米独国防相会談 ウクライナへのドイツ製戦車供与の議論 焦点に

ウクライナへの軍事支援をめぐってアメリカのオースティン国防長官とドイツのピストリウス国防相による会談が行われ、攻撃能力の高いドイツ製戦車のウクライナへの供与をめぐりどのような議論が交わされたか注目されます。

アメリカのオースティン国防長官はドイツの首都ベルリンを訪れ、日本時間の19日夜、ドイツのピストリウス国防相と会談を行いました。

会談の冒頭、オースティン国防長官は「ウクライナの人々がロシアによる侵略に抵抗し、領土を防衛することを支援し続ける」と述べ、ウクライナへの軍事支援をめぐって協議する考えを示しました。

また、ピストリウス国防相は「両国はウクライナを引き続き支援していく」と述べるにとどまり、軍事支援の焦点となっているドイツ製戦車の供与については言及しませんでした。

ただ、会談では、イギリスが今月、戦車「チャレンジャー2」のウクライナへの供与を決めたなかで、ドイツの戦車「レオパルト2」の供与についても協議したとみられます。

ウクライナなどからは「レオパルト2」の供与を求める声が上がっていますが、ドイツとしては攻撃能力の高い戦車を供与することで、戦闘が一層激化するという国内の懸念などを背景に慎重な姿勢を示しています。

今月20日にはドイツ西部で欧米各国がウクライナへの軍事支援を話し合う会合が開かれる予定で、これを前にどのような議論が交わされたか注目されます。

ロシア「紛争のレベルを引き上げることを意味する」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は19日、ウクライナへの軍事支援をめぐり欧米側が戦車の供与などを議論していることについて「紛争の性質を新たなレベルに引き上げることを意味する。世界やヨーロッパの安全保障にとって良い兆しとはならない」と述べ強くけん制しました。

また、ロシアの前の大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は19日SNSにメッセージを投稿しました。

このなかで、欧米側が20日にドイツ西部でウクライナへの軍事支援について話し合う予定だと指摘したうえで「彼らはロシアの敗北を求めている。核保有国が敗北すれば、核戦争を引き起こしかねない。核保有国は自国の運命がかかっている大きな紛争で負けることはない」と強調しました。

メドベージェフ氏はロシアの核戦力などを巡っても強硬な発言を繰り返しています。

ドイツ「レオパルト2」とは

ドイツ軍の戦車「レオパルト2」は、生産が開始されて以降、改良が繰り返されて、さまざまなバリエーションが存在し、世界で最も近代的な戦車の一つとされています。

メーカーのホームページによりますと、このうち「A5」というタイプは、全長が9.67メートル、幅が3.67メートルで、主砲として120ミリ砲を搭載し、最高速度は時速70キロです。

ドイツ軍の装備に詳しいドイツ国防戦略研究所のミヒャエル・カール氏は「砲撃をしながら移動しても照準がずれない。それがほかの戦車と比べたレオパルト2の特徴だ」と説明するとともに、走行スピードが速く機動性にもすぐれていると指摘します。

そのうえで、地上戦には戦車と歩兵戦闘車を組み合わせた運用が不可欠で、ドイツやアメリカなどが今月供与を決めた歩兵戦闘車に加え、「レオパルト2」の供与が重要だとして、「戦車と歩兵戦闘車の組み合わせがまさしく近代の戦争に必要なものだ。戦車が供与されればウクライナ軍にとって防衛だけでなく、攻撃などあらゆる戦闘に役立つことになる」と述べ、ロシアから領土の奪還を進めるウクライナの後押しになるとの見方を示しました。

また、「レオパルト2」についてイギリスのシンクタンク、IISS=国際戦略研究所の軍事専門家は、ドイツ以外にポーランドやフィンランド、それにカナダなど15か国が保有しているとしています。

IISSは「レオパルト2がウクライナ軍の目録に登録される可能性が高まっているが、戦場に与える影響は供給される数に左右される」として、ウクライナがまとまった数を確保できるかが焦点になると指摘しています。

イギリス「チャレンジャー2」とは

イギリスがウクライナへの供与を決めた陸軍の主力戦車「チャレンジャー2」は、戦車戦を想定して開発され、1994年からイギリス陸軍で運用されています。

イギリス陸軍によりますと乗員は4人で、主砲として120ミリ砲を備え、最高速度は時速59キロです。

火力だけでなく、防御も重視されているのが特徴だとしています。

これまで、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボ、それにイラクでの作戦に使われたということです。