この歌で泣いた。ふたたび響く応援ソング

この歌で泣いた。ふたたび響く応援ソング
「きみの足のその下にはとてもとても丈夫な『ばね』がついてるんだぜ」

本格的な受験シーズン、不安の中にいる受験生の背中をそっと押してくれる歌があります。

その歌が流れたのは17年前のこと。当時はまだよちよち歩きだった幼な子も、高校3年生になりました。

『ぼよよん行進曲』

親子の思い出とともに多くの共感を呼んでいます。

(ネットワーク報道部 廣岡千宇 玉木香代子 池田侑太郎 松山局 後藤茂文)
※記事の最後に、ロングバージョンの歌詞を掲載しています。

♪ おしつぶされそうな そんなときだって

今月14日、大学入学共通テストの初日。

深夜、試験を終えた受験生がSNSにメッセージを投稿しました。
「ぼよよん行進曲、流れたらしい。今聞いたんだけど、教科書のうえで泣いた」

♪ 虹のふもとで

同じように、その歌にひかれている高校生がいました。

埼玉県にある叡明高校の吹奏楽部。去年、マーチングコンテストの全国大会に初めて出場し、銀賞を受賞。地域のイベントで『ぼよよん行進曲』を演奏していました。

3年生で部長を務める恒國里奈さん。幼い頃、テレビから流れる歌を聞いていた記憶があります。今は勉強や部活でうまくいかなかったときに勇気づけられています。
恒國里奈さん
「幼い頃は歌詞の意味も分からず踊っていましたが今はわかります。『にじのふもとでえがおでまってるきみがいる』のように必ず成功すると信じて頑張っています」

♪ ぼよよよ~んと高く

『ぼよよん行進曲』は2006年(平成18年)4月、2歳から4歳向けの教育番組「おかあさんといっしょ」で最初に放送されました。子どもたちも新しい生活が始まる新年度らしい「元気をもらえる曲」として選曲されました。
意外にも、放送当初に目立ったのは「これは子育て応援歌だ」といった保護者からの反響でした。

番組は、必ずしも子どもが理解できる言葉でなくても良いというのがコンセプトです。幼い頃には分からなくても、子どもたちが成長していく中で将来、心の琴線にふれることがあるかもしれない。

歌詞にも、そんな思いが込められていました。

♪ きみの足のその下には

高校3年生の受験生がいる母親(48)は、共通テストの日、『ぼよよん行進曲』をきっかけに、娘の成長を振り返りながら目頭が熱くなっていました。

『ぼよよん行進曲』は、まだ歩き出したばかり娘がお気に入りの歌でした。サビのところで両脇を抱きあげて、ジャンプさせてあげると大喜びしていました。

この歌のように、すくすくと成長してくれた娘。しかし、新型コロナで状況は一変しました。
中学校を卒業する頃からコロナ禍での生活を余儀なくされ、卒業式は大幅に短縮されました。

高校の入学式は動画が配信され、PDFが添付されたメールでクラス名簿を受けとり、自宅のリビングでパジャマ姿のまま校長先生の話を聞きました。

高校に初めて登校したのは、とっくに桜が散った梅雨の季節。真新しい制服を着ることもなく、初めて袖を通したのは夏用の半袖でした。
学校行事が中止になり、校内活動も制限され、部活を楽しみにしていた娘は知らない間に退部していました。

行事の提出物をいつまでも出さないことを叱ったとき、「だってこれも中止になっちゃう。頑張って書いたって捨てるだけ!」と言い返され、何も言葉が出ませんでした。

対面での授業が少しずつ再開されると、娘は希望の進路を見つけました。高校で履修できなかった科目を塾に通って勉強したいとまで意欲を見せるようになりました。

試験の当日、見送った娘の幼い頃を思い出し、『ぼよよん行進曲』とのめぐり合わせにこみ上げてくるものがありました。

おねえさんとおにいさんが語りかけてくれる歌詞のなかに、好きな言葉があります。
「どんな大変なことが起きたって、きみの足のその下には、とてもとても丈夫な『ばね』がついているんだぜ」

そして続く「知ってた?」

その歌詞が“自分では気づかないけれど、逆境にも耐える力があるんだよ”というエールのように聞こえました。

♪ 大事ないまを生きてるんだぜ

誰もが壁にぶつかったり、理想と現実のあいだで悩み、くじけそうになったりする。

そんなとき、どうやって前を向いたらいいんだろう。
2011年3月11日。あのときも『ぼよよん行進曲』に支えられた人たちがいました。
「幼い子どもをかかえ、途方に暮れていたときに聞いて、自分でもびっくりするくらい声をあげて泣いたんだよな」
「避難してまた戻ったとき、子どもたちの楽しそうな顔を見て親はみんな泣きながら歌って踊った」
長年、応援歌をつくり続け、誰かを励ますことに人生を捧げてきた人がいます。

