経団連の基本方針では「『物価動向』を特に重視しながら企業の社会的な責務として賃金引き上げのモメンタムの維持や強化に向けた積極的な対応を呼びかけていく」として、食料品やエネルギーなどの物価上昇を踏まえた賃上げの必要性を打ち出しています。
そのうえで「近年に経験のない物価上昇を考慮した基本給の引き上げにあたっては定期昇給などに加え、ベースアップの目的や役割を再確認しながら前向きに検討することが望まれる」としています。
ベースアップをめぐっては去年の基本方針では収益が拡大した企業を対象としていましたが、ことしは対象を限定せず幅広い企業に対しベースアップを前向きに検討するよう求めています。
そのうえで、ベースアップが難しい企業に対しては、物価動向に対応した手当を新たに設けることなど対応を呼びかけています。
一方、日本全体で賃金引き上げの機運を醸成するには働く人のおよそ7割を占める中小企業の賃上げが欠かせないとして、大手企業などとの取り引きで製品やサービスの価格を適正に転嫁するための環境整備を進めていく姿勢を打ち出しています。

【詳しく】春闘 賃上げどこまで? 経団連の方針・民間の予測は?
食料品をはじめとした生活必需品や光熱費など物価の上昇が相次ぐなか、労使双方が賃金や一時金などについて交渉する、ことしの「春闘」がまもなくスタートします。
その春闘をめぐって経営側の指針となる経団連の基本方針が発表されました。ここ最近の物価上昇を踏まえ、去年よりも幅広い企業に対し「ベースアップ」を前向きに検討するよう求めていて、労働組合側も高い水準の賃上げを求める動きが広がっています。
物価上昇のなかでどこまで賃上げが広がるのか?エコノミストの予測は?ことしの春闘の先行きについてまとめました。
経団連 基本方針「基本給引き上げ 前向きに検討を」

基本方針をとりまとめた経団連の経営労働政策特別委員会の大橋徹二委員長は会見で「デフレからの脱却と人への投資にギアを上げて積極的に対応していくタイミングだと思う」と述べ、ことしの春闘の重要性を強調しました。
そのうえで、大橋委員長は「GX=グリーントランスフォーメーションで仕事が増えていく職種など賃金レベルが高いところに人が移っていくことが大事ではないか。企業がサポートしたり政府や地方自治体がリスキリングなどの機会を与えたりすることで、日本全体が生産性が高く、給与レベルの高い産業にシフトしていくと思う」と述べ、日本全体として賃金を引き上げていくには、労働力の円滑な移動に向けた環境整備が必要だという認識を示しました。
そのうえで、大橋委員長は「GX=グリーントランスフォーメーションで仕事が増えていく職種など賃金レベルが高いところに人が移っていくことが大事ではないか。企業がサポートしたり政府や地方自治体がリスキリングなどの機会を与えたりすることで、日本全体が生産性が高く、給与レベルの高い産業にシフトしていくと思う」と述べ、日本全体として賃金を引き上げていくには、労働力の円滑な移動に向けた環境整備が必要だという認識を示しました。
労働組合側は高水準の賃上げ求める
ことしの春闘に向けては物価の上昇などを踏まえて労働組合側からも高い水準の賃上げを求める動きが広がっています。
労働組合の中央組織「連合」はベースアップ相当分と定期昇給分とをあわせて5%程度という平成7年以来の高い水準を掲げています。
連合に加盟する主要な産業別労働組合では、
▼繊維、流通、サービス業などの労働組合で作る「UAゼンセン」がベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて6%程度という2012年の発足以来最も高い水準の賃上げを掲げています。
▼機械や金属産業などの中小企業の労働組合で作る「JAM」は、8年ぶりに要求水準を引き上げ平均賃金で月額1万3500円以上の賃上げを求めます。
▼大手電機メーカーなどの労働組合でつくる「電機連合」は、定期昇給分を確保した上で、ベースアップ相当分として去年を大きく上回る月額7000円以上の賃上げを求めることで調整を進めています。
▼自動車メーカーや部品会社などの労働組合でつくる「自動車総連」は、一律の要求額は掲げないもののそれぞれの労働組合ごとに中長期的に目指すべき賃金水準に向けての賃上げを求めていく方針です。
連合とは別に自動車や電機のメーカーなど5つの産業別労働組合が加盟する「金属労協」は、ベースアップ相当分として去年の2倍にあたる月額6000円以上の賃上げを求める方針です。
さらに別の労働団体の「全労連」は、定期昇給分も含めて賃金の10%以上、月額3万円以上の引き上げを求める方針で議論を進めています。
労働組合の中央組織「連合」はベースアップ相当分と定期昇給分とをあわせて5%程度という平成7年以来の高い水準を掲げています。
連合に加盟する主要な産業別労働組合では、
▼繊維、流通、サービス業などの労働組合で作る「UAゼンセン」がベースアップ相当分と定期昇給分をあわせて6%程度という2012年の発足以来最も高い水準の賃上げを掲げています。
▼機械や金属産業などの中小企業の労働組合で作る「JAM」は、8年ぶりに要求水準を引き上げ平均賃金で月額1万3500円以上の賃上げを求めます。
▼大手電機メーカーなどの労働組合でつくる「電機連合」は、定期昇給分を確保した上で、ベースアップ相当分として去年を大きく上回る月額7000円以上の賃上げを求めることで調整を進めています。
▼自動車メーカーや部品会社などの労働組合でつくる「自動車総連」は、一律の要求額は掲げないもののそれぞれの労働組合ごとに中長期的に目指すべき賃金水準に向けての賃上げを求めていく方針です。
連合とは別に自動車や電機のメーカーなど5つの産業別労働組合が加盟する「金属労協」は、ベースアップ相当分として去年の2倍にあたる月額6000円以上の賃上げを求める方針です。
さらに別の労働団体の「全労連」は、定期昇給分も含めて賃金の10%以上、月額3万円以上の引き上げを求める方針で議論を進めています。
全国の企業の賃上げ率は去年5年ぶりにアップ どこまで上昇するか

