春闘 産業別労組 高い水準の賃上げ求める方針

岸田総理大臣が施政方針演説でも強調した賃上げの実現。

経済界に対して物価の上昇率を超える賃上げへの協力を呼びかけるなか、今年の春闘が23日から事実上スタートしました。

賃上げの動きはどこまで広がるのでしょうか。

平成7年以来の高い水準

ことしの春闘に向けては労働組合側から物価の上昇などを踏まえた高い水準の賃上げを求める方針が相次いで出されていて、この方針を踏まえ大手企業などの組合が来月に経営側に要求書を提出します。

労働組合の中央組織「連合」はベースアップ相当分と定期昇給分とをあわせて5%程度という平成7年以来の高い水準を掲げています。

連合に加盟する主要な産業別労働組合では、
▽繊維、流通、サービス業などの労働組合で作る「UAゼンセン」がベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて6%程度という2012年の発足以来最も高い水準の賃上げを掲げています。

▽機械や金属産業などの中小企業の労働組合で作る「JAM」は、8年ぶりに要求水準を引き上げ平均賃金で月額1万3500円以上の賃上げを求めます。

▽大手電機メーカーなどの労働組合でつくる「電機連合」は、定期昇給分を確保した上で、ベースアップ相当分として去年を大きく上回る月額7000円以上の賃上げを求めることで調整を進めています。

▽自動車メーカーや部品会社などの労働組合でつくる「自動車総連」は、一律の要求額は掲げないもののそれぞれの労働組合ごとに中長期的に目指すべき賃金水準に向けての賃上げを求めていく方針です。

▽鉄鋼メーカーなどの労働組合でつくる「基幹労連」は、ベースアップ相当分として500円引き上げて月額3500円以上の賃上げを要求する方針です。

連合とは別に自動車や電機のメーカーなど5つの産業別労働組合が加盟する「金属労協」は、ベースアップ相当分として去年の2倍にあたる月額6000円以上の賃上げを求める方針です。

さらに別の労働団体の「全労連」は、定期昇給分も含めて賃金の10%以上、月額3万円以上の引き上げを求める方針で議論を進めています。

原材料価格の高騰 頭を悩ませる経営者

多くの中小企業が原材料価格の高騰に直面するなか、社員の賃金を上げたいものの簡単には踏み切れないと頭を悩ませる経営者もいます。

東京 品川区にある印刷会社「文典堂」はコンサートやイベントのチケットなどの印刷を手がけていて、およそ20人の正社員が働いています。

3年前までは基本給を引き上げる「ベースアップ」を全社員を対象に行ってきましたが新型コロナの影響で売り上げが10%から15%減って一律の対応が難しくなり、去年は賃上げの対象を若手などに限りました。

ことしは新型コロナの影響で減っていた受注が戻ってきたり、取引先への価格転嫁が進んだりしたことで売り上げは回復していますが、紙やインクなどの原材料価格の高騰が経営の負担になっています。

そこで賃上げの原資を生み出そうと若手社員を中心としたプロジェクトチームをつくり、印刷技術を使った新たな商品の開発を進めています。

しかし、商品開発の経験がない社員がほとんどで売り上げに貢献できるような商品はまだ生み出せていないのが現状です。
池田社長はことしはすべての社員の賃金を上げたいと考えていますが簡単には踏み切れず頭を悩ませています。

池田大社長は「物価が上がっているので社員が給料をもらった時に『何とか上がって良かったね』と家族に話し、少しでも笑顔が作れるようなことはやってあげたいです。そのための原資が必要なので、受注産業ですが自分たちで考えて売れる物を作ろうということをやっている訳ですが、牛の歩みでちょっとずつです。資材や仕入れの価格が上がっていて一気に上げるのは難しいかなと思います」と話していました。

30代の女性社員は「売り上げ的にも厳しい状況が続いているので、わがままは言えないですが、電気代やガス代も上がっているので、正直に言えば賃上げはしてもらいたいです」と話していました。

利益生み出す工夫も

中小企業の中には、長引くコロナ禍や原材料価格の高騰といった厳しい環境でも工夫によって利益を生み出し賃上げにつなげようという動きが出ています。

茨城県古河市にある従業員およそ50人の「つくば食品」は業務用の調味料を製造し、全国の飲食店やスーパーなどおよそ130社に卸しています。

コロナ禍で外食需要が落ち込み売り上げが減る一方、調味料の原材料となる油や塩などが毎月のように値上がりし仕入れコストは1割以上増えています。

しかし、コストを販売価格に転嫁するのは簡単ではありません。

そこで、力を入れているのが取引先のニーズに合わせた新たな調味料の開発です。

取引先との打ち合わせや自社の工場での試作を繰り返し商品化していて新たに開発する商品は年間およそ130に上ります。

開発のために従業員を9人配置するなど人件費や製造コストはかかりますが取引先の理解を得ながらいちから作ることで適正な価格を設定できるということです。

また、多くの商品の開発を通じて技術力が高まり、コロナ禍で人気が出たいわゆる「内食」向けの開発の依頼など取り引きも増えていて、去年の売り上げはコロナ禍前を上回り、利益も安定して確保できているということです。

店のパスタを家庭向けの冷凍食品として販売しようと調味料の開発を依頼したイタリアンレストランのオーナーは、「コロナ禍もあり家でもクオリティの高い食事を求める客が多い。商品開発で私たちの細かいニーズに応えようとしてくれるので、お互いに利益が出るような取引額で発注したいと思います」と話していました。

会社では、従業員の生活を支えるとともに優秀な人材を確保するため、利益は賃金に反映させようと考えていて、今月インフレ手当を支給したほか、ことし4月からはベースアップ分も含め月額数万円の賃上げを行うことにしています。

営業職の社員の萩野谷巧さん(30)は「買い物に行っても値上がりを感じます。給料が増えるのは嬉しいですし結婚したばかりですが、今後も給料が上がっていけば子どもを持つことなど人生設計も変わるかもしれません。自分がスキルアップして会社にプラスになれば生活にもいい影響が出るので今後も貢献していきたいです」と話していました。
八巻大介社長は「これだけの原材料の高騰は初めての経験で非常にうろたえているのが正直なところで、経営的にも非常に苦しい状況です。大量生産大量消費の時代ではなくなってきていると思うので、付加価値の高いものを特定の客に向けて製造し適正な価格を提示できるような商売の仕方を模索しています。ベアをしながら利益をあげていくことは非常に難しいですが、若い社員たちが未来を描けるような給料体系にしていくことは非常に大切だと思います」と話していました。

連合 芳野会長「中小企業の賃上げ 価格転嫁できるかが重要」

経団連との会談のあと連合の芳野会長は「経団連と連合の考え方がほぼ一致しているという認識をもった」と述べました。

そのうえで、「デフレからの脱却という意味ではことしの賃金改定は非常に重要だと思っている。まだまだ厳しかったり見通しが立たなかったりする産業もあるが、賃金改定というのはことしだけで終わるものではない。継続が非常に重要なのでそういった視点も期待したい」と述べました。

また、「中小企業の賃上げは価格転嫁がどれだけできるかが重要で、そのうえで大手企業の協力が非常に重要だ」と述べました。