ビジネス特集

企業の経営トップがみる2023年の景気は

ことしの景気はどうなるのか。経済3団体の新年祝賀会で8人の経営トップにその見通しを聞きました。

2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻、歴史的な水準で進む物価上昇、急速な円安など、日本経済や企業の業績に大きな影響を与える動きが相次ぎました。

経営者たちが挙げる見通しの根拠にもそれぞれの個性や特色が出ています。
(経済部記者 甲木智和)

景気の平均は『2.3』

今回、NHKでは、8つの企業の経営トップに対し、2023年の景気が良くなる場合には「+1」から「+5」。

悪くなる場合には「-1」から「-5」までの数字で示してもらいました。

その結果です。
8人の平均は「2.3」。

新年の祝賀会ですので、期待を込めて上向きな数字を示すケースも多いですが、ことしは少し慎重な印象を受けます。

+4)すかいらーくホールディングス 谷真 会長兼社長

すかいらーくホールディングス 谷真 会長兼社長
ことし上期は緩やかに景気回復し、基本的にはインフレもピークアウトするだろう。製造業を中心に日本の経済は良くなっていくと思う。

そのなかで需要が大きく膨らみ、ことし下期にかけて明らかに景気は良くなると思う。

輸入食材を含めたコストプッシュによってやむをえないインフレが続いている状況だろうと思うが、今回の春闘も含めた賃上げを企業の皆様がそれなりに対応されると考えているので、そこから本当の意味での正しい物価上昇というか、需要が増すことによる結果として物価が上がってくる。

こういう時代が下半期から、第4四半期=来年にかけて日本経済を上向きにしていく原動力になっていくと考えている。

+3)ANAホールディングス 芝田浩二 社長

ANAホールディングス 芝田浩二 社長
アフターコロナを受け、世界経済はずいぶんと落ち着きを取り戻した。

航空事業の需要動向は国内線、国際線ともに着実に回復していて、主にビジネス需要には力強さを感じる。

ことしの下期、年末にかけて日本の景気はしっかり回復すると期待を寄せている。

訪日需要は間違いなく勢いを取り戻すと感じている。

韓国や台湾、オーストラリアなどからはどんどん伸びている。

ことし中にはコロナ前をりょうがするまで伸びてくるかもしれない。

コロナ前、全体の3割ほどを占めた中国はゼロに近い状態だが、中国からの旅行者が、どの程度戻ってくるかが今後を見極める材料になる

+2)IHI 満岡次郎 会長

IHI 満岡次郎 会長
アメリカを中心にリセッション=景気後退が大きな話題となっている。欧米についても、ゼロコロナ政策から距離を置いた中国についても、何が起きるか分からない。

それに比べて、日本経済は、しっかりとした形の成長が頑張ればできるのではないかという期待を込めた。

「備えで攻める」だ。

この1年、あるいはここ数年間で、想像を超えるようなことがさまざま起きた。これからの時代は、そのようなことに対してどう備えていくのか、どう前向きに取り組んでいくのかが必要だ。

発想豊かに準備をし、必要なところに投資をどう展開していくのかという点に本格的に取り組む1年だと考えている

+2)AGC 平井良典 社長

AGC 平井良典 社長
下期になってより回復度合いが強くなると見ている。

ロシア・ウクライナ問題とそれに関連する原材料高、アメリカを中心としたインフレと金利高、中国のゼロコロナ政策からの転換に伴う混乱という、3つの要素がいつ回復に向かうかがポイントだ。

少なくとも、アメリカと中国の動向は下期には回復すると見ている。

この2つの大国が経済回復することになれば、日本経済も追い風が吹くと見ている

+2)三井物産 堀健一 社長

三井物産 堀健一 社長
物価高は若干警戒しているが、新型コロナからの回復需要はまだまだ取り込める余地があるし、日本は欧米に比べてあとになって出てくるので、ことしは期待している。

