしたことで症状が改善するので、不安が強く呼吸を遅くすることができない場合でも、できるだけ安心させてゆっくり呼吸をするよう指示をしてほしいとしています。

遭わないことが一番だけども

大雪の際、電車の立往生は毎年、繰り返されています。

こうした状況に遭わないことが一番ですが、もしもの時の対応策を知っておくことも大切で、それが自分や、周りにいる知らない誰かを助けることにつながるかもしれません。

(京都局 絹川千晴 ネットワーク報道部 石川由季 高杉北斗 土方薫)

※失神や冷や汗、血の気が引くなどの症状は、神経調節性失神以外にもさまざまな病気で出ることがあります。不安な場合は医師の診断を受けてください。