軍事侵攻11か月 ロシア大規模攻撃準備か ウクライナ戦車求める

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で11か月となります。
ロシア軍は新たな司令官のもとで大規模な攻撃に向けた準備を進めているとみられるのに対し、ウクライナは攻撃能力の高い戦車の供与を欧米諸国に訴え、反転攻勢を目指しています。

ウクライナへ侵攻するロシアは、1月、軍の制服組トップ、ゲラシモフ参謀総長を新たに軍事侵攻の司令官に任命し指揮系統の立て直しを行い、大規模な攻撃に向けた準備を進めているという見方が出ています。

ロシア軍は、東部ドネツク州や南部ザポリージャ州などで攻撃を続けているほか、1月16日からはウクライナ北部と隣接するベラルーシで合同演習を実施し、軍事的な揺さぶりを行っています。

また、ロシアのラブロフ外相は23日、訪問先の南アフリカで「ウクライナで起きていることはハイブリッド戦争ではなく、もはや本物の戦争となっている。欧米側はロシアのすべてを破壊しようとしている」と述べ、ウクライナを支援する欧米側を強くけん制しました。
これに対し、ウクライナは、反転攻勢のため攻撃能力が高く、ヨーロッパ各国が保有しているドイツ製戦車「レオパルト2」の供与を求めるなど欧米諸国にさらなる軍事支援を訴えています。

「レオパルト2」をめぐってはドイツ政府はウクライナに供与するかどうかの判断を先延ばしにしましたが、バルト三国のエストニア、ラトビア、リトアニアの外相が直ちに供与するようドイツに呼びかけたほか、ポーランドのモラウィエツキ首相は23日、自国が保有する「レオパルト2」の供与に向けてドイツに対し許可を求める考えを示しました。

今後、「レオパルト2」がウクライナに供与されるかどうかが焦点となっています。

専門家「双方が次の大攻勢のタイミング見計らっている」

ロシアの安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員は、現在のウクライナの戦況についてこう着状態にあるとした上で「ロシア、ウクライナ双方が、次の大攻勢に出るタイミングを見計らっている段階だ」と指摘しました。
ロシア側が掌握を目指す、東部ドネツク州のウクライナ側の拠点の一つ、バフムト周辺での攻防について「ロシア側は、じりじりと占領地域を拡大している。ウクライナ側は、どの程度、この地域に戦力を割くのか難しい選択を迫られている」と分析しました。

一方、ウクライナと北部で隣接するベラルーシに、ロシア軍が合同演習の名目で部隊を展開していることについて「首都キーウとゼレンスキー政権にプレッシャーをかけて、ウクライナ軍を北部に配置させるねらいがあるとみられる」として、ウクライナ側の戦力の分散を図り揺さぶりをかけているという見方を示しました。

今後の見通しについて、長谷川研究員は、ロシア側は軍事侵攻の指揮を執る新たな総司令官に軍の制服組トップ、ゲラシモフ参謀総長が就いたことを注目点に挙げ「ゲラシモフ氏はロシアの軍事戦略の新たな概念を提唱し、実現してきた人物で『最後の切り札』ともいえ、彼の失敗は許されない。プーチン大統領に対してアピールするような象徴的な作戦を実施する可能性がある」として、ロシア軍が明らかな戦果を求めて激しい攻撃に出る可能性を指摘しました。

一方、ウクライナ側について「さらに長期化すると、国際世論の関心を高い水準で維持し続けることが徐々に難しくなる。欧米の軍事支援が続く限られた期間のなかで大きな成果をあげる必要がありゼレンスキー政権においても焦りがあるのではないか」と指摘しました。

そのうえで「ウクライナはいま、欧米の軍事支援を本格化してほしいと以前よりもさらに強いトーンで呼びかけているし、欧米側もこれに沿う形でより高次の軍事支援を始めている」と述べ、ウクライナ側が準備を進める春の大規模な奪還作戦に向けて、欧米側が、戦車の供与などどの程度まで軍事支援を進めるかがカギになると指摘しました。