通常国会召集 防衛力の抜本的な強化 焦点と各党の立場は

ことしの通常国会が23日召集され、岸田総理大臣は、防衛力の抜本的な強化の実現などに取り組む考えを示しました。
防衛力強化について、焦点と各党の立場をまとめました。

【焦点1】防衛費増額

防衛力の抜本的な強化に向けて、政府・与党は、新年度から5年間の防衛力整備の水準をこれまでの計画の1.6倍にあたる43兆円程度とするとしていて、2027年度には、防衛費と関連する経費を合わせてGDPの2%に達する11兆円の予算措置を講じる方針です。

これに対し、野党側は、
▽日本維新の会が、GDPの2%の基準まで引き上げることは不可欠で、国際的な責務だとしています。

▽立憲民主党は、必要な予算を積み上げた結果として一定の増額はありえるとする一方、政府が示している43兆円程度は、数字ありきで合理性に欠けると批判しています。

また、
▽国民民主党は、必要な防衛費は増額すべきとする一方、予算額ありきではなく、10年程度の期限を区切って徐々に増額すべきとしています。

一方、
▽共産党は、大軍拡につながるとして、防衛費増額に反対しています。

また、
▽れいわ新選組も、経済対策に最優先で取り組むべきだとして、防衛費増額には反対しています。

【焦点2】防衛費増額の財源

防衛費増額の財源について、政府・与党は去年の年末、4分の3は歳出改革などで確保したうえで、残る4分の1は、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税を行って賄うとする方針を決定しました。

ただ、自民党内には、増税への反対論も根強く、先週から、党内の特命委員会で、増税以外の財源の上積みを探る議論が始まりました。

これに対し、野党5党は、防衛費増額に伴う政府の増税方針は、国会の審議を経ずに決定されたもので容認できないと反発していて、安易な増税には反対することで一致しています。

【焦点3】「反撃能力」の保有

政府・与党は、迎撃による今のミサイル防衛だけで敵の弾道ミサイル攻撃などに対応することは難しくなっているとして、発射基地などをたたく「反撃能力」の保有を打ち出しています。

これに対し野党側は、
▽日本維新の会が、侵略を受けた場合に敵対国を直接攻撃する能力を保有することは、一定の条件のもとで認められるのが当然だとして、保有すべきとしています。

▽国民民主党は、安全保障環境が厳しさを増す中、アメリカに依存してきた打撃力が十分に期待できる状況ではないとして、保持するとしています。

▽立憲民主党は、憲法に基づく専守防衛と適合するものにかぎり、反撃能力を保有することは否定していませんが、政府が示す「反撃能力」は、日本への攻撃着手の判断が現実的に困難で「先制攻撃」となるリスクが大きいなどとして、賛同していません。

▽共産党と、▽れいわ新選組は、専守防衛の変更につながるものだとして、反対しています。

政治部・徳丸政嗣記者はどう見る

Q.今国会は、岸田総理にとって何が問われる国会か。

A.ひとことで言うと「説明」が問われる国会だと思います。岸田政権は、臨時国会が閉じた去年暮れから年明けにかけて、防衛力の抜本的な強化や「異次元の少子化対策」などを次々と打ち出しました。野党側からは「国会がないときに重要なことを次々と決めるのは問題だ」と反発が出ていました。国会審議を通じて、政権の重要政策について国民の理解を得る「説明」が出来るかが焦点となります。

Q.防衛力強化のための増税について、自民党内では、安倍派の議員を中心に温度差があるが、どういった背景か。

A.背景には、派閥を束ねていた安倍元総理が生前、防衛力の強化に必要な財源は国債発行で対応していけばいいと発言していた経緯があります。安倍氏は岸田総理とは政策路線の違いはあっても、最後は派閥をまとめ、政権運営を支える役割を果たしていた面もありました。その重し役がいなくなったことで意見の違いが表面化しやすくなっているともいえそうです。一方で、ほかの派閥からは、安倍派内の主導権争いをにらんだアピール合戦の側面があるという見方も出ています。

Q.野党は防衛費増額で政権とどう対峙?。立民、維新の接近は?。

A.増税反対では野党各党の足並みがそろい、連携して追及していく方針で、野党幹部の1人は「この通常国会は『岸田増税内閣』対野党になる」と語っています。防衛政策そのものやいわゆる「反撃能力」の保有など個別に見ると各党でスタンスの違いがありますが、そこにこだわらず一致できるところを前面に押し出した格好です。

野党第1党の立憲民主党と第2党の日本維新の会は、去年の臨時国会でも国会対応で連携し、旧統一教会の被害者救済などで成果を上げることができたとしていて、この国会でも連携を継続し、成果に結びつけたい考えです。

ただ、日本維新の会は、自民党とも、憲法改正と安全保障政策、エネルギー政策で議論を進めていくことで一致しています。野党連携がどこまで広がるかは不透明といわざるを得ません。

Q.さまざまな論点が施政方針演説でも出されたが、具体的に何が焦点になっていく?。

A.まずは岸田総理が最重要政策とした少子化対策があげられます。
政府は、6月までには子ども・子育て予算の将来的な倍増に向けた大枠を示すとしていますが、具体的な対策の検討はこれからです。
立憲民主党などは、防衛力の強化よりも少子化対策を急ぐべきだと主張していて、具体策やそのための財源をどう確保するのか、大きな議論になりそうです。

Q.賃上げも気になるところだ。

A.岸田総理は、物価上昇を上回る賃上げの実現を目指すとしています。どのように実現を図るのか、そして、物価高騰対策として、何が有効なのか、与野党の論戦が行われる見通しです。

このほか、▼新型コロナの感染症法位置づけの引き下げのほか、▼4月に任期を終える日銀の黒田総裁の後任人事なども論点となるとみられます。

Q.支持率が低迷する中、岸田政権はどう臨む?。

A.岸田総理大臣としては、賃上げや物価高対策で目に見える成果を出すとともに、5月の「G7広島サミット」で存在感を示し、支持率回復につなげたい考えです。ただ、自民党内では、岸田総理の政権運営への不満がくすぶっています。今月に入って菅前総理が防衛力強化のための増税方針に「議論が不十分だ」などと公然と指摘する場面もありました。

4月に統一地方選挙に加え、衆議院の補欠選挙が複数行われる可能性があり、選挙結果次第では、自民党内の主導権争いが激しくなることも予想されます。さらに10月には衆議院議員の4年の任期が折り返し点を迎えることから、この国会は、衆議院の解散・総選挙もにらんで展開していくことになりそうです。