ロシア “総司令官に参謀総長任命“で新聞「大規模攻撃前夜」

ロシアでウクライナへの軍事侵攻の指揮を執る新たな総司令官に、軍の制服組トップのゲラシモフ参謀総長が任命されました。ロシアの新聞の中には「大規模な攻撃前夜だ」という見方を伝えるところも出ています。

ロシア国防省は11日、ショイグ国防相が、軍事侵攻の指揮を執る新たな総司令官にゲラシモフ参謀総長を任命したと発表しました。

ロシアで軍の制服組トップの参謀総長が、軍事作戦でみずから指揮を執るのは異例のことです。

国防省は「任務の規模拡大に対応し、部隊間の緊密な連携や補給物資の質の向上などを進めるためだ」と説明しています。

ロシアの新聞各紙はこの発表を大きく取り上げていて、このうち有力紙の「独立新聞」は、陸軍や航空宇宙軍のトップなど3人がウクライナでの軍事作戦の副司令官に就いたことも指摘しながら「全軍が作戦に深く関与することになり、ウクライナへの大規模な攻撃の前夜を意味するだろう」という見方を伝えています。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ロシア軍の指揮統制を改善し作戦を強化する必要に迫られたものだ。プーチン政権が長期戦に臨む考えがあることを示すねらいもあるだろう」と分析しています。

ウクライナ側は、ことしの早い時期に首都キーウなどへ、再び大規模な攻撃を仕掛けてくるのではないかと警戒を強めています。

ゲラシモフ参謀総長とは

ゲラシモフ氏は現在67歳で、2012年、国防相の交代などプーチン大統領による人事の刷新が進むなか、参謀総長に任命されました。

ゲラシモフ氏は、1999年に始まった第2次チェチェン紛争などにも参加したほか、参謀総長としては2015年、テロとの戦いを名目にシリアの空爆に乗り出した際も軍を率いました。

ウクライナ侵攻後の去年4月には、極秘にウクライナ東部を訪れたのを確認したと、アメリカ国防総省が明らかにしていて、ロシア軍の苦戦が伝えられていた東部の戦況を挽回するために訪問したとも報じられました。

ロシア国防省が去年10月にウクライナ東部ドネツク州のリマンからの撤退を発表した際には、チェチェンの戦闘員を率いる武闘派のカディロフ氏から名指しで批判されました。

先月にはゲラシモフ参謀総長が解任されるといううわさがSNS上で出回っているとして、ロシア国防省が「公務を続けている」と反論する声明を出すなど、その進退が取り沙汰されることもたびたびありました。

ゲラシモフ参謀総長は、クリミア併合の前年にあたる2013年、講演の場で21世紀の戦争は平時との境界があいまいで、情報戦などの非軍事的手段の役割が大きくなるなどと述べ、いわゆる「ゲラシモフ・ドクトリン」として広まったことでも知られています。