将来の低炭素社会に向けた事業開発や研究投資を進めていく必要があるので、時間軸をよく意識して、今と将来の両方をにらみながら『現実解』を提供することが非常に大事だ。

引き続きエネルギーの需給関係は不確実性が高いと思うので、この1年間も脇をしめる対応が必要だ。

とにかく調達を分散してバックアップのサプライチェーンをいかに構築していくかが大事だ。

+2)三菱UFJフィナンシャル・グループ 亀澤宏規 社長

三菱UFJフィナンシャル・グループ 亀澤宏規 社長
基本的には、緩やかに回復していく。

サービスを中心に個人消費も強く、企業の業績もまあまあで、設備投資にも強さがある。

さらに、インバウンドの回復や政府の経済対策もあるので、こういう見方にさせていただいた。

為替はまだ揺れ動くと思うが、去年あれだけ動いたので、一定の範囲の中での動きになるかなとは思う。

基本的には、大きな変動というよりは、安定した動きがいい。

株価については私自身は、それほど悲観的ではない。

日本はゆるやかな成長とみているし、アメリカの経済もそれほど大崩れはしないのではないか。

リスクを言うとすれば、アメリカのインフレが長期化してうまくコントロールできないということが起きることが一つのリスクだ

+2)ディー・エヌ・エー 南場智子 会長

ディー・エヌ・エー 南場智子 会長
ポストコロナで、インバウンドなど今まで抑制されていたものが強烈にカムバックする1年になるのではないか。

海外経済にリスクはあるが、珍しく日本が海外経済に頼らず内需で良い景気になる可能性が高い。

(国内でのスタートアップ企業の育成について)政府が5か年計画を作ったので民間はそれ以上に頑張らないといけない。

ディー・エヌ・エーもまだ世界で大勝ちしていないので、10倍高い天井をめざして競争力を高めていきたい。

日本経済の中長期的な最大のリスクは経済のダイナミズムがないことだ。

新しいヒーローがどんどん生まれてくる土壌をつくらないと、日本経済が競争力を失うことになってしまう

+1.5)サントリーホールディングス 新浪剛史 社長

サントリーホールディングス 新浪剛史 社長
まだまだインフレは続くと思う。上期はサプライチェーンをはじめとした物価上昇で大変厳しい状況になるが、下期に少しずつ良くなってくると思う。

すでにプライベートブランドや安いものへという志向が続いている。その中でも、4月を中心に賃上げが徐々に起こり、少しずつ良いものを買いたい、おもしろいものを買いたいというふうになってくるのではないか。

インフレで社員の生活レベルが下がってきている。それを支えるのが経営として必要なことじゃないかと思う。

イノベーションを起こすためには活力ある会社にしなければならない。そのための賃上げは経営者としては大変重要な『人への投資』だ。

景気の回復に向けて 経営者の責任重く

経営トップたちが次々と口したのは、アメリカや中国の経済や物価の動向、ロシアやウクライナの情勢など「海外での動き」でした。

もちろん日本国内の景気にとってこうした外部要因は大きな影響となります。

ただそれでも、日本企業の経営者が主体的に動くかどうかは重要なカギとなります。

今回の経営者たちのことばからは、国内の景気をみずから上向かせたいという強い意志があまり感じられなかったという印象も受けました。

日本経済が好循環に転じるためには、なんといっても、ことしは物価上昇のなかで賃上げがどこまで進み、広がるかにかかっています。

そうした中、景気が上向く要因として、「賃上げの動きが広がり、国内消費が拡大する」といった要素がほとんど聞かれなかったことはやや気になります。

さらには、日本のおよそ7割が働く中小企業にまで賃上げの動きが広がらなければ、消費の拡大、経済の好循環はとうてい実現しません。

経営者たちの責任はいままで以上に重く、前向きな動きの広がりを期待したいところです。
経済部記者
甲木 智和
2007年入局
経済部、大阪局を経て現所属
財界・商社取材を担当

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