「ロシアが国際社会に戻る機会を」キッシンジャー米元国務長官

スイスで開かれている通称「ダボス会議」、世界経済フォーラムの年次総会ではウクライナ情勢の今後についても幅広く意見が交わされています。

ベトナム戦争終結に深く関わったアメリカの元国務長官、ヘンリー・キッシンジャー氏もオンラインで参加し、ウクライナ情勢の今後を語りました。

ヘンリー・キッシンジャー氏とは

キッシンジャー氏は、ニクソン政権で大統領補佐官だった当時、極秘に中国を訪問。

ニクソン元大統領の訪中・訪ソを実現させ、米中の国交正常化や、ソビエトとのデタント(緊張緩和)に貢献したとされています。

また、ベトナム戦争終結にも深く関わり、ノーベル平和賞を受賞したアメリカの外交史に名を残す人物です。

現在99歳ですが、17日、オンラインでセッションに参加しました。

「停戦は侵攻前のラインが合理的」

【Q.ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で停戦に向けた条件は何だと思うか?】

去年もここで話す機会があったが正確に理解されなかったので正しく伝えたい。

ウクライナ戦争は、主権国家に対する侵略によって始まった。

そしてロシアの攻撃はウクライナの抵抗にあい、ロシアはどうやらそれに打ち勝つことはできない。

停戦は侵攻前のラインが合理的だ。

ただ、必ずしもそれだけにこだわる必要はない。

アメリカの軍事支援は停戦ラインに達するか、停戦が合意されるまで継続すべきで、必要に応じて支援を増加させるべきだ。

「世界とロシアとの戦争を回避することが大事」

【Q.戦争の激化を防ぐには?】

この戦争が世界とロシアとの戦争になってしまうことを避けることが大事だ。

ロシアは国際社会のシステムのなかに戻る機会を与えられるべきだと思う。

冷戦時代からロシアの圧力にさらされてきた国々には、非常に空虚なものに見えるかもしれない。

ただ、ロシアが国家として破壊されれば、広大な地域が内紛にさらされ、大量の核兵器が領土にある時点で外部からの介入にさらされることになる。

だから私は、戦争が続いている間もロシアと対話し、戦争が終了した時点で、ヨーロッパやアメリカを含めた話し合いのプロセスを継続し、最終的な解決までは制裁などの条件を維持するべきだ。

これが戦争の激化を防ぐ方法だと思う。

「ウクライナのNATO加盟は適切」

【Q.ウクライナのNATO=北大西洋条約機構の加盟はどう考えるか?】

この戦争の前までは、私はウクライナのNATO加盟に反対していた。

まさにいま目の前で起きているようなことにつながりかねないと考えていたからだ。

すでに事態はそこに達してしまい、中立なウクライナという考えは意味をなさない。

ウクライナのNATO加盟は適切だと考える。