防衛力の抜本的な強化に伴う防衛費増額の財源について、政府・与党は去年の年末、4分の3は歳出改革などで確保したうえで、残る4分の1は、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税を行って賄うとする方針を決定しました。
ただ、自民党内の議論で、増税に反対する議員などが「拙速に議論を進めるべきではない」と強く反発したことを受けて、増税の実施時期については「2024年以降の適切な時期」とするにとどめ、ことし改めて議論することになっています。
増税に否定的な立場の議員は安倍派に多く、安倍元総理大臣の生前の発言も踏まえ、「財源の確保は国債で対応すればいい」などと主張しています。
防衛費増額の財源の在り方を議論 自民党の特命委が初会合
防衛費増額の財源について議論する、自民党の特命委員会の初会合が開かれました。一部の議員からは、年末に決定した政府・与党の増税の方針に否定的な意見も出され、国債の償還期間の延長を含め、増税以外で賄う財源の在り方について議論していくことを確認しました。
防衛費増額の財源について、政府・与党は去年の年末、法人税などの増税によって4分の1を賄う一方、4分の3は歳出改革などで確保する方針を決めましたが、自民党は、依然として党内に増税への反対論があることも踏まえ、19日、増税以外で賄う財源を議論する特命委員会の初会合を開き、およそ60人の議員が出席しました。
委員会のトップを務める萩生田政務調査会長は「財源のうち、税については税制調査会で一定の道筋をつけてもらったが、その他の事項は、党内にさまざまな意見がある。海外からも高く評価されている防衛力強化の取り組みが絵に描いた餅にならないよう、責任ある議論を行っていきたい」と述べました。
このあと、一部の議員が、政府・与党の増税方針について「去年の議論は丁寧さを欠いていた」としたうえで、「必要な財源の確保は、増税ではなく国債で対応すればいい」などと主張しました。
これに対し、増税を容認する議員からは、方針は決定済みだとして、国債に頼ることに否定的な意見が出されました。
このほか、多くの議員から「政府の歳出改革などの具体策がはっきりせず、党としてしっかり議論する必要がある」という指摘が相次ぎました。
これを受けて特命委員会では、現在60年となっている国債の償還期間の延長で財源を確保する案の是非も含め、増税以外で賄う財源の在り方について、議論していくことを確認しました。
特命委 設置の経緯は


こうした中、自民党の萩生田政務調査会長は、増税の実施時期を決める前に、増税以外で賄う財源について議論する場を設けたいとして、みずからをトップとする特命委員会を設置しました。
特命委員会では、政府が増税以外で賄うとしている4分の3の財源を実際に確保できるか検証するとともに、財源の上積みを目指して、現在60年となっている国債の償還期間の延長なども検討し、増税額の圧縮につなげたい考えです。
一方、こうした動きに対し、政府側や増税を容認する議員からは「決定した増税の方針を覆すものになりかねない」とか「国債のルールを変えると財政規律が緩むおそれがある」といった指摘に加え、党内の対立が深まることにつながらないか懸念する声も出ています。
特命委員会では、政府が増税以外で賄うとしている4分の3の財源を実際に確保できるか検証するとともに、財源の上積みを目指して、現在60年となっている国債の償還期間の延長なども検討し、増税額の圧縮につなげたい考えです。
一方、こうした動きに対し、政府側や増税を容認する議員からは「決定した増税の方針を覆すものになりかねない」とか「国債のルールを変えると財政規律が緩むおそれがある」といった指摘に加え、党内の対立が深まることにつながらないか懸念する声も出ています。
安倍派 稲田元防衛相「財源の議論深掘りすることは重要」

安倍派の稲田元防衛大臣は、記者団に対し「財源の議論を深掘りすることは重要だ。『増税をやめろ』という話ではなく、歳出改革や決算剰余金の活用などが果たして恒久財源と言えるのか深掘りすることに意義がある」と述べました。
また、国債の償還期間の見直しについては「ルールをやめれば、財源になると主張する議員も結構いたが、債務残高の対GDP比は全く変わらないので、それが防衛費の財源になるというのは違っていると申し上げた」と述べました。
また、国債の償還期間の見直しについては「ルールをやめれば、財源になると主張する議員も結構いたが、債務残高の対GDP比は全く変わらないので、それが防衛費の財源になるというのは違っていると申し上げた」と述べました。
安倍派 柴山元文科相「増税方針含めしっかり議論を」

安倍派の柴山元文部科学大臣は、記者団に対し「防衛財源については、特に『歳出改革で1兆円』の根拠が極めて薄弱だと発言した。経済成長した場合の増収がどれぐらいになるのかといった根拠も、まだ十分に議論が詰まっていない。場合によっては増税で賄う割合を減らすことができるのではないか。去年の年末に政府・与党として決めた増税の方針を含めて、ことしもしっかり議論するのは当然あるべき方向だ」と述べました。
安倍派 谷川衆院議員「増税なき防衛力の抜本的強化へ取り組み」

安倍派の谷川とむ衆議院議員は、記者団に対し「年末の議論で、増税を行うのは『適切な時期』となっているので、確定しているわけではなく、増税は最後の手段だ。まだまだ工夫することによって、増税をしなくても防衛力の強化ができるのではないか。国債の償還ルールの見直しによって財源が生まれるので、もう一度議論し、『増税なき防衛力の抜本的強化』に向けた取り組みを進めたい」と述べました。
麻生派 岩屋元防衛相「国債の償還期間見直しはごまかしに近い」