スキージャンプの葛西紀明選手にも応援歌を贈ったことがあるという井手次郎さん(44)。
音楽ユニットのボーカルとして活躍したあと、コロナ禍で苦しむ企業や困難に立ち向かう人たちに向けて歌をつくり続けてきました。

『ぼよよん行進曲』の魅力は、その“高低差”に秘められている。応援歌のプロはそう受けとめています。
「歌の始まりは“どんなたいへんなことがおきたって”、2番の始めも“なんでそんなふうにうつむいているの”と。歌詞自体を読んでみると重くるしさもあるかもしれません。
それでも、リズム感のあるメロディーとともにそんな状況を“ぼよよよーん”と跳ね返していける。その高低差があるはずなのに、聞いているうちに自然と心が軽くなるような不思議な力を秘めた歌です」
「この歌からは、“頑張れ”ではなく“大丈夫”というメッセージが伝わってきます。

私も実は息子がもうすぐ高校受験。父親としてどんな風に言葉をかけていいのか難しいときもあります。そんなときにこそこの歌を聞かせてあげられたらと思います」

♪ 星のしずくは 初めてのあしたへとつづく

高校3年の娘が大きな関門に臨んでいる48歳の母親。

コロナ禍に翻弄されながらも将来に向かって羽ばたこうとしている娘を支えることができるのは、あと1か月と少しくらいかもしれないと、ふと思うそうです。
母親
「子どもたちは自分なりの目標を見つけ、手を伸ばそうとしています。行進曲の歌詞にあるように『あのほしさえ てがとどきそう』になるといいのですが、それよりも『ほしのしずくは はじめてのあしたへとつづく』。将来を考え模索したこと、それに向かって努力を重ねたことが同じようにコロナ禍で過ごしてきた子どもたちの未来を形づくっていくといいな」
受験が終わって桜の便りが届く頃に、娘は延期の末、中止になった修学旅行の代わりに京都へ卒業旅行に行くのを励みに勉強机と向き合っています。
母親
「これからもこの歌が、挑戦する子どもたち、門出を迎える子どもたちの応援歌であり続け、世代をこえて歌い継がれることを願います」
終わりの見えないコロナ禍、止まらない物価高。

まだまだ先を見通すことができない時代に、そっと背中を押してくれる。

そんな歌だからこそ、多くの人の心に響いているのかもしれません。
「ぼよよん行進曲」~ロングバージョン~
(歌詞:中西圭三・田角有里 作曲:中西圭三 編曲:小西貴雄)

どんなたいへんなことがおきたって
きみのあしのそのしたには
とてもとてもじょうぶな「ばね」がついているんだぜ

(しってた?)

おしつぶされそうな そんなときだって
ぐっとひざっこぞうにゆうきをため

「いまだ!スタンバイ!オーケー!」

そのときをまつのさ

ぴゅ~ら~り~ら~
かぜがきみをよんでいるよ
ぴゅ~ら~り~ら~ら~

いまこそ!

ぼよよよ~んとそらへ とびあがってみよう
ほらあのくもまで てがとどきそう
ぼよよよ~んとたかく とびこえてゆこう
にじのふもとで えがおでまってるきみがいる

あるけ あるけ あるけ
すすめ すすめ すすめ
あるけ あるけ あるけ
すすめ すすめ すすめ

あるけ あるけ あるけ
すすめ すすめ すすめ
あるけ あるけ あるけ
すすめ すすめ すすめ

なんでそんなふうにうつむいているの
おもいだして あしのした
とてもとてもだいじな いまをいきてるんだぜ

(そうでしょ?)

きみがほんとうに たかくとびたいなら
やっぱひざっこぞうにゆめのせて

「いちどしゃがんでジャンプ!」

きぶんはどうだい?

ぴゅ~ら~り~ら~
かぜもきみをおいかけるよ
ぴゅ~ら~り~ら~ら~

それゆけ!

ぼよよよ~んとそらへ とびあがってみよう
ほらあのほしさえ てがとどきそう
ぼよよよ~んとたかく とびこえてゆこう
ほしのしずくは はじめてのあしたへとつづく

ぼよよよ~ん yeah yeah yeah
ぼよよよ~ん yeah yeah yeah
ぼよよよ~ん yeah yeah yeah

ぼよよよ~ん