おととしの衆院選 1票の格差裁判 きょう最高裁判決

おととしの衆議院選挙で、いわゆる1票の格差が最大で2.08倍だったことが憲法に違反するか争われた裁判で、最高裁判所大法廷がきょう判決を言い渡します。各地の高等裁判所の判決は、憲法に違反しないとする「合憲」と、「憲法違反の状態」という判断がほぼ半々に分かれていて、格差の状況や是正に向けた国会の取り組みを、最高裁がどう判断するかが焦点です。

おととし10月の衆議院選挙では、1票の価値に最大で2.08倍の格差があり、2つの弁護士グループが「投票価値の平等に反し憲法に違反する」として、選挙の無効を求める訴えを、全国の高等裁判所や高裁支部に合わせて16件起こしました。

各地の裁判所の判決は、いずれも選挙の無効は認めませんでしたが、憲法判断は「合憲」が9件、「違憲状態」が7件とほぼ半々に分かれました。

これらの裁判について、最高裁判所大法廷が25日午後、判決を言い渡し、統一的な判断を示します。

最高裁は、最大で1.98倍の格差があった前回・6年前の選挙については、「アダムズ方式」という新たな定数配分の採用を決めた国会の対応などを評価し、「合憲」と判断しています。

おととしの選挙は、6年前と同じ区割りで実施されましたが、人口の変動によって格差は再び2倍を上回っていて、こうした状況や是正に向けた国会の取り組みを、どう判断するかが焦点となります。

最高裁の判断を受け 国会が対応を繰り返す

衆議院選挙の1票の格差をめぐっては、最高裁判所の判断を受けて国会が格差是正に取り組むという対応が繰り返されてきました。

中選挙区時代の最高裁の格差判断

最高裁判所大法廷は、中選挙区制の時代には、1票の格差が最大で4.99倍だった1972年と、4.4倍だった1983年の選挙を「憲法違反」、格差が3倍を超えた1980年と1990年の選挙を「違憲状態」と判断しました。

小選挙区制導入も「1人別枠方式」が格差の要因と指摘

1994年に小選挙区制が導入され、格差が縮小してからは、憲法に違反しないとする「合憲」の判断が続きました。

しかし、その後も2倍以上の格差が続いたことから、最高裁は2.3倍だった2009年の選挙を「違憲状態」と判断し、すべての都道府県にまず1議席を割り当てる「1人別枠方式」が、格差の要因だと指摘して是正を求めました。

これを受けて国会は、「1人別枠方式」の規定を削除し、小選挙区を5つ減らすいわゆる「0増5減」の法改正を行いましたが、2012年の選挙には間に合わず2.43倍の格差となり、「違憲状態」と判断されました。

そして「0増5減」が反映された2014年の選挙では、格差は2.13倍まで縮小しましたが、これについても最高裁は「違憲状態」と判断しました。

「アダムズ方式」採用 合憲の大きな理由

「違憲状態」の判断が3回続いたことを受けて、国会は2016年、より人口に比例した議席配分となる「アダムズ方式」という新たな方法を、4年後の国勢調査に基づいて導入することを決めました。

また、暫定措置として小選挙区を「0増6減」することも決め、翌年2017年の選挙では、およそ3分の1の選挙区で区割りが見直された結果、格差は最大で1.98倍と、小選挙区制が導入されてから初めて2倍未満に縮小しました。

最高裁は、格差是正に向けた国会の取り組みを評価し、「合憲」と判断。

なかでも「アダムズ方式」の採用について「格差を相当程度、縮小させ、その状態が安定的に続く」と述べ、合憲の大きな理由としました。

おととし衆院選 最高裁の判断は?

25日に判決が言い渡されるおととしの選挙は、2017年と同じ区割りで行われましたが、人口の変動によって1票の格差は2.08倍と、再び2倍を上回っていました。

その後、国勢調査の結果が確定したことを受けて「アダムズ方式」に基づいて区割りが見直され、小選挙区の数は、東京など5つの都県で合わせて10増える一方、10の県で1つずつ減る「10増10減」が確定し、次回からは新たな区割りで実施されることになります。

去年12月に最高裁で開かれた弁論で、被告の選挙管理委員会側は、この見直しについて触れ、「『アダムズ方式』に基づく新たな定数配分によって、格差は今後再び2倍未満になり、投票価値の不均衡が解決されることになる」と述べ、格差是正の取り組みが進んでいると強調しました。

一方、弁護士グループは「『アダムズ方式』は優れた方式とはいえず、人口に比例した定数配分には程遠い」と反論しました。

25日の判決で厳しい評価がされれば、国会は改めて対応を余儀なくされることになり、最高裁が「アダムズ方式」の導入について、どのような判断を示すのかも注目されます。

次回の衆院選から「アダムズ方式」に基づく区割りを実施

「アダムズ方式」は、アメリカの第6代大統領ジョン・クインシー・アダムズが考案したとされる定数配分方式で、フランスなどで採用されているほか、日本でも、次回の衆議院選挙からこの方式に基づく区割りが実施されます。

各都道府県の人口を一定の数値で割って、議席の数を決める方法で、各都道府県に、あらかじめ1議席を割り当てる「1人別枠方式」に比べ、より人口に比例した配分ができるとされています。

3年前の国勢調査の結果をもとに、この方式に基づく見直しが行われ、小選挙区の数を「10増10減」する改正公職選挙法が、去年、国会で成立、施行されました。

小選挙区の数が変わるのは、15の都県で、東京は5つ増えて30に、神奈川は2つ増えて20に、埼玉と愛知は1つずつ増えて16に、千葉も1つ増えて14になります。

一方、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県は、いずれも1つずつ減ります。

また、選挙区の数は変わらないものの、線引きが変更された道府県もあり、合わせて25の都道府県で、140選挙区の区割りが変わる、過去最大規模の変更となりました。

おととしの衆議院選挙は、国勢調査の結果が確定する前に行われたため、アダムズ方式を導入する前の、前回・2017年の選挙と同じ区割りで実施されていました。

各地の裁判所の判断「合憲」が9件「違憲状態」が7件

今回の一連の裁判で、各地の裁判所の判断は、憲法に違反しないとする「合憲」が9件、「違憲状態」が7件と、ほぼ半々に分かれました。

判断が分かれたポイントは、前回・6年前の選挙に比べて、わずかながらも格差が拡大していることへの評価でした。

前回の格差は最大で1.98倍。

小選挙区制が導入されて以降、初めて2倍を下回り、最高裁はこの選挙について「合憲」と判断していました。

一方、おととしの選挙は、前回と同じ区割りで実施されましたが、格差は再び2倍を上回っていました。

この点について、「合憲」と判断した9件のうち東京高裁の判決は、「格差の是正ははかられていて、2倍を超えたのは想定と異なる人口の移動によるものだ」と指摘しました。

そのうえで、2倍を若干超える格差が残っていることなどを考慮しても、投票価値に著しい不平等があったとは言えないと判断し、ほかの判決も同様の評価をしています。

一方、「違憲状態」とした7件の判決は、結果的に格差が再び拡大して2倍を超えた状況を重く見ました。

このうち、大阪高裁の判決は「相当数の選挙区の間で、2倍を超える格差が生じている状態は不平等というべきだ」と指摘。

ただ、こうした状況を国会が認識できたのは、国勢調査の結果が判明してからだとして、「今回の選挙までに是正することは事実上不可能」として、憲法違反とまでは言えないと判断しています。