【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(1月1日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる1月1日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

キーウ 攻撃を受けたホテルでは

31日のロシア軍による攻撃で被害を受けた首都キーウにあるホテルは、建物の一部が大きくえぐられるように破壊されていて、一夜明けた1月1日午前、現場ではがれきを片付ける作業が行われていました。

また、このホテルから100メートルほど離れた建物でも、窓ガラスが大きく壊れるなどの被害が見られ周辺の道路には、ガラスの破片があちらこちらに散乱していました。

ホテルの近くで働く72歳の男性は「きのうは、着弾の瞬間は見ていませんが、衝撃を感じました。攻撃してきた彼らは人間ではない。私たちは、必ず勝つ」と話していました。

また、ホテルの前を通りかかった29歳の女性は「きのうは、お互いのことを思いやる大事な日なのに、ロシアは休日も祝日も気にせず攻撃してきます。こんなことはすべきではありません」と話していました。

ロシア軍の攻撃 年明けの1月1日もやまず

ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナでは、年が明けた1月1日も攻撃がやむことはなく、キーウの市当局がSNSに投稿したところによりますと、未明に複数の攻撃があり、上空で撃墜したものの、破片が車に落下するなどの被害が出たということです。

また南部ヘルソン州の知事は、31日に重要インフラが攻撃を受け、州都ヘルソンや周辺の村で電力の供給が止まったとSNSに投稿し、住民が停電の中で新年を迎える厳しい状況を訴えました。

一方、プーチン大統領は31日、ウクライナに隣接し、前線に近い南部ロストフ州にある軍の司令部で、国民向けのテレビ演説を行い「道徳的、歴史的正義はわれわれの側にある」と主張し軍事侵攻を改めて正当化しました。

そして、ロシアへの制裁を強める欧米を批判しながら、「愛する祖国の未来のために前進し勝利しよう」と述べ、国民に軍事侵攻への支持と協力の継続を求めました。

これについてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、プーチン大統領がみずからを戦時中の有能な指導者のように演出したものだと指摘したうえで「国民に戦争とそのコストを正当化することに依然として力を注いでいる」という見方を示しました。

ゼレンスキー大統領「これまでどおりの生活を取り戻す年に」

ゼレンスキー大統領は12月31日の演説で「新年はわれわれの領土、捕虜になった兵士やこれまでどおりの生活を取り戻す年にしよう。そのために戦う準備はできている」と述べ、国民に結束を呼びかけました。

独 ショルツ首相「ウクライナ支援を続ける」

ドイツのショルツ首相は新年にあわせた12月31日の国民向けのビデオ演説で、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領を「ヨーロッパの中心で帝国主義的な侵略戦争を行っている」と強く非難しました。

そして「ウクライナを数日で屈服させようというプーチンのもくろみは成功せず、むしろウクライナはドイツの助けも得て勇敢に防衛を続けている。われわれは支援を続ける」と述べ、軍事面も含めた支援を続ける方針を強調しました。

また、ロシアがドイツ向けのパイプラインを通じた天然ガスの供給を大幅に削減したことについて「ドイツは屈しなかった」と述べ、暖房の燃料などに使うロシア産ガスが減っても節約などによりこの冬を乗り切れる見通しだとして、国民の取り組みに感謝しました。

ヨーロッパでは侵攻の影響によるエネルギー価格の高騰など暮らしへの負担が強まっていますが、ショルツ首相は「われわれの結束は最大の強みだ。この1年で決めた道を進もう」と述べ、ロシアに対抗していくため国民へ引き続き結束を呼びかけました。

仏 マクロン大統領「ウクライナ勝利までともに歩む」

フランスのマクロン大統領は、新年を前に31日、国民向けのビデオ演説で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に触れ「この一年、フランスはヨーロッパとともに ウクライナを助けるため、自由と権利の声をあげてきた。多くのフランス市民がウクライナからの難民を町や村に受け入れ、連帯を示した」と述べ、これまでの支援を強調しました。

そのうえで「ウクライナの友人たちに、今夜ここで申し上げたい。国を守るために戦うあなたがたの姿は勇ましく、私たちを勇気づける。2023年も私たちはあなたのそばで勝利のときまで手を差し伸べ、永続的な平和を築くために、ともに歩む」と述べ、今後も変わらない支援を約束しました。

