ウクライナの地雷除去 日本政府がJICAを通じて支援へ

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに残された地雷や不発弾の除去を支援しようと、日本政府はウクライナの担当者を招いた研修を実施するとともに、地雷探知機をウクライナに供与することになりました。

ウクライナでは、ロシアに占領された地域などに地雷や不発弾が数多く残され、ウクライナの国家地雷対策局によりますと、国土のおよそ4分の1に当たる16万平方キロメートルの土地が、地雷などによって汚染されているということです。

今後の復興に向けて地雷などの除去が課題となっている中、日本政府は、JICA=国際協力機構を通じて、除去作業への支援を行うことになりました。

JICAは、これまでカンボジアやラオスなどに対して過去の内戦などで、設置された地雷の除去への支援を行ってきた経験があり、こうしたノウハウを生かしていくということです。

今月16日からは、地雷の除去作業を行うウクライナ非常事態庁の担当者をカンボジアに招いて、初めて研修を実施しました。
また、東北大学が開発した地雷探知機「ALIS」4台をウクライナ側に供与する予定です。

JICAの平和構築室の室谷龍太郎室長は「戦争が続いている中、急速に新しい地雷や不発弾が増えている状況だ。長く時間がかかる地雷対策をいかに効率的に、かつ人々の生活に被害を生まないような形で進めていくか、蓄積したノウハウを発揮したい」と話していました。

“日本の新技術で地雷除去を”

今回、ウクライナでの地雷除去の支援に乗り出すことになったのは、東北大学東北アジア研究センターの佐藤源之教授です。

長年、アフガニスタンやカンボジアなどで地雷除去のための支援を続けてきた、佐藤教授がみずから開発した最新の地雷探知機「ALIS」が、ウクライナで活用されることになっています。

「ALIS」は、地中レーダーと金属探知機の機能を組み合わせたのが特徴で、地中に埋まった物体を可視化し、効率的に地雷の除去活動を進められるということです。

NHKのインタビューに応じた佐藤教授は「ウクライナでは、カンボジアの農村部で実施してきたような、地中に埋まっている地雷などを撤去するだけでなく、人口が多い都市部で、どこにあるかもわからない爆発物も撤去しなければならない」と述べ、ウクライナでの地雷除去の難しさについて指摘しました。

そのうえで、「私たちが開発した探知機であれば、建物の裏にある地雷を見つけ出すことなどにも使えるのではないかと考えている。従来の金属探知機では対応できなかったところに日本の新しい技術を使い、ウクライナの人たちの安全のために地雷除去を進めたい」と抱負を述べました。

佐藤教授は、今年4月にはポーランドでも、ウクライナの地雷除去のためのフォローアップ研修を予定しているということです。

林外相「日本の経験と知見活用し貢献」

林外務大臣は記者会見で「ウクライナの復旧・復興を進めていく前提として、地雷や不発弾の処理は重要な課題だ。カンボジアなどで復興に協力してきた日本の経験と知見を活用しながら、引き続きウクライナの人々に寄り添った復旧・復興に貢献していく」と述べました。