政治

新型コロナ 原則今春に「5類」移行検討 岸田首相が指示

新型コロナの感染症法上の位置づけについて、岸田総理大臣は、原則としてことしの春に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚生労働大臣らに指示しました。
岸田総理大臣は、20日、総理大臣官邸で、加藤厚生労働大臣、後藤新型コロナ対策担当大臣と会談しました。

会談では、新型コロナが感染症法で行動制限などの厳しい措置がとれる「2類相当」に位置づけられていることについて感染者数の減少も踏まえ、今後の対応を協議しました。

そして、岸田総理大臣は、新型コロナの位置づけを、原則としてことしの春に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚生労働大臣らに指示しました。

これを受けて厚生労働省の感染症部会で、移行に向けた具体的な議論が行われる見通しです。

「5類」への移行により、一般の医療機関でも患者の受け入れが可能になり、感染者や濃厚接触者の待機などの行動制限もなくなることから、政府は、医療提供体制や医療費の公費負担のあり方を議論する考えです。

また、屋内でのマスク着用の扱いも含めた感染対策や、今後のワクチン接種のあり方などについても検討していく方針です。

岸田首相「足元の感染状況について 全力で取り組む」

岸田総理大臣は、記者団に対し「足元の感染状況については、感染防止対策や医療体制の確保に努め、いわゆる第8波を乗り越えるべく全力で取り組んでいく。一方で、新型コロナの感染症法上の位置づけについては、昨年11月以降、専門家に新型コロナの見直しに向けた議論の深掘りをお願いし、ウイルスの病原性、感染力の評価などを行ってもらい、先週には専門家有志から新型コロナの感染症法上の位置づけに関する考え方も示してもらった」と述べました。

「原則としてこの春に5類感染症とする方向」

「原則としてこの春に『新型インフルエンザ等感染症』から外し、5類感染症とする方向で、専門家に議論していただきたいと考えている」と述べ、新型コロナの位置づけを、ことしの春を原則に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚生労働大臣らに指示したことを明らかにしました。

「具体的な日にち 調整を引き続き行う」

岸田総理大臣は、移行の具体的な時期について「具体的な日にちについては現場の準備などにもかかわるため、調整を引き続き行い、できるだけ早いタイミングで日にちも確認したい。これから来週に向けて感染症部会も開催される。その中で確認していきたい」と述べました。

「公費支援なども具体的な検討を進める」

「感染症法上の位置づけの変更に伴い、患者や濃厚接触者の外出自粛について見直すこととなる。現在講じている公費支援なども具体的な検討を進めている」と述べました。

その上で「これらを含めてウィズコロナの取り組みをさらに進め、平時の日本を取り戻していくため、これまでのさまざまな政策・措置の対応について段階的に移行することとし、具体的な検討、調整を進めていく。一般的なマスク着用の考え方などの感染対策のあり方も見直していくことになる」と述べました。

「早いタイミングで判断すべきという議論行われてきた」

岸田総理大臣は、記者団が「死者数が増えている中で、なぜこの時期に判断したのか」と質問したのに対し「昨年からずっと議論を行い、できるだけ早いタイミングで判断すべきだといった議論が行われてきた。そして先週には、専門家有志から考え方を示してもらった。これを踏まえて、原則的にことしの春に感染症法上の分類を見直すスケジュール感をきょう確認した」と述べました。

加藤厚労相“マスク着用 緩和の方向で”

加藤厚生労働大臣は記者会見で「マスクの着用について見直しをしていくが、今と比べれば、人や場をしぼったつけ方をお願いする方向だ。着用のしかたを緩和する方向での見直しになると思うが、具体的な内容はこれから議論していく。厚生労働省の感染症部会や専門家会合で意見を聞いていきたい」と述べました。

また「まだ感染動向は決して低い水準ではないが、減少傾向に転じている。また、死亡者は週平均ではまだまだ高い水準だが、ワクチン接種の積極的な検討をお願いしているほか、高齢者施設などに検査キットを配って活用してもらう対応も行っている。こうした動向を見ながら、このタイミングで判断させてもらった」と述べました。

