草津白根山噴火から5年 監視体制強化も突発的な噴火の備え課題

1人が死亡し、11人がけがをした群馬県の草津白根山の噴火から23日で5年です。
気象庁は重点的に監視していなかった火口で噴火したことを教訓に、全国の火山を再点検し、新たに監視カメラを増設するなど体制を強化してきました。一方、「水蒸気噴火」の発生を予測する手法は今も確立できず、突発的な噴火にいかに備えるかが課題です。

5年前の2018年1月23日、群馬県にある草津白根山の「本白根山」で噴火が起き、噴石により自衛隊員1人が死亡したほか、スキー客など11人が重軽傷を負いました。

気象庁は、北に2キロほど離れた「白根山」山頂付近での噴火を想定して重点的な監視をしていたため、噴火の発生をすぐに把握できず、火山防災の在り方が課題となりました。

このため、気象庁は、24時間体制で監視している全国50の火山について、おおむね過去1万年以内に噴火が起きた詳しい場所を調べ、想定された火口以外での噴火の可能性がある北海道から九州の7火山について、2020年3月までに監視カメラを増設しました。

一方、本白根山で発生した「水蒸気噴火」と呼ばれるタイプの噴火は、明確な前兆を捉えにくく予測が難しいのが実情です。

地殻変動や火山性地震などのデータをもとに予測する研究が進められていますが、具体的な手法は今も確立しておらず、突発的な噴火に、いかに備えるかが依然として課題となっています。

監視体制 強化した火山

監視カメラが増設されたのは、
▽草津白根山のほか、
▽北海道東部のアトサヌプリ
▽栃木と群馬の県境にある日光白根山
▽神奈川県の箱根山
▽大分県の鶴見岳・伽藍岳(がらんだけ)
▽大分県の九重山
▽熊本県の阿蘇山
の7火山です。

「水蒸気噴火」とは

「水蒸気噴火」は、マグマの熱で地下水が熱せられて急激に水蒸気が発生し、火口周辺の土砂や火山灰などを噴き上げる噴火です。

明確な前兆がないまま噴火する場合がある一方、火山性地震などが観測されても、噴火に至らないケースもあり、発生の予測は難しいのが実情です。

噴火の規模としては、マグマが直接噴き出す噴火と比べると小さい傾向にありますが、火口の近くでは噴石などが飛散するため非常に危険です。

死者・行方不明者が63人にのぼった2014年の御嶽山や、2018年の草津白根山の噴火では、いずれも噴火警戒レベルが「1」で突然噴火し、気象庁は噴火後になって、レベルを「3」に引き上げました。

「水蒸気噴火」研究進むも予測困難

水蒸気噴火の解明に向けては、各地で研究が進められています。

東京工業大学の寺田暁彦准教授らは、2018年の噴火発生時に、地下数百メートルに設置した傾斜計で観測されたデータなどを詳細に解析して、地下の構造を調べました。

その結果、本白根山では、火口直下の深さ1キロ前後を中心に、ほぼ直立した岩盤の割れ目が確認され、これが開いて熱水が上昇することで水蒸気噴火を引き起こしたと推測しています。

ただ、さらに過去のデータの解析から、2011年5月には、熱水が上昇しても噴火に至らない“噴火未遂”が起きていたことも分かりました。

依然として、発生の正確な予測には至っていません。

寺田准教授ら研究チームでは、本白根山の水蒸気噴火のメカニズムが明らかになったとしたうえで、さらに観測を続け、噴火の予測に役立てたいとしています。

専門家 “火山のリスク 認識を持つ必要がある”

専門家は、噴火による被害を防ぐには、水蒸気噴火の予想が難しいことを理解し、「火山との距離」を意識しておく必要があると指摘しています。

東京工業大学の寺田暁彦准教授は「草津白根山は、美しい景観や高山植物、珍しい昆虫に出会えるが、車で簡単にアクセスでき、シーズンによっては路線バスが走るなど、とても気軽に火口に近づくことができる。ふだんは美しい自然を楽しむことができるが、ひとたび噴火が起きると命の危険にさらされるおそれがある」と話しています。

そのうえで、箱根山や富士山などのように、人が火口付近に近づきやすい火山は、関東甲信のほか、東北や九州など全国各地にあることを踏まえ、観光客が気軽に訪れることができるため、火山との向き合い方を常に意識しておく必要があると指摘します。

寺田准教授は「活火山である以上、何ら警告なく突然噴火するというリスクは常に付きまとう。火山というのは、そういうものだという認識を持ってほしい」と話しています。

具体的には、
▽噴火が起きた場合には、どのようなルートで逃げるかや、
▽シェルターや大きな岩など、一時的に逃げ込む場所を確認しておくこと、
▽異常と判断したら、気象庁や自治体の情報を待たずに、避難行動を取ってほしいとしています。