厚生労働省が従業員100人以上の全国の企業を対象に行った調査によりますと、2000社あまりが回答した去年の調査では、賃上げ率は1.9%となり5年ぶりに上昇に転じていました。
この賃上げ率がことしはどこまで拡大するかが焦点となります。
この賃上げ率がことしはどこまで拡大するかが焦点となります。
エコノミストの予測は“平均2.85%”

こうしたなか、公益社団法人の日本経済研究センターがことしの春闘での見通しについてエコノミスト33人に尋ねたところ、賃上げ率の予測は平均で2.85%となっています。
このうち、ベースアップ分の平均は1.08%、定期昇給分の平均は1.78%となっています。
それぞれの予測では、最も高かったのは3.8%、最も低かったのは2.3%だったということです。
このうち、ベースアップ分の平均は1.08%、定期昇給分の平均は1.78%となっています。
それぞれの予測では、最も高かったのは3.8%、最も低かったのは2.3%だったということです。
専門家 “業績厳しい中小企業でも賃上げを”

日本総合研究所の山田久主席研究員は「これだけ物価が上がってくると、当然、賃金が上がらないと生活が厳しい従業員も出てくるので、やはりモチベーションに関わってくる。さらに企業は人手不足になっており、やはり賃上げに対してベアを含めて前向きになってきていると感じる」と話しています。
そのうえで、中小企業の賃上げについて「エネルギーや原材料価格の高騰で業績が厳しいところがたくさんあり、なかなか大手企業ほどには賃上げがしにくいのが中小企業の実態だ。大手が賃上げしても、経済全体で見ると一部であり、中小企業で働いている人たちは非常に多いので、最終的に中小企業にまで賃上げが波及していかないと全体としていい流れにつながっていかない」と指摘しました。
一方、ことしの春闘での賃上げ率については、大手企業で2%後半からおよそ3%になることが期待できるとしています。
そのうえで「急激な物価上昇が起きているため、賃金もいきなり大きく変動させることは実態として難しい。賃上げ率そのものは久々に高い数字にはなると思うが、物価の上昇分をカバーするまでには残念ながら難しいのではと考えている。数年かけて物価上昇を上回る賃上げ率を目指していくスタンスが大事になる」と話しています。
そのうえで、中小企業の賃上げについて「エネルギーや原材料価格の高騰で業績が厳しいところがたくさんあり、なかなか大手企業ほどには賃上げがしにくいのが中小企業の実態だ。大手が賃上げしても、経済全体で見ると一部であり、中小企業で働いている人たちは非常に多いので、最終的に中小企業にまで賃上げが波及していかないと全体としていい流れにつながっていかない」と指摘しました。
一方、ことしの春闘での賃上げ率については、大手企業で2%後半からおよそ3%になることが期待できるとしています。
そのうえで「急激な物価上昇が起きているため、賃金もいきなり大きく変動させることは実態として難しい。賃上げ率そのものは久々に高い数字にはなると思うが、物価の上昇分をカバーするまでには残念ながら難しいのではと考えている。数年かけて物価上昇を上回る賃上げ率を目指していくスタンスが大事になる」と話しています。
大手企業 賃上げ決める動き 目立つ

「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは、ことし3月から国内の社員の年収を最大でおよそ40%引き上げることを決めました。
国内と海外の報酬の差をなくし、能力や実績などに応じた形にすることが目的で、物価の上昇も踏まえつつ、国際的な人材獲得競争に対応する狙いがあるとしています。
国内と海外の報酬の差をなくし、能力や実績などに応じた形にすることが目的で、物価の上昇も踏まえつつ、国際的な人材獲得競争に対応する狙いがあるとしています。

日本生命は営業職員およそ5万人を対象に固定給と成績に応じた「成果給」を合わせた全体でことし7月から7%程度引き上げる方向で労働組合と調整に入る方針です。
またビールメーカーの間では、ベースアップを検討する動きが相次いでいます。
サントリーホールディングスはことしの春闘で5年ぶりにベースアップを行う方向で検討を進めていて、定期昇給分などを含め平均6%程度引き上げる方向で労働組合との交渉を進める方針です。
また、アサヒビールがベアを含む平均5%ほどの賃上げ、サッポロビールもベアを行う方向で検討しています。
このほか製造業では、キヤノンが20年ぶりに基本給を一律で引き上げる事実上のベースアップを行う方針を決めたほか、NECが総人件費を3%あまり増やした去年と同じ規模での賃上げを続ける方針を示しています。
また、三菱自動車工業が物価上昇に対応する支援金として最大10万円を支給するなど、一時金の形で待遇の改善を進める動きも出ています。
またビールメーカーの間では、ベースアップを検討する動きが相次いでいます。
サントリーホールディングスはことしの春闘で5年ぶりにベースアップを行う方向で検討を進めていて、定期昇給分などを含め平均6%程度引き上げる方向で労働組合との交渉を進める方針です。
また、アサヒビールがベアを含む平均5%ほどの賃上げ、サッポロビールもベアを行う方向で検討しています。
このほか製造業では、キヤノンが20年ぶりに基本給を一律で引き上げる事実上のベースアップを行う方針を決めたほか、NECが総人件費を3%あまり増やした去年と同じ規模での賃上げを続ける方針を示しています。
また、三菱自動車工業が物価上昇に対応する支援金として最大10万円を支給するなど、一時金の形で待遇の改善を進める動きも出ています。