麻生派の岩屋元防衛大臣は、記者団に対し「萩生田政務調査会長が整理していたが、去年の年末に『税金でお願いすべきところはお願いする』とした合意を前提に今回の議論を行っているので、そこが崩れることはない。ただ、残りの歳出改革などで財源を賄うことが本当にきちんとできるか議論し、詰めていくことで、国民の理解を得る努力を続けていく」と述べました。
また、国債の償還期間の見直しについては「借金で防衛力を整備することにほかならないので、ごまかしに近い案だ。最終的に採用されることはないと確信している」と述べました。
また、国債の償還期間の見直しについては「借金で防衛力を整備することにほかならないので、ごまかしに近い案だ。最終的に採用されることはないと確信している」と述べました。
岸田派 石原衆院議員「増税方針は特命委の大前提」

岸田派の石原正敬衆議院議員は、記者団に対し「増税の方針は特命委員会の大前提であり、それはもう変わらない。一方で、国民への説明が足りず、誤解も多いので、議論を尽くし、財源の確保策を国民にきちんと示すことが大切だ」と述べました。
石破元幹事長「今からでも中身は何なのか 積み上げを」

石破元幹事長は記者団に対し「安全保障は、金額や財源ありきで最初から決めつけられるものではなく、今からでも中身は何なのかを積み上げていかないと、納税者の納得は得られない。防衛費を増やさなくてはならないが、危機感だけあおるのは、やり方として正しいとは思わない」と述べました。
また、国債の償還期間の見直しについては「新たな借換債を発行しなければならず、国民の負担が魔法のようになくなるわけではない。国民に負担をお願いする時はきちんとすることが、責任ある政府だ」と述べました。
また、国債の償還期間の見直しについては「新たな借換債を発行しなければならず、国民の負担が魔法のようになくなるわけではない。国民に負担をお願いする時はきちんとすることが、責任ある政府だ」と述べました。
松野官房長官「自民党の議論踏まえ内容具体化を」

松野官房長官は、午後の記者会見で「自民党の議論について予断を持ってコメントすることは控えたい。政府としては、防衛力強化の財源について自民党でしっかり議論いただいたうえで、それを踏まえて財源確保の内容の具体化をさらに進めていきたい」と述べました。
一方、国債の償還期間を延長して、償還のための予算の一部を防衛費増額の財源に充てる意見については「これまで政府として答弁しているとおりだ」と述べ、慎重な考えを重ねて示しました。
一方、国債の償還期間を延長して、償還のための予算の一部を防衛費増額の財源に充てる意見については「これまで政府として答弁しているとおりだ」と述べ、慎重な考えを重ねて示しました。
国債「60年償還ルール」とは
政府が発行した国債は、満期が来たときに1度に全額を償還するのは難しいことから、その多くは「借換債」と呼ばれる新たな国債を発行して償還にかかる費用を賄っています。
一方で、全額を60年かけて返済するという「60年償還ルール」にもとづいて、毎年度の予算で発行残高のおよそ60分の1に当たる1.6%を債務の償還費に充てていて、新年度=令和5年度予算案では16兆7561億円を計上しています。
「60年償還ルール」は、道路などを整備するための「建設国債」の発行が1966年度から始まったことを受けて、インフラの耐用年数が60年程度だという考え方を踏まえて1967年度に運用が始まり、その後、「赤字国債」にも適用されています。
法律にもとづいて毎年、発行残高の1.6%を一般会計から国債を管理する特別会計に繰り入れるとされています。
これについて自民党内では、ルールの見直しで償還期間をさらに長くして、償還に充てる費用の一部を防衛費の財源に充てるべきだという意見が出ています。
仮に償還期間を20年延長した場合、新年度予算案の債務償還費は12兆円余りとなる計算です。
ただ、債務償還費を減らした場合、その分、借り換えのために発行する「借換債」が増えて国債全体の残高が膨らむこととなり、新たな財源としては適当ではないという指摘もあります。
政府は、償還ルールを見直せば、日本の財政に対する市場の信認を損ない、長期金利の上昇を招くことにもなりかねないとして慎重な考えです。
松野官房長官も、今月12日の記者会見で「60年償還ルールが市場の信認の基礎として定着している現状を踏まえれば、財政に対する市場の信認を損ねかねないといった論点がある」と述べています。
一方で、全額を60年かけて返済するという「60年償還ルール」にもとづいて、毎年度の予算で発行残高のおよそ60分の1に当たる1.6%を債務の償還費に充てていて、新年度=令和5年度予算案では16兆7561億円を計上しています。
「60年償還ルール」は、道路などを整備するための「建設国債」の発行が1966年度から始まったことを受けて、インフラの耐用年数が60年程度だという考え方を踏まえて1967年度に運用が始まり、その後、「赤字国債」にも適用されています。
法律にもとづいて毎年、発行残高の1.6%を一般会計から国債を管理する特別会計に繰り入れるとされています。
これについて自民党内では、ルールの見直しで償還期間をさらに長くして、償還に充てる費用の一部を防衛費の財源に充てるべきだという意見が出ています。
仮に償還期間を20年延長した場合、新年度予算案の債務償還費は12兆円余りとなる計算です。
ただ、債務償還費を減らした場合、その分、借り換えのために発行する「借換債」が増えて国債全体の残高が膨らむこととなり、新たな財源としては適当ではないという指摘もあります。
政府は、償還ルールを見直せば、日本の財政に対する市場の信認を損ない、長期金利の上昇を招くことにもなりかねないとして慎重な考えです。
松野官房長官も、今月12日の記者会見で「60年償還ルールが市場の信認の基礎として定着している現状を踏まえれば、財政に対する市場の信認を損ねかねないといった論点がある」と述べています。