企業の障害者雇用率 段階的に引き上げ 3年後に2.7%に 厚労省

企業に義務づけられている障害者の雇用率について、厚生労働省は現在の2.3%から段階的に引き上げ3年後に2.7%とすることを決めました。

障害者雇用促進法では企業に対し従業員に占める障害者の割合を一定以上にするよう義務づけていて、現在は2.3%となっています。

これについて、厚生労働省は、障害者の働く場をさらに確保するため、3年後に2.7%とすることを18日開かれた審議会で決めました。

引き上げは2段階に分けて行い、▽2024年4月に2.5%とし、▽2026年7月に2.7%にします。

また、国や地方公共団体の雇用率は現在の2.6%を3年後に3%に、教育委員会は現在の2.5%を3年後に2.9%に引き上げます。

審議会では、障害者団体から雇用率の引き上げにあわせた対応の強化を求める声が上がった一方、企業側からは数字の達成のみを優先すると雇用の質の向上が難しいとして率の設定や引き上げる時期への懸念も出されました。

こうした意見も踏まえ、会議の冒頭に厚生労働省が示した案では2.7%への引き上げ時期を3年後の4月としていましたが、結局、3か月後の7月となりました。

厚生労働省によりますと去年6月時点で企業で働く障害者は61万人余りと増え続けていますが、雇用率を達成した企業は48%にとどまっていて、厚生労働省は障害者の雇用を増やす企業への助成金を拡充するなどの対応も進めることにしています。

障害者雇用と法定雇用率

障害者の働く場を確保するため障害者雇用促進法では、企業に対し、従業員に占める障害者の割合を一定以上とすることを義務づけています。

この前身となる法律ができたのは、
▽1960年で、戦争で負傷した兵士を雇用することを目的に、身体障害者を対象として、職種によって1.1%や1.3%といった雇用率を設定していました。

その際、企業での障害者雇用は努力義務でした。

▽1976年には、法改正によって障害者雇用が義務化され、雇用率は1.5%に設定されました。

▽1987年には障害者雇用促進法という、今の法律の名称に変わり、雇用率は、
▽1988年に1.6%に、
▽1998年には、知的障害者を対象に含めたうえで1.8%に、
▽2013年には、2%に引き上げられました。

また、
▽2013年の法改正では、精神障害者も対象に含めることになりました。

その後、雇用率は、
▽2018年に2.2%
▽2021年に2.3%と、
随時、引き上げられ現在に至っています。

さらに、
▽去年の法改正では、短時間勤務を希望する精神障害者がいることなどを考慮して、週10時間以上20時間未満で働く障害者についても、雇用率に反映させることになりました。

現在、従業員100人を超える企業では、雇用率を達成していない場合、不足分1人につき、5万円の納付金を納めることになっています。

障害者の雇用率をめぐっては2018年に複数の中央省庁で水増しが行われていたことが問題となりました。

この問題を調査した検証委員会の報告書では、中央省庁の28の機関で合わせて3000人以上の水増しが行われ、障害者手帳を確認せずに、人事記録などをもとに計上していたケースや、障害者雇用の対象とならない職種を計上するケースがあったと指摘されました。

専門家 “「量」から「質」の時代へ”

障害者雇用に詳しい慶應義塾大学の中島隆信教授は「障害者雇用は、数合わせのように雇用率を達成する「量」の時代から、企業の収益に貢献する業務に関わってもらうために、仕事の内容を見直す「質」へと転換してきている。機械的な雇用率の引き上げだけでなく、幅広い視点から議論を行っていくべきだ」と指摘しています。

そのうえで、「障害者雇用の場では、調子の波が出てしまう精神障害、発達障害の人たちの働く場を、どう広げるかが課題となっている。そうした人たちを1つの企業、部署で雇うのは難しいので、複数の障害者を複数の企業で雇い、その日に調子のいい人が働くなど、「働き方」の方法を考えていくことが必須になってくる」と話していました。