見直しの時期を「原則としてこの春」としていることについて「ウイルスの変異の可能性はどうなるか分からないということがある。しかるべきタイミングまでの間に、非常に重篤性の高いウイルスに変異したということになると前提が変わってくる。オミクロン株の特徴を踏まえて対応しているので、原則ということばを使っている」と述べました。

さらに加藤厚生労働大臣は「現在は新型コロナの患者を受け入れる病院が一部に限定されていて、そこに非常に負荷がかかり、ひっ迫している。もっと幅広い対応ができるよう5類への見直しが必要であり、これまで診療していない診療所などが患者を受け入れることがあれば 支援を考えなければならない」と述べました。

そして「今月23日に感染症部会を開催し、論点整理や議論を進めていく。医療提供体制や現在講じている公費支援などは段階的に移行することとし、具体的な検討、調整を進めていきたい」と述べました。

そのうえで「入院調整を病院に任せていいのかという懸念が地方公共団体からあがっている。さらに見直しに伴う地方公共団体などの準備にどれくらい必要なのかどうかも感染症部会で声を聞きながら判断していきたい」と述べました。

後藤新型コロナ対策相「経済効果出てくる」

後藤 新型コロナ対策担当大臣は記者会見で「5類になれば、自由な経済活動が認められるという方向になり、経済効果が出てくる。さまざまな形で経済活動を休止することが少なくて済むことになる」と述べました。

そのうえで「政府も法律に基づく協力要請などはできなくなるが、経済的には平時を取り戻していくにつれ、より高い経済活動とよりよい経済パフォーマンスが生じてくることを希望する」と述べ、経済面での期待を示しました。

医療体制や公費負担 今後の焦点

新型コロナウイルスの感染症法上の分類を5類に見直す議論では、医療体制や公費負担をどうするのかが今後、焦点となります。

【課題1 医療体制】
現在、「2類」以上の強い感染防止策がとれる「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、入院できるのが感染症指定医療機関や、都道府県が認めた医療機関に限られているほか、感染力の強さから院内での感染対策をとった発熱外来での診察を促すため、設置した医療機関には診療報酬の加算が行われています。

5類になれば医療機関を限定する法的根拠がなくなり、一般の医療機関でも入院の受け入れや診察ができることになり、医療のひっ迫が軽減されると期待されています。

しかし、新たに患者を受け入れる医療機関には院内での感染リスクを減らす対応が求められ、感染対策が不十分な場合など、実際には患者を受け入れることができない医療機関が出てくることも懸念されています。

また、病床確保の費用や院内感染対策など国が自治体や医療機関に行っている財政支援を継続するかどうかも焦点となっています。

このほか、現在、保健所などが行っている入院調整がどうなるのかも焦点となっています。

【課題2 医療費など公費負担】
入院や検査の費用については現在、感染症法の規定で公費で負担されています。また、外来診療にかかる費用や治療薬代なども予算措置で公費負担されています。

今後、5類になった場合、原則は入院や検査の費用は保険適用以外の費用が自己負担になります。

さらに外来診療の費用などの公費負担も減らすことになれば、高額な治療薬の代金を患者が負担することになるほか、受診控えから感染発覚や治療が遅れてしまうケースも懸念されています。

このため、当面、公費負担を継続する案が出ています。

【課題3 行動制限】
患者への入院勧告や、患者や濃厚接触者への行動制限も感染症法の分類に基づいて行われていて、感染拡大当初から段階的に緩和され、現在、入院勧告は高齢者などに重点化されています。

また、行動制限も患者は最大7日間、濃厚接触者は家庭内などに限定したうえで最大5日間に短縮されています。

5類に見直された場合、原則は入院勧告や行動制限ができなくなるため、医療従事者などが家族などの濃厚接触者となって出勤できなくなるケースなどが無くなると期待されています。

一方で、感染した場合には周囲に広げないよう行動することを国民に周知し実践してもらうことが求められます。

【課題4 ワクチン公的接種】
新型コロナのワクチンは「まん延予防上緊急の必要がある」として、予防接種法の「特例臨時接種」として無料での接種が進められてきました。

厚生労働省は分類の見直しと平行して、「まん延予防上緊急の必要性がある」という理由が引き続き該当するかどうか専門家で作る分科会で議論を行っていて、今年度中に無料接種を続けるかや対象者をどうするかについて結論を示すことにしています。

