新型コロナ専門家会合“死者数の過去最多続き今後も増加懸念”

新型コロナウイルス対策について助言する、厚生労働省の専門家会合が開かれ、亡くなる人の数が過去最多となる状況が続き、高齢者施設や医療機関での集団感染が増加傾向になっていると指摘しました。今後も感染者数の増加が続き、亡くなる人がさらに増えることが懸念されるとして、医療体制の強化や重点化、それに感染対策の継続が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について、全国では年末年始に一時的に減ったあと、再び増加傾向が続いていて、特に中国・四国、九州などでは、増加の幅が大きくなっているとしています。

亡くなった人の数は、過去最多を超える状況が続いていて、さらに高齢者施設や医療機関での集団感染も増加傾向にあり、亡くなる人が増加することが懸念されるとしています。

また、病床使用率は、多くの地域で5割を超え、7割を超える地域もみられるほか、救急搬送が困難なケースも去年夏の第7波のピークを超えて、増加傾向が続いており、救急医療体制の確保に注意が必要だとしました。

今後も多くの地域で感染者数の増加傾向が続くと予測され、ワクチンの接種や感染から時間がたって免疫のレベルが下がることや、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加していること、それに、中国での感染拡大や、国内に流入した場合に、感染状況に与える影響にも注意が必要だと指摘しました。

さらに、季節性インフルエンザも全国で流行期に入っていて、学校の再開後に新型コロナとインフルエンザの同時流行に注意が必要としています。

そのうえで、専門家会合は、高齢者や重症化リスクの高い人に適切な医療を提供するための医療体制の強化や、重点化が必要だとしています。

また、オミクロン株対応のワクチンの接種を呼びかけるとともに、自分で検査できる抗原検査キットを準備して感染に備えるよう求めています。

そして、飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、
換気の徹底、症状があるときは外出を控えるといった基本的な感染対策の徹底を改めて呼びかけました。

新規感染者数 すべての都道府県で前週より増加

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、10日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて1.28倍と増加し、すべての都道府県で前の週より感染者数が増えています。

【首都圏の1都3県】
▽東京都が1.13倍
▽神奈川県が1.16倍
▽埼玉県が1.23倍
▽千葉県が1.26倍と増加しています。

【関西】
▽大阪府と兵庫県が1.35倍
▽京都府が1.22倍

【東海】
▽愛知県が1.29倍
▽岐阜県が1.32倍
▽三重県が1.23倍と増加しています。

また、
▽徳島県で1.53倍
▽石川県と鹿児島県、沖縄県で1.51倍
▽静岡県で1.46倍
▽山口県で1.44倍などと、
西日本を中心に増加の幅が大きくなっていて、
すべての都道府県で前の週と比べて増加しています。

【人口10万当たりの直近1週間の感染者数】
▽宮崎県が1897.76人と全国で最も多く、
次いで、
▽佐賀県が1701.29人
▽山口県が1541.06人
▽鳥取県が1505.40人などと22の県で1000人を超えていて、
▽東京都は729.19人
▽大阪府は905.71人
そして、
▽全国では934.24人となっています。

“感染者数 報告よりもかなり多いか 実態把握の必要”

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は、一日に報告される新型コロナの死者の数が高い水準となっていることについて、「感染者数が増えているため、高齢者や基礎疾患のある人の感染も増えていて、ウイルス性肺炎というよりは、基礎疾患の悪化による死亡も増えているが、さらに深掘りの分析が必要ではないかという議論があり、今後、分析や調査をしていく必要がある。一方、感染者数は、報告よりもかなり多いのではないかという意見もあり、実態把握の必要があると考えている」と述べました。

“強制力を伴う措置見直しを”

新型コロナウイルス対策として行われている強制力を伴う措置について、現状では自由や権利の制限が必要最小限にとどまっていないとして、国に対しこうした措置を速やかに見直すよう求める提言を倫理や法律の専門家がまとめました。

提言は生命倫理や法律の専門家らが11日、行われた厚生労働省の専門家会合に示しました。

提言では新型コロナウイルスは感染症法に基づいて行われる入院勧告に従わない場合に罰則があるなど、強制力を伴う措置の対象とされているものの、現状では措置の有効性と人権の制限のバランスが釣り合わず、必要最小限度を超えた人権の制限を容認している状態が続いているなどと指摘していて、速やかに見直すよう国に求めています。

そのうえで提言では、障害者や高齢者について接触によるケアが不可欠で、制限がもたらす影響は見過ごせないとして、施設での面会や付き添いが速やかに再開できるよう、実態調査や指針の策定を行うよう求めています。

また、新型コロナの感染対策で、最大限の措置をとらざるを得なかった時期に導入され広がった、現時点で有効とは言い難い、過度な対策などをとりやめるべきことを明確に示す必要があるとしています。

提言をまとめた東京大学医科学研究所の武藤香織教授は「社会を少しずつもとに戻していくにあたって、過剰な対策や人々の行動への過剰な介入をやめるよう呼びかける必要がある」と話しています。