イギリス国防省 新年の休暇期間も攻撃の可能性

戦況を分析しているイギリス国防省は31日「ウクライナの人々の士気を下げるため、今後、数日以内にロシアが攻撃を行う現実的な可能性がある」と指摘し、家族などと過ごす新年にあわせた休暇期間にもウクライナのエネルギー施設などに対する大規模な攻撃を行う可能性があるとの見方を示しています。

ロシア 大みそかも各地にミサイル攻撃

ウクライナメディアなどによりますと、ロシアは大みそかの31日もウクライナ各地に対してミサイルなどを使って攻撃しました。

これまでに首都キーウでは1人が死亡し20人がけがをしたほか、南部のザポリージャ州やミコライウ州でも、複数のけが人が出たということです。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は31日、SNSでロシアにより巡航ミサイル20発以上が発射され、このうち12発を迎撃したとしています。

プーチン大統領「ただ戦い、前進しなければならない」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は31日、プーチン大統領がウクライナに隣接する南部ロストフ州にある軍の南部軍管区の司令部を訪れたと発表しました。

国営のタス通信によりますと、プーチン大統領は侵攻の指揮を執るスロビキン総司令官などに勲章を授与したほか、兵士たちとも会い「あきらめるという選択肢はない。ただ戦い、前進しなければならない」と述べ、攻撃を続ける姿勢を改めて強調しました。

ロシア国防相「勝利は新年と同じく必ず訪れる」

ロシアのショイグ国防相は12月31日、新年を前に公開された動画で「この1年、われわれは時の流れを変えるような重大な試練に直面してきた。ロシアに関するすべてが破棄され、冒とくされている」と述べ、ウクライナへの軍事侵攻を改めて正当化しました。

また、侵攻に参加している兵士に向けて「諸君は家族から離れて新年を迎え、『特別軍事作戦』を進める上での非常に困難な任務を果たしている。この1年は祖国の戦史に永遠に刻まれるだろう」などとねぎらいました。

そのうえで「われわれの勝利は新年と同じく、必ず訪れる」と呼びかけ、目的を達成するまで侵攻を続ける姿勢を強調しました。

首都キーウの爆発で日本人1人けが

ウクライナの首都キーウのクリチコ市長は12月31日午後、ロシア軍による攻撃があり、日本人1人がけがをして病院に搬送されたと、SNSで明らかにしました。

ウクライナの内相の顧問はSNSで、クリチコ市長の話として、負傷した日本人は、日本の新聞社に所属するジャーナリストだと明らかにしました。

朝日新聞社によりますと、ウクライナの首都キーウでけがをした日本人は、映像報道部に所属する関田航さん(36)だということです。

当時、滞在しているホテルの敷地内の屋外にいて、右足のふくらはぎにけがをし、病院で手当てを受けているということです。会社では、さらに詳しい状況について確認を進めているとしています。

首都キーウで複数の爆発音

ウクライナの首都キーウで現地時間の12月31日午後、複数の爆発音のような音が聞こえました。

爆発音のような音は、現地時間の午後2時ごろから少なくとも5回程度聞こえ、NHKの取材班がいるホテルからは、遠くに白い煙が上がっている様子が確認できました。

ウクライナでは12月31日も午後から全土で防空警報が出され、キーウでもクリチコ市長が市民に避難を呼びかけていました。

ウクライナ高官がNATOの早期加盟を訴え

ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記が首都キーウでNHKのインタビューに応じました。

ダニロフ書記は、ゼレンスキー大統領が12月21日にアメリカを訪問してバイデン大統領と首脳会談を行ったことに触れ「アメリカがわれわれを見放すことはないということは確信しているし、われわれも信頼できるパートナーだということを行動で証明してきた」と述べ、ウクライナとアメリカの協力関係は強固だという認識を示しました。

ただ、ウクライナがNATOに加盟できていない現状を念頭に「私たちは同盟国になりたい。パートナーと同盟国には大きな差がある。文明社会全体にとって脅威であるロシアを倒す同盟となればもっと私たちは楽になる」と述べ、早期加盟を改めて訴えました。

そして「文明社会全体がウクライナの味方であるべきだ。私たちは、自分たちのためだけでなく民主主義や自由のために戦っている」と強調し、国際社会に一層の支援を呼びかけました。

また、12月にロシア中部の空軍基地などでウクライナ軍によるとみられる攻撃が相次ぐなか、ダニロフ書記は「必要だと思えば敵の軍事施設を破壊するのに制限はない」と述べ、今後もロシア領内の軍事基地などを対象に攻撃を行う可能性を排除しませんでした。