【課題5 感染者の把握】
現在の2類相当で医療機関や保健所には国に患者の全数報告が求められていますが、5類になると原則は基幹病院からの定点報告に変更されます。

【課題6 マスク】
国は現在、屋内では距離が確保できていて会話をほとんどしない場合を除いてマスクの着用を推奨しています。

しかし、分類の見直しにあわせ、マスクの着用についても推奨するのは症状があって感染させるリスクのある人などに限定し、原則、不要とする案で見直しを検討しています。

ただ、専門家から、マスクは感染防止対策として重要で、慎重に検討すべきだという意見もあり、今後、方針や時期などを協議していくことにしています。

専門家で作る感染症部会にはかり 省令改正が必要

新型コロナの感染症法上の位置づけについて、国は第6波以降のオミクロン株は従来株と比べて重症化率が低い傾向にあったことやオミクロン株に対応したワクチン接種が開始されたことなどを受け、去年から季節性インフルエンザと同じ5類への引き下げも含め、見直しに向けた議論を行ってきました。

ただ、厚生労働省の専門家会合では、新型コロナはインフルエンザと同等と判断できる条件を現時点で満たしていないとする指摘も出ていました。

今後、分類を5類に変える場合、厚生労働省は専門家で作る感染症部会にはかったうえで省令改正を行う必要があります。

厚生労働省は来週から感染症部会を開き、現在の感染状況をみたうえで、5類へ移行する具体的な時期など見直しの方向性を判断していくことにしています。

そして来月以降、医療費の公費負担や、医療提供体制のあり方などについて、具体的な議論を詰めていくことにしています。

松野官房長官「知見ふまえ議論進めていく」

松野官房長官は、午後の記者会見で「今後、オミクロン株とは異なる変異株が登場するなど科学的な前提が異なる状況になれば対応を見直すことになるが、専門家からオミクロン株は感染力が非常に高いものの、発生初期と比較して重症化率や死亡率が低下しているなどの意見をもらっており、こうした知見をふまえて議論を進めていく」と述べました。

またワクチン接種について「予防接種法に基づき実施しており、その期間はことし3月末までとなっている。4月以降のあり方については、感染症法上の位置づけの変更にかかわらず、厚生労働省の審議会で議論を始めたところで、費用負担のあり方についてもその議論を踏まえながら検討していきたい」と述べました。

さらに、中国本土からの入国者などを対象に行っている臨時的な水際措置について「当面今回の措置を行いながら、中国の感染状況などを見つつ柔軟に対応していく。感染症法上の位置づけ変更に伴い、水際措置のあり方も見直すこととなるが、今後については、内外の感染状況や主要国の水際対策の状況などを踏まえながら引き続き適切に判断していく」と述べました。

永岡文科相「学校の対策 専門家の意見聞きながら検討したい」

永岡文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「学校における新型コロナ対策については、感染拡大の防止と学校教育活動の継続の両立を図ることで、子どもたちが安全安心な環境の中で充実した学校生活を送ることができるよう、専門家の意見なども聞きながらしっかりと検討していきたい」と述べました。

その上で、学校でのマスクの着用については「児童や生徒は大変だとは思うが、政府が決める基本的な感染症対策のあり方をしっかりと守りつつ対応したい」と述べました。

鈴木財務相「公平性の観点なども踏まえ議論」

鈴木財務大臣は、新型コロナの感染法上の位置づけを、「5類」に移行する方向で検討を進めるよう岸田総理大臣から指示が出たことに関連して、20日の閣議のあとの記者会見で「5類への見直しを行うということであれば、当然、今までの公費負担の在り方を考えることになる。基本的には、ほかの疾病との公平性の観点なども踏まえ、関係省庁と議論していきたい」と述べました。

立民 泉代表「ワクチンや治療薬の公費負担は継続すべき」

立憲民主党の泉代表は記者会見で「ワクチンや治療薬の公費負担は継続すべきだ。さまざまな会合で、あいさつする人はマスクを外し、聞いている人は着用することがよくあり、国民は矛盾を感じている。外国との比較の中で、いつまで続けるのかという疑問も寄せられており、マスク着用の見直しは一つの流れだ」と述べました。

