ウクライナ東部で攻防激化 地元の親ロシア派“町の掌握”主張

ウクライナ東部でロシア軍が、ウクライナ側の拠点バフムトの掌握をねらって激しい砲撃を繰り返す中、地元の親ロシア派は、近郊の町を掌握したと主張しました。ウクライナ軍は徹底抗戦を続けていて、攻防が一層激しくなるものとみられます。

ウクライナ東部ドネツク州のバフムトをめぐって、ロシア軍は激しい砲撃を繰り返しながら、北に10キロほどの町ソレダールで、民間軍事会社の戦闘員を投入して突破を図り、地元の親ロシア派の指導者は11日、ロシアメディアに対して、町全体を掌握したと主張しました。
これまでにウクライナ側からの反応は出ていませんが、マリャル国防次官は10日、「ソレダールで、敵はみずからの人的被害などかまわず、徹底して突撃を続けている」とSNSに投稿していました。

一方で、ウクライナはバフムトの防衛のために徹底抗戦を続ける姿勢を強調していて、ロシア側との攻防は、一層激しくなるものとみられます。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は10日、「ロシア軍はソレダールで戦術的な利益を得るために何か月も苦戦してきた。町を掌握したとするロシア側の主張を額面どおりに受け止めたとしても、それがバフムトの即時包囲につながるわけではない」と分析しています。

軍事評論家ベレゾベツ氏“ソレダール周辺で厳しい戦いに”

ウクライナ東部のドンバス地域での戦闘について、軍事評論家で現在はウクライナ軍の部隊に所属しているタラス・ベレゾベツ氏が、NHKのオンライン取材に答えました。

この中でベレゾベツ氏は、ドネツク州でウクライナ側の拠点となっているバフムトの近郊での攻防について「ロシア側は、以前はバフムトを正面から攻撃してきたが、それによって数千人の兵士を失った。このため、今回は、周辺からウクライナ軍を包囲しようという作戦に変えている。こうしたことからロシア側は、バフムト近くのソレダールを掌握しようとしているのだ」とロシア側の戦略を分析しました。

そのうえで「ロシア側は、4人から15人程度の少数部隊に分かれて攻撃をしかけてくるため、撃破するのが難しくなっている。民間軍事会社『ワグネル』の戦闘員などが、昼夜を問わず攻撃を仕掛けてくるようになっている。15分おきに攻撃が行われているところもある」と述べ、ロシア側は、激しい市街戦を展開していると指摘しました。

そして「ウクライナ側にとって、これから数日間は、ソレダール周辺で厳しい戦いになる」という見通しを示しました。

一方で、ベレゾベツ氏は「ロシア軍が、バフムトやソレダール周辺での戦闘に集中している間に、ウクライナ軍は、別の作戦も準備している。ヘルソンを解放したような作戦は起こりえる」と述べ、ウクライナが、去年11月に南部の要衝ヘルソンを奪還したことを引き合いに出し、戦略に基づいて着実に戦果を収めていきたいという考えを示しました。