“逃げてもいいけど 負けたらあかん” いじめに苦しむあなたへ

いじめに苦しみ、その思いを周りに隠して学校に通い続け、不安な日々を過ごしていませんか。

そんなあなたに届けたい言葉があります。
お笑いコンビ、ライセンスの藤原一裕さんの言葉。

“逃げてもいいけど負けたらあかん”

中学時代にいじめを受けたという藤原さん。
大切なのは、その後の人生をどう過ごすかだといいます。

(社会部 記者 平井千裕)

「中1のときに僕はいじめにあいました」

「中1のときに僕はいじめにあいました。今でもこの話をするとき、胸にグッとくるというか、乗り越えられてない部分も正直あります」

芸歴26年のお笑いコンビ、ライセンスの藤原一裕さん(45)
1月21日、全国124人の子どもたちが集まり、いじめをなくすための取り組みを発表するイベントで講演を行い、こう切り出しました。
身長180センチで体格もよく、高校時代には空手でインターハイにも出場。
現在、お笑い芸人としてさまざまな舞台やテレビで活躍しています。
いじめとは一見縁遠いようにも思えますが、中学1年のときに同級生などからいじめを受けました。

先生にも親にも打ち明けられず

いじめはある日突然、前触れもなく始まったといいます。
「別のクラスのいわゆる“ヤンキー”と言われる子たちが、休み時間のどこかで僕のクラスにやってきて、僕かもう1人のAくんに暴力をふるっていく。腹を殴られる、突然後ろからお尻を蹴られる、背中を殴られるとかですね。そのとき僕は、体が小さかったんです。中1で148センチしかありませんでした。学校へ行きたくないという思いがずっとあって、登校中は学校に向けて足は歩いてるけど、着かへんかったらいいのにと思いながら歩いていました」

いじめる側からの報復を恐れ、先生に助けを求めることはできませんでした。
親にも打ち明けることができませんでした。
それは両親に対する思いやりからでした。

「うちの家族はものすごく仲がよかった。そのお父さんお母さんに『あなたの子どもは学校でいじめられてますよ』という事実を知ってほしくなかった。親につらい思いをしてほしくなかった。自分だけ頑張って学校に行っていれば大丈夫かなと、家ではそう思っていました」

励まし合った友人さえも…

誰にも打ち明けられないなか、同じ時期にいじめを受けていたAくんとは「お互い助け合おう」と励まし合っていました。

しかし、ある日、Aくんと一緒にいたときに藤原さんだけいじめられたことがありました。

そのときAくんを見ると、彼はほかの生徒たちと一緒に、笑いながら見ていたといいます。

「大人になった今はAくんも怖かったんだろうと思えるのですが、当時はすごくショックだったし、助けてくれる人はいないと思いました。クラスメイトからもうっすら無視されているというか、腫れ物に触るような感じを受けました。みんな踏み込んでこない。僕もしゃべらないし、どんどん負の連鎖になっていきました。自分の世界は学校か家しかなかったので、つらかったですね」

いじめから逃れた先で…

中学2年のときに親の転勤で新潟県から奈良県に引っ越すことになり、それを機に、いじめから逃れることができました。

そこで空手と出会い、相方と出会い、お笑いと出会って人生が好転したといいます。

高校の同級生だった井本貴史さんとコンビを結成し、舞台やテレビなどで活躍してきました。

そのかたわら、いじめを受けた経験から子どもたちに向けてメッセージを発信したいと考えてきました。
そして、クラウドファンディングで資金を集めて2020年に絵本を出版しました。

タイトルは、「ゲロはいちゃったよ」
絵本の主人公、“僕”は、げた箱に入れた靴を捨てられるなどのいじめを受け、おう吐を繰り返すようになります。
先生に相談しても信じてもらえず、ついに家でテレビやインターネットばかり見る生活を送るようになります。
「じっとしていればいい」と開き直る“僕”に、お父さんからの厳しい言葉が突き刺さります。
そして“僕”が、そのことばの意味について悩むところで絵本は終わりとなります。
「絵本の“僕”が逃げた先で何もしなかったら、完全にいじめに負けてしまっている人生です。でも最後の父親の一言で気付き、外の世界に飛び出して幸せな家庭を築いてほしいという思いを込めました。(絵本の)言葉にはないですけど、そういう未来もあるんだよっていうことを」

「逃げてもいいけど負けたらあかん」

1月21日のイベントで、藤原さんは自身のつらい経験とその後の人生を話したあと、子どもたちに向かって、こう語りかけました。

「逃げてもいいけど負けたらあかん」
「逃げた先で自分の人生を新しいものにしてほしいし、学校だけが全てじゃないってことを知ってほしい。小学校6年、中学校3年、高校3年の12年間って皆さんにはすごく長く感じると思います。でも今、大人になって振り返ると本当にすごく短いです。そしてすごく小さな世界です。この12年の小さな世界でいじめにあったからって、全て失わないでほしい。世の中にはいろんな世界があります。世の中広いです。行くべきところがあります。たった1回のいじめ、たった1回の嫌な思いで負けないでほしい」

昨年度、全国の学校が把握したいじめは61万件を超え、過去最多となったほか、SNSなどインターネットを使ったいじめも2万1900件とこれまでで最も多くなりました。

いじめは誰の身にも起こりうるからこそ、つらいとき、悩んだときには藤原さんの言葉を思い出してほしいと思います。

あなたの将来は、あなただけのものです。