小池都知事「段階的に移行進めるべき」

東京都の小池知事は20日の記者会見で「コロナと共存する社会の実現に向けた議論が開始されるが、法的な位置づけが変わってもウイルスの病原性や感染力は変化するものではない」と指摘しました。

その上で「都民や国民の不安を招くことがないよう段階的に移行を進めるべきだ。類型が変わっても医療提供体制を確保しなければならず、公的な資金の確保などを国に要望していきたい」と述べました。

一方、位置づけの見直しに伴うマスク着用のあり方について「専門家にも相談しながら、マスクの着用が必要となる状況や場面がどういうものなのかを、できるだけわかりやすくまとめてもらうよう、お願いしているところだ」と述べました。

介護施設“入院先見つからない現状悪化するのでは”

新型コロナの感染症法上の分類を5類に見直すことについて、介護施設からは、感染した高齢者の入院先がなかなか見つからない現状が悪化するのではないかと懸念する声があがっています。

千葉県市川市にある特別養護老人ホーム「親愛の丘市川」では、去年11月から12月にかけて利用者と職員あわせて23人が感染するなど、これまで3度のクラスターを経験しています。

医療機関のひっ迫で感染しても入院できずに施設で療養を続けるケースが相次いでいて、体調が急変した高齢者の搬送先が4時間決まらず、その後、死亡したケースもあったということです。

施設長の千野哲孝さんは「感染症法での分類が5類に変わっても、病原性が変わるわけではなく、患者を受け入れる病院が急に増えるとは思えません。いまも県や保健所などと一緒に必死に受け入れ先を探しているのが現状で、保健所などの介入がなくなって病院探しがより困難になると、命の危険にさらされる人が増えるのではないか」と話しています。

このため、5類になっても、マスクの着用や健康観察など基本的な感染対策は緩められないとしていて、「公費で治療やワクチンを受けられなくなったり、緩和ムードが広がったりした場合、施設での感染リスクも高まると想像しています。経済を止めないことは大事ですが、高齢の親をデイサービスやショートステイなどに預けて働く人も多く、施設内で感染が広がることの影響や、重症化してしまう人たちのことも考えた議論をしてほしい」と話していました。

医師から国に調整を求める声

新型コロナの感染症法上の分類を5類に見直すことについて、患者の対応にあたってきた医師は、医療ひっ迫の解消に向け、見直し後に各地の医療機関がどれだけ患者を受け入れることができるかを調査するなど、国に調整を求める声があがっています。

東京 北区の「いとう王子神谷内科外科クリニック」は発熱外来を設置していて、新型コロナの患者は年末年始のピーク時に比べると落ち着きつつある一方で、年明け以降、若い世代を中心にインフルエンザの患者が増加しています。

こうした中、感染症法上の分類を5類に見直す動きについて、クリニックの伊藤博道院長は、「これまで患者を診てきた立場から見て、コロナは感染性が強く怖い病気だという印象があり、不安のほうが強いというのが正直な思いだ。5類への見直しは必要だと思ってはいるが、現状では治療薬の確保などがまだ十分に進んでおらず、インフルエンザと同じと見なすにはまだ時間がかかる」と話していました。

一方、分類の見直しによって一般の医療機関での患者の受け入れが進めば医療のひっ迫が軽減されると期待されていることについては、「入院できなくて命を落としているお年寄り、基礎疾患の重い患者の命を救うことができると期待できるが、実際に多くの医療機関が対応するのかは疑問だ。見直しまでの期間で各地の医療機関がどれだけ受け入れられるかを調査するなど、国による調整や支援が必要だ」と話していました。

全国知事会「現場に混乱生じさせず円滑な移行を」

全国知事会は「岸田総理大臣の重い決断を高く評価する。国民や、保健・医療の現場に混乱を生じさせず、円滑な移行を実現するとともに、国民の生命や健康を守ることができるよう、現場を預かる知事と十分に協議したうえで万全の対策を講じるよう強く求める」とするコメントを出しました。

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